14 再び運命は動き出したにゃん!(中編)

「はぁ。このところ、ニーナさん来ないですね。

 今日もスフィアちゃんのためにお菓子作って持ってきたのに…

仕方ない、今日も3時に皆さんに配りますか…」


「ふっふ、ミカン、あなたって本当にスフィアちゃんが大好きよね。」


「だって可愛いじゃないですか。」


「まぁね。私だって、妹に欲しいぐらいだもの。」


「マリアさんもですか、ですよね〜。」


すると建物の扉を勢いよく開けて、例のドーラ大佐と数人の部下達が入ってきた。


「失礼するぞ。」


«ガヤガヤガヤガヤ…»


『あの人達って、王都の兵隊さん達じゃない…?』


『あの制服、間違いないな。』


『お偉いさんがどうしてこんな田舎の町に…?』


「ここが受付でいいのかな?」


「はっはい、そうです!」


「御用はなんでしょうか…?」


「うむ、我らはこういう者だ。」


するとドーラ大佐は受付の二人に

王都直属の討伐隊に所属している者だけが

使用と所持する事を許可されているロゴマークのついた身分証明カードを見せてきた。


「討伐隊の方々だったとは!」


「これは大変、失礼を致しました!」


それを見た二人は慌てて立ち上がり、敬礼した。


「ハッハッ、そうかしこまらなくてもよい。

 我はただある者を探すために情報を求めてきたのだ。」


「情報ですか…?」


「このギルドの隊長さんを呼んでもらえるか?」


「そっそれが…」


「アリア隊長は今、ちょうど放浪の旅に出てまして…」


「放浪の旅…?まぁよい、ならば君達に聞こう。

 つい最近、この街に常に帽子をかぶり続ける少女がやってきてはいないか?」


「そっそれなら…」


「待って、ミカン。」


「マリアさん…?」


「君たちのその反応、心当たりがありそうだな?」


「あっあのドーラ大佐殿、聞いてもよろしいでしょうか…?」


「何かな?」


「討伐隊の方々が来られたということは今、聞いた子はつまり…」


「うむ、あの〇〇の国から侵入してきた者だ。」


「そっそんな!」


「とても信じられません…」


二人は青ざめた表情をした。


「君らがそんな反応になるのも当然だろう、見た目は人間の娘そのものだからな。」


「でっでも、どうやってここにいると…?」


「ああ、それはだな、この私の有能な部下、エルナ少尉の魔力探知でわかったのだ。」

 

「紹介に預かりました、エルナ少尉と申します、よろしく。」


「はっはい…」


「こちらこそ…」


二人はエルナ少尉のあまりの美しさに一瞬、ときめいた。


「彼女は魔力探知というレアスキルの持ち主なのだよ。」


「なっなるほど、エルナ少尉はあのニーナさんと同じレアスキルを…」


「ほう、この町にもレアスキルを持っている者がいるのか?」


「あっええ、一人、この町を拠点に活動なさっていらっしゃいます…」


「まぁ、それはいい、もし知っているなら教えてもらおう、我がさっき聞いた、帽子をかぶり続ける少女のいる場所を?」


「そっそれは…」


受付の二人は互いに目を合わせながら、中々、答えようとしない。


「早く教えないか?」


「そっその…」


「まさかと思うが今さら知らないなどとしらを切る気じゃないだろうな?

 奴を匿うと君らもただじゃ済まなくなるぞ?」


「あっあのですね!」


「ミカン!」


「教える気になったのかな?」


「この街にはもう居ないんです!ちょうど先程、次の街に行くと旅に出られて!」


「ほう…それは本当かな…?」


「はい!嘘は言ってません、誓って!」


「君はどうだね?彼女の言っていることは本当なのか?」


「マリアさん…?」


「はい、今、彼女の一言一句、言った通りです。

 この街にもうあの子は居ません。」


「・・・・そうか、わかった、お手数をかけたな。」


「いっいえ、とんでもごさいません…」


「お仕事中、失礼しました。」


「行くぞ、お前たち!」


「はっ!」


ドーラ大佐と部下達は受付を後にした。


「怖かったぁ、ありがとうございます、私に合わせてくれて。」


「いいのよ、あなたの気持ちはよくわかるもの。」


「私にはあの子が悪い子だなんて思えないんです…たとえあの大佐さんが言うように〇〇の国の住人だとしても…」


「私も同じよ。あの二人と会わずに王都に帰ってくれるといいんだけど…」


一方、冒険者ギルドを出た、ドーラ大佐達はというと…


「エルナ少尉はどう思う…?」


「彼女達は明らかに動揺していました、確実にまだこの街にいますね。」


「うむ、我もそう思った。しかし、あの様子だと強く問いただしても話す気はなさそうだな?」


「はい、仰る通りだと思います。」


「それに騒ぎを大きくすると奴に気づかれて、町から逃げられる恐れもある。

 やはり我らで地道に聞き込みでもして情報を集めるしかあるまいな、お前達、頼んだぞ?」


「はっ!」


ドーラ大佐の部下達は散り散りになって、街の人達に聞き込みを始めた。


「これで見つかるでしょうか?」


「だいじょうぶだ、この町はそんなに大きくはない、きっと奴の居場所をすぐ…」


「大佐?どうかなさないましたか?」


「奴だ…奴に違いない…」


ちょうど少し先からニーナ達が歩いて来ていた。


「ごめんにゃ、まだ買い物の途中なのに冒険者ギルドに寄りたいって行って。」


「いいんだよ。私も受付のお姉さん達にも会いたいし。

 ニーナお姉さんが仕事をサボってること、私も一緒に謝まってあげるから。」


「にゃはは…よろしく頼むにゃん…」


【やっと見つけたぞ?】


「えっ?」

「えっ?」


するとそんな二人の前に怖いほどニヤついたドーラ大佐が現れたのだった。


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