まだ俺は諦めてないんだから!
そんな劇的な試合の後だから、残り1ヶ月半のシーズン、これはいっただろうと思っていたら、まさかの今季最長となる7連敗を喫していたシャーロットウイングス。
ピッチャーが抑える日は、打線も抑えられ、打線が点を取った日は、ピッチャーも同じくらい点を取られてしまう。
個人個人の働きは悪くないのだが、チームがまた噛み合わなくなってきてしまっていた。
これはやばいなぁと思いつつも、俺に出来るのはコツコツ打法ですからね。
平柳君が出て、俺が繋いで、バーンズとクリスタンテが返す。役割としてはシンプルですから。
そういうイメージを膨らませるしかないわけで、移動日である今日、家族皆でジュワジュワのカツカレーを頬張っていると……。
俺のスマホが鳴り響いた。
なんと、ポニテちゃんからである。
「みのりん!さやちゃんから電話がきましたわ!」
「あら、もう到着したのかしらね」
応答すると、予想通り、元気いっぱいの賑やかな声が聞こえてきた。
「新井さん!こんばんは!」
「おお、さやちゃん!相変わらず元気だな!アメリカには着いたかね」
「ええ!さっき、シャーロット空港に到着しまして、今からバスに乗り込むところなんですよ」
「そうかね。でも、さやちゃんはサッカーの国際大会があればその度に飛行機に乗ってるだろうから、もうベテランだね」
「いえいえ!飛行機では、ご飯食べた後はずっと寝てばっかりでしたよ~!」
「俺と一緒ですな!」
「「アハハハハハ!」」
ポニテちゃんは現在なんと、女子サッカーのA代表チームにチーフトレーナーとして帯同しているのだ。
何やらアメリカの地で、強豪国との4大陸なんちゃらカップという試合を控えているのだそう。
そして明日、時差ボケ解消も兼ねての観光。
せっかく新井選手もいるし、滞在先からも近いからと、士気向上を狙って、チームメンバー全員でメジャーリーグの試合を観戦するという提案がなされたそうだ。
明日は午後5時から夜8時までの睡眠が禁止だそうで。
ホテルで休んでいたらその時間に寝てしまうという話。
ですから、軽めのトレーニングとミーティングをした後に、みんなでスタジアムに行きましょうという予定だったらしい。
しかし、今日本ではちょうど台風が来ていて、予定通りアメリカに来れるか微妙だったのだが、なんとかなったみたいで。
「というわけで、女子サッカーの代表全員で応援しにいきますので、いつものようにホームランかっ飛ばしちゃって下さいね!」
「また無茶なお願いを……」
「でも、この前の伝説の二刀流試合の時は、あとちょっとでホームランだったじゃないですか!1本くらいならいけますよ!持ち前の土壇場パワーで」
「ははっ。まあ、ぼちぼち頑張ってみるよ。みんなが応援に来てくれるなら、ちょっとしたサプライズでも用意しておこうかな。ちなみに、全部で何名様?」
「えっと、帯同している全員がスタジアムに行けるわけではないですけど、選手は全員と一部のコーチや私のようなトレーナーにスタッフ、35人ですかね。1塁側の結構良い席が取れたみたいで」
「なるほど、なるほど!それでは楽しみにしておくといいよ!」
「はい!分かりました!」
さやちゃんとお話したいという双子ちゃんにスマホを少し渡したりしながら、俺はサプライズの段取りを練る。
まずはクロちゃんに電話して、全員分のユニフォームを用意してもらって、後は何か適当にドリンク券でも……。
「はい、時くん。スマホありがとう」
最後にお話したみのりんに返してもらったスマホで、早速クロちゃんにメッセージを打った。
「さやかちゃん、みんなで応援に来るんだってね。そういえば、マイちゃんもここに来たがってたよ。子供が小さいから難しいって言ってたけど」
「まあ、4歳と2歳じゃ、ちょっと応援に来るのは難しいかもね」
なんて話をしながらスマホをチラ見。するとクロちゃんから返信が来ていて……。
❲いけるそうです。朝イチでクラブハウス用意してもらえるみたいです❳
と来ていたので、オッケー、オッケー!
おかわりのカツカレーを平らげ、デザートのてんこ盛りフルーツタルトもしっかりいただいた。
翌朝。
もう朝という時間ではないが、いつもより1時間くらい早い時間にマンションを出てスタジアムに向かう。
クロちゃんと桜井さんに、ポニテちゃんがどれだけ素晴らしい妹的存在なのかを伝えながら、クラブハウス前で車を降りる。
そして、トレーニングウェアに着替えた後。
用意してもらった俺のネームと背番号入りのレプリカユニフォームを段ボールから出しまくる。そして、テーブルに着き、例の如くマジックペンを取り出し、走らせる。
2人にユニフォームをビニールから出すのを手伝ってもらって、どこにサインを施すか会議を開催。
結果、胸のシャーロットの右下辺りがいいんじゃないかという結論になった。左下には背番号がありますから、やはりそこが1番いいバランス。
もちろん自腹である35枚のユニフォームにサインの施しを完了。
さらに公式キャップとドリンクのサービス券もお付けしたものをチームスタッフに託すのだった。
それからようやくおじさんのわくわくドキドキマッサージタイム。
ぶっとい指を巧みに扱い、俺を快楽の業火へと誘う悪魔の所業。
クロちゃんは、横の椅子に座って、タブレットで今日の対戦相手の情報を整理しながら3人できゃっきゃっしながら練習前の時間を過ごすのだった。
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