青年の主張『生きてればいい事があるから、自殺はやめよう』
中等学校で、ムシダとポルックスにたくさん嫌がらせをされた。
明日も学校に行けば、嫌がらせをされる。だんだん辛くなってきた。明日なんて来ないでほしかった。
でも、死のうとは思わなかった。
死ねば、全てが楽になると言うネコがいた。それは違う。
死ぬのってとても痛い思いをするだろうし、周りを悲しませるし、何より死んだ先に何があるのか……それが分からない怖さもあった。
当時は、そう思っていた――。
僕は、高等学校に無事合格、入学した。
ある時、宿題で『青年の主張』という作文を書かされた。
先生に花丸をもらった僕の作文の題名は、『生きてればいい事があるから、自殺はやめよう』だった。
今思えば、よくこんな内容を書けたもんだなあ、と自分自身に呆れてしまうけれど、その時の自分は「我ながらいい出来だ」と思っていた。
今も、その作文は残してある。
本当はビリビリに破いて捨ててしまいたかったけど、過去から逃げるような気がして、今まで捨てずにとっておいたのだ。
そして今、改めてその文章を読んでいる。
ここに記しておこう。
文章が下手だけど、当時のままここに載せる。
もし不快な思いをしたなら、申し訳ない。
――――
『生きてればいい事があるから、自殺はやめよう』
僕は中等学校の時、仲が良かったと思っていたネコたちに、ある時から嫌がらせをされるようになった。
『不合格祈願』とか書かれたり、トイレで頭から水をかぶせられたり、日に日に嫌がらせはエスカレートしていった。
原因は僕だ。僕が、嫌がらせをしてきたネコとの約束を破ったからだ。ちゃんと謝ったつもりだ。なのに、嫌がらせは続いた。
嫌がらせしてくるネコたちの姿を見るのすら、だんだん辛くなってくる。クラスメイトに見て見ぬふりされるのも、辛かった。
そこそこ仲良しだったネコからも、嫌がらせしてくるネコたちに変な事を吹き込まれたのか、急によそよそしくされるようになった。
そして僕の味方がいなくなった。
先生に相談しても、まともに対応してくれない。母も忙しそうでいつもイライラしていて、この事について話せなかった。おばあちゃんにも心配されそうで、やっぱり話せずじまい。誰にも相談できなかった。
そのうち、生きているのが辛くなった。「明けない夜はない」とか「明日は来るさ」とかいう歌詞の曲があるけれど、僕にとって明日なんか来てほしくなかった。
最近、自殺のニュースをよく見かける。過労に耐えられなくて、いじめに耐えられなくて、親からの虐待に耐えられなくて、理由は色々だ。
でも僕は死のうと思わなかった。死んだら、家族が、友達が、先生が悲しむ。死んだら、今まで頑張ってきた事が全部無かった事になってしまう。死んだら、僕に残された可能性も全部ゼロになってしまう。
だから僕はどんなに苦しくても、頑張って生きようと思った。そうしたら、受験勉強で合格を勝ち取った。よそよそしくしていたクラスメイトを見返すことができた。今、こうして高等学校生活を楽しめている。死んだら、その可能性もゼロにしていたわけだ。
だから、死にたいネコがいたら、僕はこう言う。
自殺なんてしてはいけない。命がもったいないよ、自殺したら周りが悲しむ。生きてれば必ずいい事があるよ。生きる事を諦めちゃいけない。目の前の嫌な事から逃げちゃいけない。逃げずに頑張って耐え抜こう。耐え抜いて生き抜こう。頑張って乗り越えたら、きっとそこに希望がある。僕が今こうして、楽しく生きてるんだから。
――――
我ながらいい文章が書けた、多くのネコに読んでほしい、そう思って提出した。
先生から優秀作に選出され、クラスで発表する事になった。僕はみんなの前で、さっきの作文を音読した。
発表の後に拍手をもらって、僕は得意な気持ちになった。
翌日の終学活で、みんなの感想が発表された。
そこで1匹のクラスメイトが、ハッキリと言った。
「ごめん。私には全然、共感できなかった」
シャウラという名の、女の子だった。
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