コロコロこそ最強よ。
どん詰まり且つ、ボールの上っ面を叩き損じ。サードの前に弱々しく打球が転がった。
「初球打ちました、サードの前!ボテボテ!フランクリン前に出る!!捕らない、捕らない!ボールはライン際、残るか、切れるか!?」
全力で1塁を駆け抜けようとすると、1塁コーチャーがエンジンブレーキのジェスチャー。
スピードを緩めながらサードの方を確認すると、俺の打球はグラウンドに転がったままで、それをピッチャーとキャッチャー、サードの3選手が呆然と見つめているのだった。
「ライン上、残ったー!フェアです!!アライがコロコロタイムリー!シャーロット先制!!ついに試合が動きました!!」
やったぁ!と派手にガッツポーズをするわけでもなく、それでも賑やかに喜ぶチームメイト達を、まあまあと俺は落ち着かせようとした。
何はともあれ、ようやくピーターソンにプレゼント出来た1点。
ベンチの1番奥で、ホームインしたロンギーを迎え入れながら、高く高く挙げようとした手をベンチの天井にぶつけながら、ソノマザ・ジャイアントも喜んでいたので良かったです。
しかし、チェンジになってベンチに戻ると、平柳君をはじめとしたチームメイト達が……。
「ナイスコロコロ!」
「ナイスコロコロバッティン!」
と、初回のバックホームを引き合いに出してイジってきやがりまして。
でもそんなコロコロで奪った1点を守る最終回。
マウンドに上がったのは、クローザーのキースランド。
彼が一球入魂。得意のカットボールを投げ込み、空振りを奪う。虎の子の1点を守りきり、キースランドは吠えたのだった。
勝ちゃなんでもオッケーよ、勝ちゃあ。
前村君が先発した試合を落としてしまった後の翌日。2勝1敗とした4連戦の最終戦である。
この日は、朝からグズついたお天気でして。試合に行きたくないよぉ!どうして中止じゃないのよぉ!と、俺も朝からグズリモードでありまして。
試合開始前からずっと小雨。
そんな天候の中、早朝から試合を開催するために、頑張ってくれていたグラウンドキーパーのチームのみんなにデカイハンバーガーとあったかいコーヒーをご馳走しまして。
試合は始まった。
ただでさえ湿っている打線がさらに雨にさらされてしまう中、こういう時に躍動するのは誰なんだい?というお話。
初回は低めの速いボールを流し打って、芝生を滑らせるようにした1、2塁間を破るヒット。
2打席目はインコース低めの緩いボールにタイミングをずらされながらも、ゴルフのアプローチショットのように上体を回してバットのヘッドを残すようにして出した。
中途半端なスイングとも取れるが、ボールを乗っけたバットを押し出すイメージでギリギリショートオーバーの打球となった。
そんな形でもヒットになってくれたから後が楽になった。
1塁にフォアボールの平柳君を置いて、外の変化球に食らいついてセンターに弾き返した。
そしてバーンズの併殺崩れの間に先制点をゲットしたのだった。
ピッチャーが代わって4打席目。出てきたのはサイド気味に投げ込んでくる右腕でありまして、変化量のあるスライダーと、バッターの膝元を襲うシンカーが持ち球のピッチャーであった。
外に逃げるスライダーはきちいし、かといってインコースのシンカーを狙うのもちょっと難しいという感覚だった。
それゆえどっちつかずのまま、怪しい判定もあって追い込まれてしまったのだが、2ー2から5球目は、真ん中高めのボール球。
それに体が反応する。
追い込まれているわけですからね。おケツだけでなく、全員至るところを敏感にして待っていますから、少々のボール球であったが、バットが出てしまう。
しかし、それが今回は大正解。シンカーの抜け球だったのだろうか。高めでもギュインと来るボールではなく、いわゆる棒球ですから。
不思議とそういうボールはミートしやすいし、やたら飛ぶ。
打球は雨を切り裂きながら右中間のフェンスをダイレクトで叩いた。
雨に降られたお姫様のように、ズボンの裾を指でつまみながらスタンディングツーベース。
今日はアチアチのラーメンですわね!と、みのりんにアピールするどんぶりポーズを披露したのだった。
バーンズも右中間へ高々と打ち上げたが、ちょっと上がりすぎも飛距離は十分。
続くクリスタンテの深いセカンドゴロで俺は2点目のホームを踏むのだった。
勝ち越し。
併殺崩れと、4番の叩きつけた内野ゴロで得た2点で終盤に勝ち越し。
苦しみながらも要所を締めた先発のパーマーを労いつつ、セットアッパーと投入して試合を終わらせに掛かる。
8回は、トンプソンと左のイェーガーの2枚でピンチを凌ぎ、9回はキースランドが3連投。カットボールでバットをへし折り、最後の打球を平柳君がキャッチしてゲームセット。
チームとしては4試合連続5安打、2得点以下となってしまったが、3勝1敗と勝ち越して、大型連戦の最後を締めくくる地、ニューヨークへと向かうこととなった。
ご存知ヤンキーのチームである。
リーグ優勝40回、ワールドシリーズ優勝27回のまさにメジャーリーグの盟主に君臨するチームである。
そのニューヨークスタジアムに初めてやって来ましたけど、なかなかのものですわね。
伝統と格式による圧倒的な存在感を放つスタジアムにメジャーリーグの凄みというものをひしひしと感じるのである。
そんな素晴らしいグラウンドのお決まりエリアに、ちんまい打球を放っていく面白さを味わうのもまた乙なものである。
カンッ!
「流し打ち!ライトの前に落ちます!これなんです!日本の4割打者、ニューヨークの地でも持ち味を発揮しました!1アウトランナー1塁です!」
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