そら、いざとなったら秘密の打法よ。
カキィ!!
何なら、なかなかないレベルの手応え。
シャーロット打線の中で今日イチの鋭い打球がライトにライナーで弾んだのだ。
着地した左バッターボックスの方でひっくり返った状態の俺は慌てて立ち上がり、ノーヘルで走り出すという構図なのですわ。
「神沢セットポジション。……長く持ちます。走った!……外し……打ちました、新井が強引に打っていった!!フェア!!ライト線、フェアです!!平柳は2塁を回る!新井も立ち上がって1塁に向かいます!!
ボールはライトから中継のセカンドに返ってきただけ!!繋ぎました!ノーアウト1、3塁!!
新井の、新井の悪球打ち!!すごいバッティングが出ました!!リプレイが出ます!!」
場内騒然。バックスクリーンにハイライトされたわたくしのバッティング。
アウトコースの高めに外されたボールに対して、反応よくジャンピング。
バッターボックスの外に足が着いてしまった状態で打ってしまったらアウトですから、足を縮めながらも、上体は伸ばし、ピンクバットを振るった。
するとバットの先にちょうどよく当たったボールがライナーになってファーストの頭を超えて弾む。
俺はまるで誰かに投げ飛ばされたかのように、派手に転び、打球の行方を見て立ち上がる。
汗と土にまみれ、非常に良く整ったお顔を汚しながらも走り出していた。
笑われ、称えられ、上々の好感度アップをマークしたところで、アナハイムのピッチングコーチがマウンドを離れ、試合は再開される運びとなった。
バッターはバーンズである。
ここまで打率2割7分、20本塁打という成績。去年の打率3割、49本塁打という成績に比べると、まだもう1つかなという印象であるが、明らかな不調期をなんとか乗り切った印象が俺にはあった。
白く太い腕っぷしで、先が黒いバットを高い位置で構える。あまり両足は曲げずに、上体も真っ直ぐ立ったまま、無駄な動作を極力無くしながら、シンプルにボールを待つ。
神沢が足を上げ投球動作に入ったところで、バーンズはバットをトップの位置に引き、足を上げる。
アウトコース低めのカットボール。かなりギリギリのコース。バッテリーとしては引っかけさせてのダブルプレーを狙った配球だったようだが、バーンズのスイングの力強さがそれを上回った。
ガシッ!という打球音ながらも、打球は左中間へ。すっかり暗くなった夜空に高く白球が上がり、シャーロットファンが立ち上がる。
レフトとセンターが追っていくその真ん中。ホームランにはならんが、抜けただろうと確信したところで、センターが俺なんかを軽く凌駕するスーパージャンプを披露した。
最後はフェンスに激突しながらも、上手く衝撃を逃がしながらグラブを抱える。そして上体だけを起こして、ボールをレフトの選手に渡した。
アウト。スーパープレイ。
俺は慌てて来た道を引き返し、2塁ベースを踏み直して1塁に戻った。
惜しい。
左中間真っ二つの2点タイムリーのスリーベースまで見えた打球だったが、犠牲フライ止まり。
平柳君がゆっくりとホームインして同点。とりあえず、前村君の負けは無くなった。
ここからさらにもう1点取って勝ち越しといきたいところだったが、4番クリスタンテはフルカウントからストレートを打ち上げて内野フライ。
5番アンドリュースからは、最後はフォークボールを連投して空振り三振を奪われてしまった。
チェンジになって戻り際、神沢とちょっとだけ接近してしまった。
「………………ナイピ」
「………………どもす」
それだけの言葉を交わし、俺は少しスピードを上げてベンチに戻った。
「おーい、後続けよ、あとー!いけるところだろうがよー。バーンズは惜しかったね。ナイス打点」
「ウイッ!!」
「前村君、交代?お疲れ!」
「お先っす」
ヘルメを片付け、ドリンクを飲みながら、平柳、バーンズ、前村君とタッチを交わす。
「ごめんな、前村君。勝ち越しに出来なかったよ」
「ははっ、同点になっただけでも全然違いますから。レフトに打たせるんでしっかりお願いしますよ」
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