第19話 狼の足跡
足、と言われうなずくものが数名。幕末組は目ざとくて嫌になる。瓦礫を受け止めたときに若干痛めている。
「ああ、大丈夫だけど…。」
と視線を巡らすも納得いかない保護者たち。
ぴしりとるかくんが手をあげる。
数分後、るかくんに肩車された私は復興に勤しむ方々の好奇の視線を集めることとなった。
「元隊士って、本当に?」
「ああ。名前まで憶えてんだ、間違いない。」
誰よりも新選組の《正義》を知る者。誰よりもその執念を知る者。
永倉はここで一つ、事実を隠した。
「《芥》、名前八朔芥玄。容姿は聞いたまんま。髪が茶髪で長め。入れ墨が手元首元に複数確認できた。剣術より体術の方が得意そう。これはなんとなくだけど、近いうちに接触してくると思う。」
今回の主犯だと考えられて、私たちが追う目標。一くんと朱現くんから補足がなかった為、他の報告を聞く。
「町の被害はかなり大きい。通り一体に延焼してる。人的被害も当然ある。死亡者は今のところ確認してない。」
巴さんの言葉で思い出し、ここで一人下敷きになっている建物があることと、5人は斬ったことを報告する。いい顔をされなかった。
「京が俺に任せたあの親子は問題ないらしいぜ。俺も数人変な奴を倒した。殺してねえ。近くにいた警官に押し付けてきた。」」
「変な奴って、爆弾持ってたり日本刀持ってたりする一緒に見た感じの?」
「ああ、そうだ。」
永倉さん、朱現くん、一くん、私が当該人物らと交戦していた。人相を確認しあうと、巴さんも見かけた気がすると言っていた。
「で、その中に元新選組隊士が混ざっていた、と。」
真偽を確かめようにも、私が面識のある平隊士は死んでいる。一くんと永倉さんに確認してもらうしかない。
「…待って、さっき斬ったのの中にいるかもしれない。そのまんまにしてあるから、確認しに行こう。」
肩車のまま、るかくんが走る。揺れる揺れる。恥ずかしい。もう17なんだけど。
方向を指し示しながら進んでもらうと、そこには血の海が波打っていた。
「ここであってるよ。…出血量がおかしいし、傷増えてる。京、ここまでやらないしやってない。」
肩から降りて現場を確認する。めった刺し、という表現がよく似合う亡骸が倒れていた。永倉さんが服をめくり傷を確認する。巴さんがるかくんの視線を遮っていた。慣れていない、慣れるべきではない。こんなもの。なんとも思えなくなった私は可愛げない。
刀傷で間違いないと永倉さんは言う。私が殺した人だが、なんだかかわいそうになって手を合わせた。そして亡骸に元新選組隊士はいなかった。確かに、随分と弱かったことを思い出した。新選組はこんなじゃないことを良く知っている。
「こいつら、八朔と一緒に行動してたから直属の部下なのかなって思ったけど、そんな強くなかったの。」
ここで、もう一人斬った人がいたことを思い出す。周りを見渡すが、見つけることができなかった。すぐ共有する。
「そいつは結構近しい感じで、八朔の事かばってた。でも強くはなかったなあ。」
傷の増えた遺体に消えた遺体。いないはずの元新選組隊士に変な関係の配下。
「一つ、考えられること、あるかも。」
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