第4話 かまいたち
俺と酒呑童子は急いで化物の気配がするところに向かっている。
すでに空は曇りだし、いつ雨が降ってもおかしくない。風も強風と呼ぶほどではないが、かなり強い。
「なぁ、酒呑童子」
「なんだ?」
「今回の化物ってどんな奴なんだ?」
「俺もその場に行かないとわからないが、風を操る化物とみて間違いないはずだ」
「だよな。あ、まさか天狗とか?」
「いや、天狗にしては気配隠すのが下手すぎる」
「じゃあ何なんだろう…」
そうこう話していると、人影が見えた。男性、20歳前半のように見える。
「なぁ、もしかしてアイツか?」
「ああ、アイツから化物の気配がする。おい、お前何してる」
酒呑童子が男に声をかけた。
「おや?あなたもしかして、化物。人と一緒にいるということは化使いですか」
「いいえ違います。俺、やるなんて一言も言ってません」
「ああそうだ」
「ちょ酒呑童子⁉」
「あはははは、そうかそうか。で、何の用ですか?」
「お前を止めて、強風を吹かせれないようにしに来た」
「なるほど、五芒星のやつらか…」
「五芒星?」
「そういえば説明してなかったな。五芒星っていうのは、この世界の安全を脅かす化物や化使いを祓う人たちの集まりだ」
「そういうの最初に言わないか?」
「五芒星だろうが何だろうが私はこの仕事をしっかりとこなしたいのでね、邪魔するというなら容赦はしませんよ」
こい!かまいたち!
そう男が言った瞬間
「キィ、キィ!」
目の前に白く、前足の爪が鎌のように鋭く伸びた大きなイタチのような化物が現れた。
「かまいたちか…」
「かまいたちか…名前は聞いたことがあるがどんな奴か俺は知らん。まぁいい。俺の敵ではない」
そういって酒呑童子はかまいたちに一気に近づき、金棒でかまいたちを飛ばした。
「キィィィィィィィィ」
かまいたちが悲鳴を残してどこかに吹っ飛んでいった。
「晴人、覚えとけ。化使いを祓うと、化物もまとめて祓える」
酒呑童子はかまいたちを飛ばした勢いのまま、男に近づき、今度は刀で切った。
「ぐはっ」
男は後ろに下がり、切られたところを抑えている。しかし、相当深く切ったのだろう。血が全然止まらない。…え?それはそれでまずくね?
「酒呑童子、これアイツ死なないか?」
正直、めっちゃ不安。流石に死ぬ瞬間見たくないよ?
「ああ、安心しろ。化使いが死んだら化物が祓われたあと、化物に関する記憶を失ってよみがえる」
「なんだよそのご都合設定…」
「正直、これに関してはまだ不明なことが多いらしい。目立ったことできないしな」
「くそ、よくもやったな」
「あ、お前まだ生きてたのか。なかなかやるな」
男が苦しそうな声で言ってきた。酒呑童子の反応を見た感じ、一撃でやる気満々だったんだろうな。
「くそ、早く戻ってこいかまいたち!」
「キィィィィィ」
かまいたちが戻ってきた。
「お前もまだ生きてたのか。しかし、いくら耐えたとしても、お前に関しては結構軽かったからかなり遠くまで飛ばしたはずだが?」
「多分、風に乗ってきたんだと思う」
「どういうことだ晴人?」
「かまいたちって、ゲームでよく出るから知ってるんだけど、つむじ風に乗って移動するんだよ。そのせいか、ゲームでもスピード系のキャラのことが多い」
「でも、そんな都合よくこっち側に吹く風が吹くか?それに、仮に吹いたとしても、俺の金棒を受けてこんなにも無傷でいられるわけない」
たしかに、かまいたちはあんなに遠くまで飛んだとは思えないくらい傷がない。
「ほう、君なかなかいい着眼点だね。せっかくだし教えてやるよ。かまいたちは自分で好きな方向に好きな強さの風を出せる。これで風の問題は解決だ。そして傷の少なさだが、それはこういうことだ」
かまいたちが男の出血位置を触ったとたん、男の出血は止まった。
「な、どういうことだ?」
「かまいたちは傷を治す力がある。ただの素早いやつではないんだよ。さぁ、かまいたち、今度こそあの鬼をやれ」
「キィ、キィィィィィィ!」
ブウォ
強い風が一瞬吹いたかと思うと
ジャキーン
かまいたちの爪がステン同時を刺そうとしてた。しかし、それを酒呑童子は軽く刀で受け止めた。
「確かに、お前の回復能力はすごい。スピード技だけでもなかなか強力なのにな。ただ、俺の敵ではない」
ジャキンジャキンジャキーン
酒呑童子とかまいたちの激しい戦いが始まった。
風切り
ブウァン
いきなり俺のほうに鋭い風が吹いてきた。俺が間一髪のところでかわすと、後ろにあった自動販売機が三枚おろしになった。危なかったこれ避けなかったら死んでたって…
「わざわざかまいたちが勝つのを待たなくても、奴の化使いであるお前をやればおしまいだ」
「いや俺ちゃうんやけど」
「問答無用!」
「だから俺そういうのしてないんだよぉぉぉぉぉぉぉ」
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