奴はここにいた……!

もちろんデカ過ぎてそのままかぶりつけないので、サーベルのように長いナイフでカッティングしていく。



日本で見るローストビーフの3倍以上の厚さ。



総勢100人。辺りも少しずつ、夕焼けで赤く染まっていく中、全員の注目がMVPに集まる。



その切り分けた最初の1枚を俺がお箸で掴んで、かえでにあ~んとしてあげる。



かえでは口いっぱいに肉を頬張りながら、ゆっくり頷きつつ、涙を滲ませながら、ぐっと親指を立てるのであった。



チームメイトの奥様方は、そんなかえでの姿を見て、パパさんの熱いソウルを感じる。この子は大物になるわと、感想を述べていた。



そんな授賞式も終わり、肉の大盤振る舞いが始まる。トマホークはもちろんのこと、この日のためにと、ザムパパ達が用意した上質なアメリカンビーフ。



サーロインからフィレから、柔らかく煮込まれたタンが入ったスープもある。



アメリカの牛肉だから、ある程度覚悟していたのだが、なんと食べやすいことか。



平柳君家族と一緒のテーブルに着き、水嵩元アナやゴルフ帰りの桜井さんや黒崎さんと談笑しながら、肉を喰らい、酒を煽りの楽しいオフの時間は過ぎていった。




締めのハンバーガーも最高でしたわ。分厚いビーフパティに、わたくしはタップリとテリヤキソースを纏わせまして。レタスとトマトを挟み、バターを染み込ませたパンズで挟んでガブリ。


アメリカのバーベは迫力が違いましたわね。




そして始まるオールスター前。前半戦最後の戦い。



俺にとっては宿敵とも言えるライバルとの対戦も待っているのであった。




7月頭。



この週は、西海岸ウィーク。



シャーロットはノースカロライナ州。東アメリカンのちょっと下の方。


大雑把に言うと、ニューヨークから400キロ程下というところから、半日飛行機に乗ってやってきたのはロサンゼルスである。




赤色にAの文字が映えるスタジアム。



ここを本拠地としているのが、アナハイムエージェンツ。ロサンゼルスとサンディエゴという2強に挟まれた位置にホームタウンを置くチームである。



タレントは揃っているものの、投打がなかなか噛み合わずにポストシーズン進出を長いこと逃している勝負弱いチームと揶揄されてきた。



しかしそんなチームを戦えるチームに呼び覚ましたのは、かつて俺と新人王、シーズンMVP争いを演じた、元北海道フライヤーズの神沢である。



メジャーリーグ、アナハイムに移籍して既に4シーズン目。



移籍初年度から、完成度の高いピッチングが冴え、11勝、14勝、15勝と、メジャー5年目になる前村君よりも多くの勝利数を重ねていた。



今シーズンもここまで4、5、6月で16試合に先発してリーグトップタイとなる11勝を挙げている活躍。首位を行くチームの原動力となっていた。



俺からしますと、3年目の夏以来となる生神沢。試合開始1時間くらい前に遠くの外野でキャッチボールをしている彼を見ているのがなんとなく不思議な感覚に陥っていた。





そしてうちの先発は前村君。移籍初年度から先発ローテーション投手として言い働き。


タイミング的に援護がない試合や巡り合わせとなりまだ7勝止まりだが、防御率3、13は、神沢と遜色のない数字。奪三振数では上回っているくらいだ。



日本人投手が両先発、さらにアライヒラヤナギコンビ、首位同士の3連戦ファーストラウンドということで、なんだか凄い盛り上がり。



心なしか日本人のお客さんも多い印象だ。



「スターティングラインナップ!ビジターティーム、シャーロット・ウイングス!


ラインワン!ショートストップ!ナンバーセブン、ユータ・ヒラヤナギー!」



「「フォー!!」」



「ラインセカン、レフト・フィールダー、ナンバーフォー。トキヒトゥ、ア~ライ~!」



「「ピャ~!!」」




1曲歌わなくちゃいけない気持ちになってくるくらいのスタンドの盛り上がり。


俺や平柳君だけではく、シャーロットの選手の名前が読み上げられる度にこれですから、ホームのアナハイムの時なんて、やべーの何の。



ベンチからでは、スタジアムDJのボイスが時折聞こえづらくなる程だった。



そして、最終アップを終えた前村君がお付きのトレーナーを引き連れてベンチに現れる。



「どうですか、2人とも。調子の方は」



「それはどっちかと言うと、我々のセリフだね」



「そりゃもちろん調子はいいですよ。後はみのりんの作った朝飯があったら文句ありませんでしたけどね」



「何故平柳君がそれを言う?」






「ようこそ、メジャーリーグへ。今日のゲームはようやくやって来た日本人ファン注目のカード。西アメリカンリーグ西地区1位のアナハイムと、東アメリカンリーグ東地区1位のシャーロット・ウイングスとのゲーム。


解説は、福岡ハードバンクスから海を渡り、メジャーリーグシカゴでも活躍されました、尾口忠典さんをお招きしております。今日はよろしくお願いします」



「はい、よろしくお願いします」



「いかがでしょうか。アナハイムスタジアムは超満員。日本人のメジャーリーグファンの方々も多数見受けられます」



「近年では久々ですよね。こう日本人選手と同士がメジャーでぶつかり合うというのは、どうしてもここ何年かは、特に日本人野手苦戦傾向にありましたので」



「そうですね。ピッチャーというところでは、今日投げ合う神沢、前村といった辺りが1線級で活躍していましたけれども。


今年は平柳、新井という2人が日本時代以上のパフォーマンスを見せていますから、ファンの期待が大きくなっていくのも当然のところかと思います。



そして、今3塁ベンチからアナハイムの先発であります神沢が出て参りました。ハーラートップの12勝目を狙うマウンド。その神沢をシャーロットの1、2番コンビが睨みつけています」


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