アンダーワールド
本作の歴史的な(と、大上段に構える)意義は、
『吸血鬼と人狼の長きにわたる抗争は実際、いつから始まったのか』
https://kakuyomu.jp/works/16816700429546668264
で詳しめに言及していますのでご興味のある向きはご参照のこと。
本作は吸血鬼映画史上のある転機をもたらしました。
本作がヒットしたため、第2作目以降が制作されたわけです。
構想自体はあったらしいですが、どうなんでしょうね。
結構、1作目と2作目の話のつなぎ方って無理やりだったような……
たしかにラストは『続く』的な終わり方ではあったのですが。
1作目は間違いなくA級アクションホラーだと言えるでしょうが、シリーズ通すとどうでしょうね。シリーズ物の宿命といえばそれまでなのですが。
『アンダーワールド』
原題「UNDERWORLD」
2003年製作(米)
日本版DVD・BD有
日本語吹替:あり
監督:レン・ワイズマン
脚本:ケヴィン・グレヴィオー
セリーン:ケイト・ベッキンセイル(田中敦子)
マイケル・コーヴィン:スコット・スピードマン(三木眞一郎)
クレイヴン:シェーン・ブローリー(小山力也)
ルシアン:マイケル・シーン(大塚芳忠)
ビクター:ビル・ナイ(小川真司)
ジャンル:ホラー
時代背景:二十世紀・ハンガリー(?)
『あらすじ』
千年近く続いているという吸血鬼族と人狼族の戦い……人狼族のリーダー、ルシアンの突然の死で、吸血鬼族側有利のまま、小康状態となって六世紀。
吸血鬼族側の処刑人セリーンは人狼を追って地下鉄で戦闘。そのとき、人狼族が追っていた人間の青年に興味を持つ。また、その戦闘中に聞いた地下の吠声に、リーダーを失ってちりぢりになっているはずの人狼族がふたたび集結しているのではないかという疑念を抱き、処刑人リーダーのクレイヴンに調査を進言する。
しかし、クレイヴンには吸血鬼族の長の交代の儀式が近いとのことで調査は拒否される。
吸血鬼族はアメリア卿・マーカス卿・ビクター卿の三人が一世紀ごとに交代で長の地位に就き、あとのふたりは眠りに就くという仕来りを守り続けていたのだ。
いまはアメリア卿が長であったが、もうすぐマーカス卿に変わるのだ。儀式のためにアメリア卿がセリーンたちのいる国に向かっており、そのための警備にも尽力する必要がある。
クレイヴンの決定に不満を抱き、人狼族の追っていた青年の住居へ向かうセリーン。
セリーンが青年の身柄を確保したそのとき、青年は人狼族の襲撃に遭い、咬みつかれる。
セリーンと人間の青年……マイケルは人狼族から逃走する。
実はマイケルは遙かいにしえ、人狼族と吸血鬼族の共通の祖であるコルヴィナスの血縁の子孫にあたり、コルヴィナスと同じ因子を持っていたのだ。
マイケルが人狼族に咬まれたことで徐々に人狼に変化していくなか、クレイヴンはマイケルを襲った人狼族と密談していた。
そう、マイケルを襲った人狼族は死んだと思われていたルシアンであり、クレイヴンはルシアンと独断で休戦協定を結ぼうとしていたのだった。
『物語のあれこれ』
私が調べた限りでは、『吸血鬼と人狼が世代を越えて闘争している』物語の第一弾。
なので、『遙かいにしえより吸血鬼と人狼は戦っていた』の、『遙かいにしえ』とは、映画内の設定はさておき、現実世界的には2003年、ということになります。
戦い始めたのって最近なんですね……と言いかけて、でももう二十年は越えているってことに気づきました。月日が経つのは早いものです。ああ、やだやだ。
本作の後、吸血鬼と人狼がなにかの原因(ひとりの女性を取り合うところから、単に馬が合わないまで、原因は様々)で闘争している、という設定はかなりメジャーな設定となっています。
吸血鬼と人狼が一緒に登場している映画作品自体、本作以前には少ない。B級未満の怪作映画を脇に置いておくと、共演したのはユニヴァーサルのモンスター映画以来ではないでしょうか。
(「ドラキュラとせむし女(改題「ドラキュラの屋敷」)」(1945年)「凸凹フランケンシュタインの巻」(1948年)など)
そのときは深刻な対立はしていませんでした。
どうやら監督はCGを極力使わないことにこだわりがあったらしく、本作では人狼は着ぐるみ、アクションはワイヤーアクション。しかし、私は最初本作を観たとき、「CGだ」と思ってしまったんですよね。
たしかによく観ると、CGならではの「人外」の動きがない。ただし、着ぐるみのリアリティはアップしていて、その生々しい躍動感を初見時の私はCGだと誤認してしまっていたようです。
反省。
しかし、見誤るくらい、非常に「本物っぽい」と言えるわけで、良くも悪くもCGの描き出す「リアル」を見慣れてしまった現代映画ファンにとっては安心材料です。
本作の見所は主人公セリーンのガンアクション。
セリーンが表情を極力抑えた冷酷な処刑人役なので種族を越えた恋愛、というには甘さが足りませんが、大袈裟に愛を謳わないところも本作の魅力でしょう。
全体に青と黒を基調にした画面、革の、身体にぴったりとした黒服を身に纏う吸血鬼たち。
飛び交う銀弾、めまぐるしく変わり、腹に一物を秘めた登場人物たちが織りなす勢力関係。
格好いいを全部盛りしたような本作、人間関係(吸血鬼・人狼関係?)は数百年の愛憎を煮詰めたような話で、難しそうですが、基本的に本筋は「セリーンの愛憎」がテーマです。
それが終盤にかけて見事にセリーン・ビクター・マイケルの三者に集約していくところには難解さはなく、かつ、納得できる展開です。
本作の吸血鬼は紫外線に弱いほかは(なので人狼たちは「紫外線放射弾」を使っている)特に目立った弱点はありません。一定以上肉体が損壊すると死に至る、その程度でしょうか。
対する人狼は、年を経た人狼は自分が望むときに変身することができます。弱点は銀弾。
ここ重要ですよ!
『銀は吸血鬼の弱点ではない。それは狼男の弱点だ』という設定を踏襲しています。
この設定は、1979年『ドラキュラ 都へ行く』にも出てきました。
表情に乏しいながらもビクター卿を敬慕し戦うセリーンが美しい本作。
続編が確実にある展開ながら、人気がなければ二作目は製作できないため、最低限、物語としては成立しています。
なので、仮に人気がなくて本作で終了していたとしてもファンの納得は得られたでしょう。
もちろん、本作は興行的に成功を収め、第二作、第三作と、続編が製作されていったのです。
『続編情報』
『アンダーワールド エヴォリューション』
『アンダーワールド ビギンス』
『アンダーワールド 覚醒』
『アンダーワールド ブラッド・ウォーズ』
なお、本作の主役セリーン役のケイト・ベッキンセイルは、『ヴァン・ヘルシング』にアナ・ヴァレリアス役で出演している。
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