第2章
第11話 次なる目標
日が高く、影か短くなる時間帯。
洞窟の入り口で、恒例となった昼食会が開かれていた。
ミラとララ、リリィ、それにミリちゃん。こっちはオレにトモミん、ダイフク、それに、ミコ。もはやちょっとした人数だ。
みんな、オレの作った料理を手に持って、おもいおもいの場所で、おもいおもいの相手と話をしている。そんななかで、オレはミラとミコの3人は少し離れたところで話をしていた。そこには倒れた木があり、ミコが腰かけるにはうってつけの場所だった。
ミコは倒れた木をベンチにして両足を伸ばして座っている。その伸ばされた左足を、ミラは注意深く触り、長さを計ってメモしている。
「どう? 義足、作れそう?」
「もちろん大丈夫。でも、このサイズだと、子供用だと小さいし、大人用だと大きすぎるからオーダーメイドになるかな。少し時間がかかるかも。でも世界で一つだけの、ミコのための義足を用意できる。歩いたり、走ったり。普通に生活できるようになるよ」
その言葉に、ミコの目が細くなり、顔がうっすらと赤くなる。
嬉しさを外に出さないようにする姿は、なんだか可愛らしくて、同時にミコが嬉しいことが、嬉しかった。
「オーダーメイドだと、本来なら1ヶ月~2ヶ月位かかるんだけど。店長が知り合いだから、ちょっと無理を言って早く作ってもらうね」
「無理はしなくていいんだ。こんなにしてもらっているのに、私からはなにもできなくて、すまない」
ミラはミコの頭に手をおいた。
「気にしなくていいの。ミコがまた、歩けるようになるのが見たいだけなんだから」
ミラは、ミコの短くて綺麗な髪を撫でる。
まるで姉妹のような光景だった。
ミコは俯いて「ウン」と答えた。
ミラは、嬉しそうに笑い、それから立ち上がって、少し離れて見ていたオレの所に来た。
「サンキュ、ミラ」
「いいんだよ。気にしないで」
「あとは、お金についてなんだけど」
「それも大丈夫。私はキミから、お金よりも素敵なものをもらっている。キミと会って、ミリも元気になったし、リリィもララも経験を積んで、危なっかしいながらも一人前になれた。あの2人、今では専属でパーティに所属しているんだよ。私も、雇われだけど、いくつか良い
マジか。そんな風に言って貰えると、めっちゃ嬉しいな。
オレ、ご飯食わせただけだけど。
「本当に大丈夫なのか?」
「本当に、本当」
「分かった。なにかできることがあったら、いつでも言ってくれよな」
「お互いにね」
そう言ってミラは笑った。
出会ったときの、べっとりと張り付くような、疲れと影はもうない。口調も、以前より優しくなっている。なにより、笑顔が明るくて、素敵だった。それだけでもう、満足だ。
「ところで、ゴブリンの被害はまだ続いているか?」
「うん。前と同じ、ずっと続いている」
そうか。
ゴブリンの巣穴はひとつ押さえた。
それでも被害が減ってないってことは、別のところが原因なのだろう。
別の巣穴がある。
それが被害の元凶だとしたら。
そこを押さえることは、オレ達にも、ミラ達にもメリットがある。
「分かった。たぶんウチらとは別の巣穴があるはず。こっちで探して、おとなしくさせるよ」
それを聞いたミラは難しそうに、眉間にシワを寄せた。
「どうした?」
「いや。キミにそう言ってもらえるのは嬉しいんだけど」
──ん?
ああ。
あれだな。
ミラはきっと、ゴブリン同士での争うことを、同族同士での争うことを、気にしてるのかな。
「別に気にすることじゃないよ。人間だって、人間同士で戦うじゃん」
「そうだね。その通り。でも。私はそれが、あんまり好きじゃないの」
ミラの言っていることは、オレには理解できる。
争うよりも、協力した方が良いに決まっている。
でも、現実はいつだって不合理だ。
「理想論だね。理想じゃ、飯は食えない」
「──わかってる」
「でもさ。オレはミラの考え、大好きだよ。オレも世界が平穏だったらいいな、て思うからさ。だからこそ、今回のことはオレがやるべきだと思ってる。ゴブリンが家畜や人を襲うのは少なからず食べるものがないからだと思うんだ。だからオレが行って、食べ物の問題を解決する。そうすれば、町に被害はいかなくなるはず」
オレの言葉を、ミラはびっくりしたように聞いていた。
それから小さく笑って言った。
「それは素敵だね。私にできることがあれば、何でもする。だから協力させて」
「サンキュ! じゃあ早速。ゴブリンについて新しい情報があったら、教えて欲しい」
「他には?」
「調理器具と農具。この2つがとっても欲しいです」
「分かった。できる限りで用意するね」
§
食べたあとは片付ける。
みんなで昼食会の片付けを終え、めいめいの仕事に戻っていく。
さて、と。オレも、オレの仕事をしよう。
オレの仕事は、巣穴を見つけて、制圧することだ。
そのためには、重要人物の協力が必要不可欠だ。
今回の作戦のキーマン。
松葉杖をついた、その人物のところにいく。
「なぁ、ミコ。ちょっと話しをしても、大丈夫?」
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