神沢との対決が始まりますわ!
日本にいた時と変わらないスラッとしたピッチャー体型。2人とも身長で負けておりますから、彼がグラウンドに現れた瞬間というのは、当然睨みつける形にはなる。
彼の投球練習に合わせて、俺たちはネクストの輪っかを挟んでバットを振り、タイミングを計る。
「どうですか、ライバルである新井さんの見解は」
「別にライバルというほどの事では………。まあでも、だいたいミーティング通りなんじゃない?基本は95マイルの直球に変化球を織り混ぜるスタイルですから。中でも今年の神沢はチェンジアップだろうね。
それをどんだけ打って楽にピッチングさせないか。そのための1番バッターなんだからよろしく頼むよ」
「それじゃあ今日、上手くいったら、週末はみのりん飯ということで」
「何でだよ。君にはまどりん飯があるだろうに。元アナウンサー飯がよ」
「ま、まどりん……。おゲゲゲゲ………」
平柳君のやつ、人のみのりんを気安くみのりんと呼ぶくせに、彼が自分の奥さんを名前で呼んでいるのを見たことがない。
ですから、この神沢との試合でヒットの数が俺より少なかった暁には、愛する奥様にラブテレフォンをして頂くと。
打席に向かう彼の背中を眺めながら、そのように勝手に決めてやることにしました。
平柳君がピッチャー方向の景色を確かめるようにしながら左バッターボックスに入り、足場をならす。
対するマウンド上の神沢。少ししゃがみ込むようにして滑り止め袋に指を置く。
股関節を伸ばすようにしてから立ち上がり、スパイクの歯に付着した土を落としながら軽く2回ジャンプした。
そしてプレートに足を合わせ、球審がプレイと発声した瞬間。
事前に示し合わせていたかのように、キャッチャーと一瞬でサイン交換を済ませ、第1球目を投じてきた。
真ん中低め。ボールゾーンに沈むチェンジアップ。ストレートのタイミングでいった平柳君。
止まらないバットが下手にボールに当たらないように、上に逃がすようにして空振りした。
それを見て俺は、さっき前村君に話していたように、平柳君の調子が決して悪いものではないことを察する。
ストレートを引っ張りにいくようなタイミングで打ちにいき、チェンジアップと気付いてスイングを取り止めたその瞬間だ。
もうバットを止められる位置ではなかったので、無理に止めはしなかったが、間違ってもバットにボールが当たらないようにしっかり外したのだ。
良い調子でなければ、そのまま振ってしまうか、当ていってしまうと、下手すれば1球でアウトを取られてしまう可能性もあった。
つまりは、空振りしながら最悪の状況は回避する余裕があったということ。
第1打席目の第1球でこういう現象が見て取れるのだから、今日の平柳君の感覚、準備というものが、今の神沢のピッチングしているクオリティの近くにあるという証明にもなる。
それを投げた神沢も感じ取った。クールなポーカーフェイスである彼から、俺も同じベクトルで感じ取れたのだ。
今の1球でそう解説出来るOBさんが今日はいらっしゃいますから安心ですわね!
「というわけなんですよ、今の1球は。神沢も平柳がどのくらい自分にアプローチしてきているのかを測る1球でしたね。ボクシングでいう様子見のジャブです。相手の距離感を確認するためのチェンジアップでした」
「なるほど。……2球目は速いボールだ。高め。ストライクは取りませんでした。ということは平柳はある程度、神沢のピッチングに対するタイミングは取れているという見方でよろしいでしょうか」
「そういうことですね。次の新井も同じスタンスや感覚を持っているはずですから、神沢も多少思っていたよりも危ないな。丁寧にピッチングしていかないといけないな感じたはずですね」
「3球目も外れまして、4球目です!インコース打ちました、いい当たり!!ファーストの正面だ!ガッチリ掴んでキャンバスを踏みます。1アウトです」
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