15 再び運命は動き出したにゃん!(後編)

【ハッハッハ、なんという幸運だ、まさかおまえから我々の前に現れるとはな?】

 

「あっあなた誰なんだにゃん…?

 私、あなたなんて知らないにゃん…?」


【我が用があるのはその帽子の小娘だ、なぁ?】


「スフィアに…?」


【探したぞ…】


「ひっ!」


「スフィア…?」


スフィアはニーナの後ろに隠れるとブルブルと震えていた。


「なっ何でだろう…私、あのおじさん、すごく怖い…」


「そうなのかにゃ…?」

(普段から人見知りなスフィアだけど

 ここまで怯えてるのは初めて見た気がするにゃん…?)


「最初は拘束でよろしいですね?」


【ああ、奴から聞かなくてはならないこともあるのでな…】


「かしこまりました、では…」


エルナ少尉は腰に付けていた鞘から刀を抜いた。


「なっ何のつもりにゃん!?」


「そこの猫耳をつけたあなた、今すぐ後ろで隠れている娘をこちらに引き渡しなさい、さもなければ…」


なんの躊躇もなく、するどい刃をニーナ達に向けた。


「容赦は致しませんよ?」


「理由がわからないにゃん!」

(なっ何なにゃん、こいつら、いきなり現れたと思ったら、スフィアを引き渡せなんて!)


「ニーナお姉さん…」


「だいじょうぶだから、スフィアは後ろに隠れてるにゃん。」


「うっうん…」


「どうして、あなた達にスフィアを引き渡さなきゃならないにゃん!」


「我々は王都直属の討伐隊のものだ。これでわかるかな?」


「全然わからないにゃん…?何にゃん、討伐隊って…?」


「おいおいお嬢さん、我々を知らないはずはないだろう?

 それともしらを切る気か、この娘をかばうってことがどういう意味になるか知っているはずだろう?

 この娘がなぜ常に帽子をかぶっているのかを…」


「えっ…?」

「えっ…?」


その言葉にニーナ達は青ざめた表情をした。


(スフィアの頭の角のことを知ってる…

じゃあ、スフィアを引き渡せって、つまり…)


【知ってるのか、知らないのか、ハッキリしろ!】


「・・・・・知らないにゃん…私にはさっぱり…」


【そう言うと思ったぞ、だが、これなら言い逃れはできまい?】


ドーラ大佐は手を広げて、術を唱えた。


【今、流れる風、ほんの少し強き風なって

 あの者達に吹いてみせよ、小さな突風(スモール・ガスト)!】


すると突風がニーナ達を襲った!


「この風は何にゃん!」


「きゃっ!!」


「あっ、スフィアの帽子が!」


かぶっていた帽子が飛ばされて、スフィアの頭の角が人々の前であらわになった。


【ハッハッハ、どうだ、これでもう言い訳、出来ぬであろう?

 見よ、皆の者!これが奴の正体だ!】


«ガヤガヤガヤガヤ…»


『そっそんな、信じられない…』


『でもあの角は…』


『なんて恐ろしい姿なの…』


「ニーナお姉さん…」


スフィアは泣きながら、震えた声でニーナの名前を呟いた。


「スフィア!」


ニーナはスフィアを守るように抱きしめた。


「私、また命を狙われるのかな…?」


「安心して、絶対にそんなことさせないにゃん!」


【さぁ、その醜い正体がわかったところで、そいつを渡してもらおうか?】


「醜い正体ですか…」


【エルナ少尉、何か言ったかね?】


「いえ、べつに…」


「もしいやだと言ったら?」


ニーナの目つきが鋭くなり、怒りに満ちあふれていた。


【さっき言った通りだ、容赦はしない、力ずくでも一緒に拘束して、きさまも処刑することになるだろう、それが嫌だったら、とっとその小娘を渡せ!】


『動物能力(猫)の脚力を強化!』


【んっ?なんだ?】


「逃げるよ、スフィア…」


「えっ…?」


ニーナはスフィアを抱き抱えたら、砂埃が舞うぐらい物凄い速さで走って逃げた!


【くっ、なんて速さだ!

 あれでは追いつくなど出来んではないか!】


「大佐、どうなされますか?」


【そんなもの決まっておるわ!

 聞き込みをさせている隊員達を全員集めて、逃げている奴らを追い込むのだ!】


「わかりました。」


【ここまで来て逃がすものか!】


果たして逃げたニーナとスフィアの運命はいかに…


(ハァハァ…絶対にスフィアを守るにゃん!!)


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