そら、今日は絶好調よ。
スカァンッ!
スカァンッ!
スカァンッ!
おピンクバットの調子は上々である。監督やヘッドコーチ、打撃コーチ、アシスタントコーチまでもが集まって来る。
ガムをくっちゃらくっちゃらしながら、俺のバッティング練習をケージ裏から見守るのだ。
低めのボールに対しても、しっかりバットのヘッドが利いているんだよ。インコースもアウトコースもバットの出方がいいねえ。
などと、身振り手振りで50前後のおじさん達が楽しそうにしているのだ。
最後の1球をライト線に弾き返し、足元をならして、バッティングピッチャーおじさんにばいしながら、その3人の首脳陣おじさんの元に向かう。
「WIN!WIN!WIN!」
俺はそう力強く言葉を発しながら、勢いに任せて、監督達とハイタッチ。
3人はちょっとびっくりしながらも、今日も頼むぜ、スペシャリスト!などと軽くイジるようにしながら俺を見送る。
そして、結局は本命であるバーンズのバッティング練習に注視するのであった。
ちょっとしたお食事とお昼寝をした後。
「きゃー!!新井さーん!!」
シートノックに出ようと、平柳君とキャッチボールをしていると、飛んでくる黄色い声援。
俺のハートを釘付けにするそのスイートボインの持ち主は、ポニテちゃんその人である。
スイートボイスでした。間違えました。
俺がチームスタッフを通じて差し上げたユニフォームをしっかりご着用なさって。
彼女がレモネード片手に、キャップを被って、手を大きくを振る度に、あちらこちらへと揺れる胸元のSHA-ROTTOの文字。
たまりませんなあ。
ですから、弾道のみならず、今日の俺は守備力と走力と肩力が2段階はアップするのはもう必然である。つまりはミートS。あとはオールCてなもんで。
ですからわシートノックでは誰よりも輝いた。
舞い上がった打球に一直線に入り、確実に補給して、カットマンに素早い返球。
調子に乗って背面キャッチを試みて、見事に失敗するという不運に見舞われたりはしたが。
最後はホームにストライク送球し、ベンチ前。ポニテちゃん達ご一行が見える位置で足を止め……。
「オ~!ニィポッーン!ニィポーン、ニィポーン!ニィポッーン!!ハイ、ハイ、ハイハイハイ!!オ~………」
という、周りの観客が唖然とするくらいのソロチャントを披露。
至高のサッカーレディ達から爆笑をかっさらうことに成功したわけだから、1打席目からヒット打つことも出来るというわけである。
同じくいきなりヒットを打っていた平柳君が盗塁を失敗してしまった後だった。
俺のおピンクで、1つ嫌な流れを払拭した形にはなったが、バーンズは痛烈な打球のサードゴロ併殺打に倒れてしまった。
そんな中、初回に続いて2回も快調なピッチングを披露したのは、俺があげた梅ガムがお気に入りのフレッグリン君である。
夏にマイナーから上がってきたサウスポーは、若手らしいハツラツとしたピッチングだけではもちろんない。
メジャーレベルのバッターを打ち取るテクニックと強靭なメンタリティを持っていた。
なんてったって。ノーヒットノーラン級のピッチングをかまして、防御率1点台前半というピッチングをやっていますから。
前回登板は7回1失点も、味方の援護がなく初黒星となってしまいましたが、後半戦だけで既に5勝。
この日も、低めのコーナーにボールを集め、緩い変化球を織り交ぜながら、テンポのいい投球を披露していた。
そのおかげなのか、3回。ザムがちょこんと当てただけのバッティングになってしまった打球が緩い弾み具合で三遊間へ。
サードがギリカット出来ない絶妙なコース。ショートが逆シングルで捌いて1塁に送球するも、間に合うはずもなく、内野安打となった。
そして走った。
初回に平柳君が失敗していますから、ちょっと難しさもあったわけだけど。
高い集中力からの見事なスタート。キャッチャーもいいボールを放ったが鮮やかに滑り込んでセーフ。
より慎重な姿勢になったピッチャーから、平柳君はフォアボールを選んだ。
1アウト1、2塁。先制のチャンス。
俺はピンクバットをマサカリスタイルで肩に担いで偉そうにバッターボックスに向かう。
あんまり球種とかコースとかは狙わずに。
速いボールに対してのタイミングである程度待っといて、真ん中付近のボールを積極的にいくと、そんな腹づもりだった。
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