いい決着になりましたわね!
レフトに打たせますからなんて、それが1番嫌なんだけどなぁと思っていると、やはり本当に打球がやって来ました。
インコースの真っ直ぐを叩かれ打球は頭上へ上がる。それでも、真芯は食っていなかったようで、やや落ち際で失速。
フェンス手前のウォーニングゾーン内で、背中でフェンスを感じながら、グラブ側の片足を上げつつの不恰好なキャッチングスタイル。
スタンドのお客さんに笑われたが、キャッチ出来ていればそれで良いのだ。と、自分に強く言い聞かせる。
次のバッターもまたレフトに。今度も打った瞬間にアナハイムのファンが立ち上がるような打球だったが、これはちょっと上がり過ぎ。
レフトのラインに向かってやや下がりながら、今度はカッコ良く掴んだ。
カキィ!!
「いい当たり!!ショート正面のライナーでした!平柳がガッチリ掴んでいます!前村も神沢に負けじと6回1失点ピッチング。ゲームは6回を終えて1対1。同点で終盤7回へと入っていきます」
よし!点を取った直後をしっかり抑えたぞと、ルンルン気分でベンチに戻りましたら、サードのヒックスがニタニタとしながら……。
「アライサン!………ワァ!」
と言って、さっきの不恰好キャッチングの物真似をしてきやがったのだ。
すると、それを見ていた周りの連中も、ケタケタと笑い始めた。
「アライサーン!……ワァ!」
「ワァ!ワァ!」
「違う、違う。こうだよ、ワァ!!」
みんなしてアホな顔をして、左手と左足を上げながら口をパクパクさせてバカにしてきたのだ。
こういうのに、アライサンは厳しいですから。
「てめえら、いつまでコケにしやがるんだ!試合中だぞ!集中切らしてんじゃねえ!!」
そう叫びながらご立腹になった俺。
全員の注目を集める中、ベンチでひっくり返って恥ずかし固めの体勢を取る。
そして、お股にヒックスの青いタオルを被せながら、ロンギーの予備のファウルカップを頂上に乗せ、俺は決める。
「見よ、アメ公!ディスイズ、フジヤマ~!!」
「「ギャハハハハ!!」」
「オー、アメイジィング!!」
「アラサン、フジヤマ!サイコー!」
「フジヤマ、ビューティフル!!」
などと、大盛り上がりとなった結果。
カキィ!!
「捉えたか!?ブラッドリーの打球!!………飛び込んでいきましたー!!神沢から代わった初球でした!!レフトスタンドへ、第13号のホームランです!!」
無くなったガムを補充しようとして、地面に落としたやつを平柳君に食われた瞬間に、ブラッドリーの打球がグイーンと飛んでいっていた。
打球を見上げながら、地面にバットを滑らせるようにしてから、1塁に向かって走り出す。
打球はあっという間にレフトスタンドの中段へ飛び込み勝ち越し。
さらに後が続いた。
カキッ!!
7番ヒックス。
両打ちの彼も、ブラッドリーと同じように前捌きタイプのバッターである。1ボールからの2球目。落差のあるナックルカーブだったが、多少タイミングを外されながらも引っ張りライト線へ運んだ。
ノンストップで1塁を蹴り、ヘッドスライディングで2塁をゲット。
ロンギーの三振逃れちょこんなセカンドゴロで3塁に進んだ。
そしてバッターは9番ザム。真ん中低めを打った打球はファーストゴロになった。
「ファースト正面!3塁ランナー突っ込む!!バックホーム、ちょっと持ち替えた!!それでもバックホーム!!送球逸れましたーっ!!ファーストマーカスの悪送球!」
慌てたファーストのボールがキャッチャーの足元を襲うような送球になってしまった。ボールはバックネット際をピンボールのように弾み、バッターランナーは2塁へ。
さらに平柳君が初球を叩いて1、2塁間を破り、ザムが俊足を飛ばして一気にホームインし、リードを広げ、試合は決まることとなった。
前村、神沢という日本人先発対決は、試合はシャーロットが制した。
両者6回1失点のドローというどっち付かずも、両投手が互いの強力打線を相手に見ごたえのあるピッチングだった。
次があるとすれば、オールスター明けのシャーロットでのホームゲームということになった。
アナハイムとの初戦を制したシャーロットは、2戦目を向こうご自慢のパワフルな打線の猛攻に会い、10失点を喫して敗北した。
それでも、翌日の3戦目は、バーンズとクリスタンテのホームランなどで効率良く得点を記録し、終盤は勝ちパターンのリリーフ陣が踏ん張り、6ー4で勝利を収めた。
そして遠征2カード目の舞台はアリゾナでの試合だ。
初戦を落とした2戦目。エースのウェブが4回までをパーフェクトに抑えるピッチングを披露。
シャーロットは2アウトながら1、2塁というチャンスで現在打率4割ちょうどとなっているわたくしの打席が回ってきた。
なんとかウェブに援護したいと、息を巻いて臨んだが故に、力を込めたスイングがチェンジアップで抜かれ、バットが手元からするり。
スタンドに向かって、激しく回転しながら飛んでいってしまったのだ。
危ないと俺が叫ぶ中、バットはちょうどその場所にいた小さな女の子の方へ。
思わず目を覆いたくなる中、持ち主が幸運にも非力だったのが幸いし、その手前のフェンスに当たってグラウンドに帰ってきた。
危ない。危なすぎる。
スタンドからもどよめきが上がり、サードコーチおじさんが拾いにいってくれたバットをハラハラした気持ちのまま受け取り、しっかりと滑り止めを施し直したのだった。
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