閑話① 畑を大きくしよう
嬉しいことと面倒なことが、同時に起こった。
嬉しいことは、ゴブリンの女王、ミコを仲間にできたこと。その結果、巣穴にいたゴブリン全員を仲間にできた。たくさんを仲間にできたことは大きい。戦力は多くて困ることはないのだから。
困ったことは、仲間が急に増えたこと。
じっくり数えてはいないが、100匹はいる気がする。ゴブリン100匹となると、結構な食料が必要だ。森の中で取ってくる果物や肉、そして畑で作っている芋で十分過ごせていた。でも、これからはそうはいかない。
そしてなによりの問題。こいつらはもれなく全員、腹ペコだ。腹ペコのヤツらには、飯を食わせてやりたい。そのためには、大量の食料が必要だし、食料を安定供給するための仕組みが必要だ。
これは大変だ。
大変、たいへんだ。
──さて、どうするか。
§
色々考えた結果、オレはすぐにどうにかするのを諦めた。
時間はかかるが、一つひとつ目標を決めて、積み上げることにした。
その第一歩は、──畑の強化だ。
畑は食料生産の肝。強い畑からは良い作物が採れる。そんな気がする。
そんな重要な畑を作るときに、大切なことは2つある。
ひとつ目は場所。
畑に向いている場所は日当たりが良くて開けた場所だ。最初に畑を作った場所は、まさに最適だった。でも、そんな理想的な場所が、そうそうあるのだろうか。
結論から言って、そんなものはなかった。安全に行き来できる範囲で、新しい畑を作ることは、今のままでは厳しいことがわかった。
この問題は一旦保留しよう。
ふたつ目は土。
強い畑は、土が良い。とにかく良い。豊富な栄養分があれば、作物は立派に育つし、石などの邪魔なものがなければ、きれいな形で収穫できる。きれいな形で収穫できれば、料理したときの見た目も良く、美味しそうに見える。とにかく、土、土、土、だ。この土に関しては、なんとかできそうな気がしていた。
前に、コシリンが生々しいものを捨てていた場所。あそこの生々しいものを落ち葉とかと一緒に混ぜて水分を飛ばせば、肥料として使える気がする。
ということは、場所の問題さえクリアできればOKだ。
そうと分かれば、やることは明白だ。
ひとつ。今ある畑を大きくすること。
でも、この方法では限界がある。
だから。
ふたつ。行動範囲を広げて、新しい畑の場所を探すこと。
この2つだ。
§
まずは、今ある畑の拡大からだ。
これは周りの土を掘って柔らかくすれば良い。ミラに調達してもらった
なかなかの運動だった。そうして、畑の面積を2倍にしたとろこで、ふと気がついた。
──これ、ゴブリンにやり方を覚えてもらった方がいいのではないか?
そうして、畑仕事ができるゴブリンを増やしていって、最終的に自分達だけで全部やれるようになるのが一番じゃないか?
ここに気がついてしまうとは、やはり天才。
よしっ、そうと決まれば、早速人材ならぬ、ゴブ材を探しだ。
オレはミコに相談をした。
できるだけ、自分で理解してやれるゴブリンが欲しいことを伝えると、ミコは眉間にシワを寄せた。なんでも、ゴブリンは命令すれば聞くが、内容を理解してるかは、相当怪しいらしい。
まぁ、そうですよね。
ゴブリンですからね。
そうはいっても、結構な数がいるわけだし、なかには一人くらいいるじゃないかと思い、洞窟のなかで声を出しながら歩いてみた。
「誰か~、畑仕事やりたいひと~」
ほとんど全部のゴブリンが、無視か遠目から見るだけだったが、一人だけオレの前に歩き出たヤツがいた。
「畑仕事、する?」
ゴブリンはしきりに「ピギャー」を叫んでいる。なにかいっているかわからないので、とりあえず果物を食べさせた。
「──仕事、します!」
「おっ! やるか! いいぞぉ」
早速、そのゴブリンを畑につれていった。
そして、目の前で芋を収穫して、火を起こして焼き芋にしてから渡した。
ゴブリンは焼き芋を不思議そうに見ていたが、口に入れるなり目を見開いて驚いた。ゴブリンはオレと焼き芋を交互に見たあと、そのまま全部口に入れた。
「うまいか?」
「──うまい!」
「君にはこれから、この畑でこの芋を作って貰うんだ。いっぱいできたらいっぱい食べれる。それに、芋だけじゃなく、他の食べ物も採れるようにする。君の頑張りで、これを食べれるゴブリンが、もっと増えるんだ。すごくないか?」
「うん。すごい!」
「いいね~。よしっ! 君に名前をあげよう。今日から君はタケリンだ。まずは一緒に、畑を拡大していこう!」
タケリンは力強く「うん、うん」とうなずいた。
オレとタケリンの2人で猛烈に土地を耕し、拡大できるぎりぎりの所まで大きくした。面積でいったら、もとの10倍くらいはありそうだ。代わり、野外の食事会場はなくなってしまったが、まぁ、そこは目をつむろう。
最初の、畑の拡大は成功だ。
でも、まだまだ足りない。
次なる作戦は、新しい土地を求めて、未知のエリアへ踏み出すことだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます