また波に乗ってきましたわね!
「「イエース!!」」
俺が会心のタイムリーを放つと、味方のベンチが、ネクストに向かうクリスタンテを除いてみんな飛び上がって大喜び。
ほら、早くリフティングとかやれよ!という感じでまくし立てる彼ら。
まあまあチミタチ、とりあえず落ち着きなさいと38歳になったばかりの俺は、そんなリアクションだった。
いい意味でも悪い意味でも調子に左右されやすい。
チーム打率2割7分5厘。チーム本塁打数はリーグ1位。得点数、盗塁数リーグ2位。チーム防御率リーグ2位。
これでどうやって簡単に負けんねん。という勢いで連勝したかと思えば、急に投打が噛み合わなくなって7連敗。
と、思ったらバーンズとクリスタンテがまた打ち出した途端、3タテ✕2で6連勝ですから。
今日勝っても7連敗の借金を返しただけなのに、優勝したかのような喜びよう。
だからチーム最年長の人間としては、まあまあ落ち着きなさいという感情になるのである。
ドーンッ!!
真ん中高めをぶっ叩くと聞こえたのはそんな打球音。逞しい体とぶっとい腕から繰り出されたスイング。
白球がスタンドに飛び込むのに3秒あれば十分であった。
バーンズの勝ち越し3ランホームランは、今シーズン40本。残り1ヶ月ちょっと残して自身のキャリアハイに並ぶ1発。
先発が先制されても粘り、中盤に勝機を見出だして打線を繋げ、鉄壁のリリーフで勝利を決める。
7連敗の後の7連勝で再びチームの貯金は20。
8月も残り僅か。
悲願の月間MVPに立ちはだかるは、言わずもがな俺のすぐ後ろを打つ男である。
マイアミスタジアム。
こいつがまた素晴らしい場所にありましてね。マイアミといえば、東アメリカの下の方で、イタリアのように、うにょんとなっている半島にある都市でした。
アメリカ本土を代表するリゾート地なんですわよ。
キャンプで1ヶ月半ほど、平柳君達と滞在したりしましたけど。
本当に過ごしやすい温暖な気候でして、1月2月でも、昼間に1番気温が上がる時期なら、普通に海で泳げますし、有名な遊園地や水族館や動物園もある。
シーズンが終わったら、日本に帰る前にバカンスしていこうと、12月の頭に1週間程の予約をホテルに入れてしまったくらい。
そんなすんばらしい場所にあるチームですから、機動力が高いのだ。
リーグどころか、30球団で見ても130盗塁というのは突出した数字。今日も、1番のロアス、2番のバーディーに走られまくっていた。
「これもスタートを切ったぞ!ファストボール、外に外しましたが、スライディングも速い!盗塁成功!!ロアスが今日2個目!今シーズン38個目の盗塁を決めました!チームとしても4つ目ですか」
「ピッチャーのピーターソン。ボールは速いですが、身長が6、7フィートありますので、やはりクイックは得意ではありません。初回の初球に走られてしまったことで、思い切りよくスタートを切られています」
「なるほど。カウント1ボールで、バッターはバーディー。初回は同じ場面でセンター前のタイムリーでした。……2球目です。……打ちました!いい当たり、ヒックスが飛び付きますが、サードの右破りました!
レフトは新井だ!サードコーチャーが迷わず回す!バックホームされたボールがワンバウンドして返ってきますが、間に合いません!セーフ!!打ったバーディーも2塁へいきました!4ー1!マイアミがリードを広げます!!」
ちっ。速すぎますわよ。
決して悪いバックホームではなかったのに。
ピーターソンはここで交代。2番手のウォーレン。球威は劣るが、比較的クイックやテンポのいい左腕にスイッチし、なんとかシャーロットにとっての悪い流れは断ちきった。
6回は1番の平柳君からという打順である。
ウェイティングのわっかでちょっと相談。
「いやー、ちょっと上手くやられちゃったねえ」
「ですねぇ。さっきのランナーも新井さんが刺してくれていれば……」
「なぬ!……まあ確かに、ちょっと指が引っ掛かって、ワンバウンドの送球になっちゃったけどさ」
「俺もっすよ。最初の盗塁だって、俺のタッチが甘かったからベースに潜り込まれましたから。ここは俺たち2人でなんとかしましょう。向こうの先発もきっとこの回まででしょうか」
「あたぼうよ」
そんな強気の口調のわりには、バットをバキバキに折られてしまう平柳君。
打球は力のないライナーとなって、三遊間にポトリ。今日2盗塁のロアスが回り込んでワンバウンドで押さえるも、1塁には投げるフリだけ。
先頭バッターが出塁する。
ロアスは試合が始まる前は35だか、36ですか。
盗塁ランキングというところでは、平柳君はリーグ5位の数字。俺だって狙っていくぜぇとプレッシャーをかけてくれたおかげで、2球目はアウトコースの真っ直ぐ。
ベルトの高さ。
おビンクバットは1、2塁間の真ん中を破っていった。
バーンズも外のボール。それを強引に引っ張り込むようにして左中間に打ち上げた。
1塁ランナーの俺が、思わず右手を挙げてしまうような大飛球を見上げる。
いったっしょ!いったっしょ!
俺何回もそう口にしたが、ここはマイアミだった。
シャーロットならばそうなのだろうが、ここはメジャーで1番広い場所。ベテランのセンターが追いかけるその姿勢を見て、俺は急いで1塁ベースに戻った。
「センターマテオが下がって、下がって、向こう向き!!……捕りました!フェンス際掴んでいます!ボールをすぐにカットへ返します、ヒラヤナギは3塁へタッチアップ。
……1塁からアライも狙っている!ボールはそちらに送った!!ヘッドスライディング!タッチは………セーフになりました!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます