14句目 悪役令嬢? 【夏】



涼風の 過ぎたる丘に 凪音かな




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【平民ガーネット・スフォルセフ(18歳)解説】


 王国の今年の夏は、例年にないほどの異常な冷夏だそうですわ。家族と共に王国を出たわたしには関係の無いことですけどね。そう、スフォルセフ公爵家は、海向こうの北の隣国へ全てを捨てて渡って来ましたの。


 厳しいと思っていたお父様は、実は私のために何度も陛下に頭を下げ、王太子の行いを伝えて関係が改善するよう動いてくださっていたのです。けれど、王太子と共にリリベル・ミレットを聖女と信じる陛下は、わたしやお父様を、身の程を弁えぬ愚か者と断じて、処刑されないだけ有難いと思えなどと仰られたそうですわ。


 夜逃げ同様にやって来た隣国は、1年を通して厳しい寒さに囚われた国だと聞いていましたけれど、着いたその日から暖かな日差しが降り注ぐ心地良い日々が続いています。周囲の人々にも恵まれて、こんなに穏やかで安らぐ日々はいつぶりでしょうか。


 わたしたちを歓迎してくれてるこの国で、優しい人たちと手を取り合って前を向いて生きていこうと思います。



 見上げた空は、青く澄み切って、温かな日差しを届けてくれています。



 わたしの凪いだ心を映したように。




ガーネット編

《 完 》


※この後、聖女ヒロイン編(4句)と王子編(1句)が続きます。

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