第一話 オカルト板の住人達。
―――こんばんは。
少し前に、「オカルトラジオ」の件でスレを立てた者だ。随分と待たせてしまったこと、申し訳ないと思っている。それでもここに集まってくれた皆は、聞きたいと待っていてくれた奴らだと思う。最初に礼を言わせてくれ―――
みんな、本当にありがとう。
それじゃあ約束の時間になったので、さっそく書き込みを始める。
そう書き込んで、私は一旦キーボードを打つ手を止めた。チラリと机の上のデジタル時計に視線を送ると、1月3日のAM3時33分。傍らにある古びた日記帳が、何か言いた気に私を見つめている。水を一口飲んだ後、大きく息を吸い込んで気持ちを落ち着かせ、私は再びキーボードに向き直った。
私の打ち込みは早くはないので、全て書き込みを終えるのは、すっかり夜の帳に包まれてしまった目の前の窓が朝日に包まれる頃までは掛かるだろう。
それでも―――私は必ず書き切ろうと思う。
そうしたいと、心が強く望んでいるから……!
そして私は、書き込みを始めた。
そう―――
まずは、この二人の出逢いからだ。
◇ ◇ ◇
スレ民A:なあ、例のタクシーの件、何か書き込みはあったか?
スレ民B:いや、今日も進展なしだな。
スレ民A:………そうか、やっぱり何かあったんじゃ?
スレ民C:そうかもしれん。なんか変な事件に巻き込まれてなきゃいいんだが……
スレ民B:大丈夫じゃね?あんなの、単なる釣りだって。
スレ民D:いや、そうとも言い切れんぞ。今日、ネットニュースに載っていたんだが、都内で某タクシー会社の運転手が一人、勤務中に行方不明になってるらしい。そいつが乗ってたタクシーは、〇△□病院の横にある駐車場で乗り捨てられていたんだと。
スレ民B:マジか!?………まじヤバくね?
スレ民A:ああ、オレもそのニュース知ってる。そのニュース読んだ時、真っ先にあのスレが頭に浮かんだからな。
スレ民E:なあ、おまえら落ち着けって………。この世の中で、一体、年間に何人の人間が行方不明になってると思う?
スレ民A:まあ、それはそうだが………なんか胸騒ぎがするんだよ。
スレ民E:でたよ~!第六感でマウントとか、マジ草!www
スレ民A:いや、別にそういうんじゃないんだが………
スレ民D:オレはAと同じ意見だな。オレもそのニュースを見た時、同じ感想を持ったからな。あのスレを見ていれば当然だろ?
スレ民B:マジで面白くなってきたな!
スレ民C:おいおい、不謹慎だろ?人の命がかかわってるかもしれないってのに。
スレ民B:………ああ、そうだったな。わるかったよ。
スレ民C:―――まあ、どちらにせよ……だ。あのスレ主から続きが書き込まれない以上は、進展なしだな。情報が少なすぎて、これ以上はどうしようもないだろ?
スレ民E:それはそうだな、奴の帰還を待つしかないべ。
スレ民A:そうだな………それじゃあ、また何かあったら情報くれな。
スレ民D:同じく。それじゃあまたな、おまえら。
スレ民A:おう、またな。
そう書き込むと
佳祐が頻繁に出入りしている、インターネット上の電子掲示板はオカルト専門で、その手の話が尽きることは無い。もう数年間もその板に頻繁に出入りしていた佳祐は、その板の中でも中堅と名乗ってもいい存在だ。その掲示板に、タクシーの運転手を名乗るスレ主から変なラジオ番組を聞いたと書き込みがあってから、もう数週間が経っていた。その内容に一時、板内はザワついたが、一度書き込まれてからずっと書き込みが無かったこともあり、今は落ち着きをみせている。
(これは、騒ぎになりそうだぞ………!)
携帯電話で例の記事にもう一度目を通しながら、佳祐は不謹慎だが少しワクワクしていた。
通称”オカルトラジオ”と呼ばれているその書き込みがあった時、自ら検証しようと普段は聴くことなど無いラジオを物置から発掘したり、購入したりしたこの板の住民は大勢いたのだ。何を隠そう、佳祐もその一人だった。
(………もう直ぐ、時間だな)
携帯電話の画面で時間を確認すると、時刻はAM1時58分。佳祐は机の上に置いてある小型ラジオに手を伸ばすと電源を入れ、周波数666の付近でダイヤルを調整した。
ジーピロピロピロ………
「………くそ、今日も繋がらないのかよ?」
もう、何十分そうしていることだろう。何度、周波数を調整してみても、ラジオから流れてくるのは気の抜けたような電波の音だけだった。
佳祐が、このラジオを購入してからもう何日間も―――この日課を繰り返しているが、未だに成果は無し。チラリと時計に目をやると、時刻はもうPM2:30分だった。
佳祐は、ふわ~っと大きな欠伸をして、ラジオのスイッチをOFFにした。
(………明日も仕事だし、もう寝るべ。)
そんなことを考えながら、ずっと敷きっぱなしの布団にゴロンと横になった佳祐。しかし、その欠伸は直ぐにヒャッ!という悲鳴に変わった。
「―――つ、冷たっ!?な、何なの?」
佳祐が慌てて布団から飛び起き、寝ころんだばかりの布団を凝視すると、何か遠い昔に見た記憶があるシミの様なモノが大きく広がっていた。
(………お、おねしょ!?)
それは、確かに―――幼少期の薄い記憶の中に残っている、オネショをしてしまった布団のシミのようではないか?
(お……俺、28歳にもなって―――オネショしたの!?)
恐ろしい考えが頭に浮かび、佳祐は震えあがった。恐る恐るシミに手を当て、震える指で付着した液体の匂いを嗅いでみる。
(む、無臭………だよな?)
その疑惑が薄くなって胸を撫で下ろしながら佳祐が布団を凝視していると、何かがポトリと布団に落ちてきた。
(………うん?今、何か上から落ちて………?)
そうして天井を見上げた佳祐は、ギョッとした。
天井にも、布団と同じ大きなシミが広がっているばかりか、今にも落ちてきそうな水滴が、幾つもぶら下がっているではないか。それは丁度、布団の真上を覆う様に大きな広がりをみせている。
(あ………っ、雨漏り?いや、今夜は雨なんか降らないはずじゃ………?いやいや待てって!大体ここは、十階建てのマンションの二階で最上階じゃないだろ!?それじゃあ、何だよコレ?―――呪い?ついに俺にも、怪奇現象が起こったんか!?)
今までの人生で経験したことの無い出来事でパニックになりながら、佳祐は部屋の中をグルグルと無意味に歩き回った。
(―――いやいやいや!普通に考えてみろ、そんな訳ないだろ!?オカ板にどっぷり浸かっている日々の後遺症が、緊急事態の今になって、こんな弊害を生むとは思わなかったわっ!)
そうだな、これって………
普通に考えて、上の階に住んでる奴のせいだろ!?
―ヒミツの花園🥀― 第二話 「干物女と童貞男」へと続く
次の更新予定
ーヒミツの花園🥀ー あたら夜🌙物語シリーズ 虹うた🌈 @hosino-sk567
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。 ーヒミツの花園🥀ー あたら夜🌙物語シリーズの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます