第3話 モブにも設定があったらしい
死にたくない!
その思いが少年を奮い立たせた。
彼は12歳だが、前世記憶を思い出した彼は精神年齢は上がっている。
左手を突き出す。
少年の手からは、光の光線が出た。
だがこれは魔法ではなく、オーラだ。
『オーラヴェイラー』というタイトルにあるように、オーラが主役のゲーム。
魔法以外にオーラが存在する。
全員持っているわけではなく、オーラの色で属性が変わる。
例えば、主人公のオーランは光のオーラ。光属性だ。
魔法とは違い、ここぞという時に使う。そう必殺技だ。
オーラは覚醒する事が可能で、覚醒する事で必殺技が増えて行く。
またオーラが濃くなる場面があり、威力がましたり広範囲に効果が出たりと、ストーリ上重要な役目を果たすのがこの仕組みだ。
そして、オーラは貴族が生まれ持っているもので、少年は市井で育っている。
本来なら使えるはずがない。
「使えた! じゃやっぱり僕は公爵家の息子だったんだ」
ゲームと同じ設定ならそうなると、彼は頷く。
少年は、立ち上がり走り出した。
(オーランが倒れているのに、僕が助かっているのはおかしいから逃げなくちゃ)
本来は死んでいるはずの彼は生き残ってしまった。
このままだと怪しまれる。そう思いその場から逃げ出したのだ。
(僕が公爵家の息子だと知れ命を狙っているって言われて逃げて来たけど、もしかしてモンスターって。それとも、あの賊? とにかく、今までの名前は使えないからどうしようと思っていたけど、前世の名前を使おう。レーキって名乗ろう)
彼は、前世の名が
レーキは、つい数時間前に両親に、自分達は育ての親だと聞いたのだ。
名前もそうだが、髪色も変えている――。
◇数時間前――
「痛……」
「よし終わったよ」
少年の母親がそう言うもレーキを見て眉をひそめてた。
さっきまでは瑠璃色だった髪色は、黒に近い濃い紫色に変わっている。
逃げる為に髪色を染める事になり、マジックアイテムで変えたのだ。
マジカルーレットスタンプという一回きりのアイテムで、魔法陣をスタンプする事で魔法を掛ける事ができる便利なアイテム。
それを右耳の裏にスタンプした。ちょっと大き目なほくろにしかみえないから、ほぼ見破られる事はない。
髪を変えた時にはわからなかったが、前世を思い出したレーキには、そんなアイテムを平民が持っているなんて事があるはずもなく、渡されたか資金としてもらっていたお金から出したのだと容易に理解できた。
だがこの時は、凄いアイテムだと思っていただけだった。
「大丈夫か?」
レーキの元の髪と似た色の紺色の髪の父親が、心配そうに言うと、母親が首を横に振る。
「しかし、もうアイテムはない。それによく見ると黒じゃない」
この時レーキは、髪の話をされているとは思っていなかった。
『オーラヴェイラー』でのキーワードの一つ、黒髪だ。
このゲームでは、黒髪は忌み嫌われる存在だった。
トントントトン。
ドアがノックされ、三人の視線はドアに注がれた。
「お迎えに参りました」
「さあ、馬車に乗ってテルテルタウンに行きなさい」
「このリュックに必要最低限の物が入っているから。服などは街に行ったら買い替えなさい」
そう言って、父親はリュックとお金を渡してくれる。
「いいかい。今までの名前は名乗らない事」
「僕は本当に、貴族の子なの?」
二人は、悲しそうに頷いた。
(二人とは、楽しかった思い出しかない。愛情を持って育ててくれた)
ここで駄々をコネても仕方がない。二人もきっと辛いんだ。
と、レーキは素直に従う事にした。
「今までありがとうございました。強くなったら二人を迎えに来ます。絶対に!」
「ありがとう。楽しみにしているよ。でも無理しないでね」
「いい子に育った。自慢の息子だ」
レーキは、目に溜まった涙が零れ落ちない様にドアに振り向き、目をひと拭きした後にドアを開ける。
「では行きましょうか」
そこに立っていたのは、行商人の格好をした人だ。
でも纏う雰囲気は違う感じ。
「行って来ます!」
「「行ってらっしゃい。気を付けて」」
さよならではなく、行って来ますと言って家を出た。
そして、彼はモンスターと出会う前に賊に襲われるのだった。
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