奴はここにいましたわ……!
女の子はビックリしたのか、隣にいたママさんに抱き付きながら、涙目ながらほっとしたような表情。
ちょうどうちの双子ちゃん達と同じくらいの年の子である。
これはちょっと悪いことをしてしまった。
そういう気持ちを抱えた時に効果的なバッティング第1位は、流し打ちである。
「打ちました!右方向!!1、2塁間を破っていきます!!さあ、ザムは俊足だぞ!!ライトのエンリコからバックホームですが………間に合いません!!ホームイーン!!
アライです!!日本のザ・アベレージサムライ、アライ得意の右打ちでシャーロットが先制点を奪っています!!」
さらにバーンズも左中間を深々と破る2点タイムリーツーベースでさらに加点したシャーロット。裏の攻撃をウェブがしっかりと抑えてブレイクタイムとなった。
そして、俺はおもむろにグラウンドに向かい、セルフアクティブリプレイ検証を行う。
グラウンド整備が始まっていますから、その邪魔にはならないようにして、右バッターボックスのちょっと離れたところで、バッターボックスに入っているというテイでやる。
ピッチャー投げました。
アライさん打ちにいきます。
チェンジアップで抜かれました。
泳ぎスイングになりました。
バットが手元から離れてしまいました。
くるくるくるくると、宙を舞うバットの再現を行いながら、3塁側のスタンドの方へと歩いている。
くるくるくるくると回りながら、スタンドの近くまで飛んでしまい、フェンスのギリギリに当たる。
横にあるカメラの日差しカバーに当たり、地面に当たり、最後はアライサンのおケツに当たり、少女の元に優しくバットが舞い降りたと。
そういうわけでしたわね。
「ディスイズ、プレゼント!」
俺はそうにこやかに伝え、ヘイ!と、ハイタッチの手を差し出した。
少女は、固まってしまったようにビックリしながらも、恐る恐るバットを受け取り、小さな手を広げて、俺の両手にパチンと手を合わせた。
俺はママさんとも、軽く握手を交わし、周りのお客さん達にも手を振りながらベンチへ戻っていく。
「アライはどうしましたか、3塁側のスタンドで………」
「バットをプレゼントしましたね。先ほどの打席で、スタンド近くまでバットを飛ばしてしまい、怖がらせてしまった女の子にお詫びを伝えにいったのでしょう」
「なるほど!女の子が喜びそうなピンクのバットですしね。こういった懐の深さが高い打率をキープする要因でしょうか」
「放送席にもバットを放り込んでくれませんかね。私の息子も喜びそうだ」
「ハハハ!譲りませんよ!」
そして……。
カキィ!!
「打った、大きいぞ!!右中間だ!!ライトが下がっていきますが、見送ったか!?入りました!バーンズの2ランホームラン!勝ち越しです!!高めのボールを逃しませんでした」
高めズドンで右中間最深部へ放り込んだ。1塁ランナーの俺はまるで自分が放ったかのように優雅にダイヤモンドを1周して、バーンズをお迎え。
平柳君がベンチで白いハンカチをキー!と、噛んで悔しがるのを見ながら、俺とバーンズはハイタッチする軽やかさで、互いのおケツを下からプリンと撫でて、夜空を指差した。
「新井さん、バーンズ!!ずるいよ、俺も混ぜてよぉ!!」
「ハハハッ!好きなだけ触ったらいいじゃないか。もちろん、アライサンのをな!」
「そうだな。………では失礼して……」
カチャカチャ……。
「何ベルト脱がそうとしてんだよ!あっさり三振しやがって!!」
「キャイン!!」
俺はチャンスを生かして、好感度アップイベントが成功したので半分どうでもよくなった試合だったのだが。
2アウトからわたくしのライト前からの、バーンズのズドンと勝ち越し2ランは、大連敗中の相手にはかなり効いたみたい。
次のイニング。向こうは連敗の中でも、リリーフ陣の登板過多になっている台所事情が深刻。
急遽マイナーから2人の左ピッチャーを昇格させ、その1人を早速起用しなくてはいけない状況になっていた。
そのピッチャーというのが……。
「スイッチング、ナウ!ピッチャー、ロンパオ・リー!!ナンバー61!」
懐かしのお顔、懐かしのお腹。
つまみ食い友達である、ロンパオちゃんが現れたのだった。
「ここでアリゾナのヒューストン監督は、マイナーでセットアッパーとして好投していた、台湾人をマウンドに上げました。今年2回目の昇格となります」
「前回の降格で見切ったのではと私は思っていましたが、シャーロットのようなアジアンパワーに賭けたというところでしょうか」
「今シーズンの成績は11試合全てがリリーフでの登板。13イニングで防御率5、88。12個の三振を奪ってはいますが、8個の四死球。4本の被本塁打というのはいただけません」
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