無性に長くないパスタを食いたくなりますの。

ややシュート軌道で流れる計算もピッタシ。マウンドの向こう側で短くバウンドしたボールがロンギーの元へ。



そしてそのキャッチャーミットが追いタッチの格好になりながらも、滑り込むランナーの体を捉えた。







ポロン。




「セーフ、セーフ!!」



ホームベースの向こう側、ランナーをタッグしたインパクトの刹那。ボールがミットから零れ、地面に落ちてしまった。



なんてことだと、ロンギーは悔しがりながら立ち上がって追いかけたボールを前村君が拾い上げた。




「本塁クロスプレーはセーフになりました!!アナハイムが1点を先制です!!神沢が笑顔でチームメイトとハイタッチを交わします!」



「センターの前に落ちた打球。んー、ランナーがスタートしていたとはいえ、2アウト1塁ですから。無理に突っ込む必要はなかったですかねー」



「センター前。……あー、そうですね。バーンズが懸命のダイビングも及ばず、後逸という形になってしまいました」



「その後のカバーした新井と平柳の中継プレーはさすが息のあった2人のコンビネーションというところでしたけど、キャッチャーのロングフォレストも悔いが残りますね。


振り逃げもありましたし、ライトのクリスタンテが先にセンターのカバーに行っていればというところもありますから、そういった意味ではこの回3つのミスがあった形にはなりますよね」






マスクを拾いながら、ソーリーと謝るロンギーの背中を前村君はポポンと叩きながら、球審にボールの交換を要求した。



振り逃げされてシングルヒットを後逸して、クロスプレーで落球して先制点を献上という形ではあるが、これもベースボールである。



ミスが起こるのは仕方ありません。前村君もそれに対してイライラやクヨクヨをする素振りは微塵も見せずに、両手でボールをこねながら、くしゃみをした。



どちらかといえば、センターにカツーンと上手く打たれてしまったことに悔しがっている感じ。



その後、連打は嫌ですから、次のバッターにはフォアボールを与えてしまったが、チームの本塁打、打点の2冠。



3番の怖いマーカスに対しては、1打席同様、インコースをしっかりと攻めて詰まらせた内野ゴロ。



最小失点に留めて、なんとか相手に流れを持っていかれるのは阻止した格好となった。





「6回裏。シャーロットの攻撃は、1番の平柳から。ここからなんとか反撃の糸口を見出だしていきたいですね、シャーロットは」



「もちろん!やはり、今年のシャーロットが強い理由は、平柳と新井の並びでチャンスを作り出せるところですからね。尻上がりに調子をさらに上げるタイプの神沢ですが、そろそろ捉えていきたいですね」




6回、3打席目。



色んな意味でなんとかしなければいけないイニングである。



打順は3巡目。4巡目になる頃には、抑えても打たれても神沢はマウンドに立ってはいないだろう。



しかもちょっとまずい点の取られ方をした直後である。



まだ1点ビハインドだが、3連戦の頭、重くのし掛かる1点になってしまいかねない。



確実な出塁、確実なバッティング。それを体現して、最低でも平柳と俺のどちらかは出塁しなければいけない状況になっていた。





ビシュッ!



ギュルルル!!



ズバンッ!!



「ストライク!」




インコースに決まる。



今日の神沢の左バッターへの1番いいボールは、膝元へのカットボールである。



右ピッチャーが左バッターに対する1番の泣き所。そこが1番きちぃところ故に、1つコントロールミスすると、長打にもデッドボールにもなりやすい。



しかし、今日はそのボール。その難しいココースへのコントロールがビタビタ。



同じ左バッターである、5番のアンドリュースや両打ちのヒックス、9番のザムもそこを的確に攻められて自分のバッティングが出来ていなかった。



今日は4人いるスタメンの左バッターで、唯一膝元カットボールをまともに打ち返したのは、1打席目にファーストゴロになった平柳君だけだった。




初球はそのインコースを見て、1球外の変化球を見極めた後の3球目。神沢が投球モーションに入ったと同時に、キャッチャーがインコースに寄る。



そこにボールを投げ込む。



平柳君は打ちにいく。



しかし、いつものプルヒッティング。強い打球を目指す、引っ張り方向の打撃ではない。



腕を畳み、バットのヘッドを返さぬように、そして極力パワーも残す。インコース低めのボールに対して、バットの面はレフト方向に向いていた。



その窮屈とも解釈出来る打ち方で、レフト線に向かってボールを打ち返したのだ。



ポーンと打ち上げた小フライがレフト線に飛ぶ。



こういうバッティングをこっちの地域では、ペンネショット、ペンネスライス打法などと言うらしい。



日本的に例えると、鍋に入れるおネギ打法という感じでしょうか。そんな打ち方で角度をつけた平柳君の打球がレフト線ギリギリにポトリと落ちたのだった。




「ヒットです!3巡目、平柳が逆方向への上手いバッティング!先頭バッターが出塁します!」



「いいですね。今日、左バッターがずっと苦しんでいたボールでしたから、捉えたバッティングではないとはいえ、ヒットにしたのは大きいですね。ランナー1塁で新井ですから、こうなると今度は4割打者がどんなバッティングをするのか楽しみですね」





「塁上の平柳は、今シーズンここまで10個の盗塁を決めています。12回走って10個の成功。ここはあるのか。神沢も牽制やクイックの技術はあるピッチャーです」



「そうですね。ですから1、2塁間を広く空けた状態で新井に打って欲しい場面ではありますよね」



「初球です。………インコース、ストレート!……ボールです。僅かに外れました。1ボール」



当然右打ちはさせないぜ。という配球になる中で、どうライト方向に打ち返そうかというところ。



俺に出来るのは裏をかいて引っ張って3塁線ぶち破り!ということではなく、ここはひたらすらに右狙い。



神沢相手だからこその右狙い。それだけは阻止しようとしてくる宿敵だからこそ、成功した時のダメージがあるというものだ。




2球目の続いてインコース。今度はギリギリいっぱいのストライク。そして3球目はそこから若干沈ませるツーシーム。俺はそれに反応してバットをギリギリのところで止めることに成功した。



そしたらの4球目よ。



2度牽制をもらった平柳君が単独スチールを試みまして。



しかし、タイミングは微妙だし、読まれて外角高めに外されているしで何してんて感じ。



盗塁失敗はまずいと、俺は腕を伸ばしてジャンピングアタック。なんとかファウルか。ボテボテのファーストゴロとかになっても構わへんと思った。









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