初めての任務 その⑤
時計の針が18時10分を差した頃、葵、白華、朱珠の3人はトンネルの東口で、如月警部と計画を立てていた。
如月警部
『事故は全てトンネルの東口から入った車が、対向車線の車に突っ込む形で起きていて、その突っ込んでいった全ての車が、このトンネルに来る前に必ず、ここから信号を2つ越えた所にあるコンビニの前の道路を走ってきているんだよね。』
『だから、この事故が霊体の仕業だとすれば、多分、このトンネルからコンビニまでの間に、霊体が潜んでいるハズなんだ。』
如月警部の話しを聞き終わると、白華は葵の方を眺めながら口を開いた。
林藤 白華
『もし仮に霊体の仕業だとすれば、最悪の事態を想定して、誰かは、ここに残った方が良いよね?』
綾女 葵
『その方が良いかもしれないわね。』
不安そうな顔で葵に近寄る朱珠。
神原 朱珠
『私は、何したらええん?』
綾女 葵
『バラちゃんは、私と一緒に、霊体がいないか探してちょうだい。』
朱珠は葵の言葉に、不安そうな顔で『分かった。』と返答した。
そんな3人を眺めながら如月警部は、『そうと決まれば、時間も迫ってきたし、僕達は、この辺りで見張りを立てようか。』と先程とは違い、凛々しい顔をしていた。
林藤 白華
『そうですね。』
話しを終えると、白華と如月警部がトンネルの付近で待機をする中、葵と朱珠は、コンビニまでの道のりを歩き始めた。
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コンビニの方へ歩く、葵と朱珠。
神原 朱珠
『なあなあ、葵ちゃん。1つ聞きたいねんけど、悪い霊体ってどんな感じなん?』
『まだ学校でしか逢ってへんから、よう分からんねん。』
綾女 葵
『そうね。分かりやすい特徴を、強いて言うとすれば「霊体を包んでいるオーラ」かしら。でも目に見えて分かる程、自分の持つオーラを放っている霊体はいないわ。』
『皆、隠しているのよ。誰かに、そっと近付けるようにね。』
そう言うと葵は、1m先にある歩行者信号の向かい側で信号待ちをしている男性を指差した。
神原 朱珠
『あの人が、どないしたん?』
葵は朱珠の問いに対して、『バラちゃん、念の為、球体を構えておいて。』と言葉を発した後、刀の柄を強く握りしめて、信号の方へと走って行った。
すると信号の向こう側の男性は、不気味な笑みを浮かべると、歩行者信号が赤にも関わらず、道路を横断し始めた。
神原 朱珠
『あかん、あかん!』
『おっちゃん、何してんねん!』『死ぬで!』
朱珠が大声で叫びながら、歩行者信号の方へ走って行くも、男性は足を止めず、
そんな中、一台のトラックがスピードを緩めること無く、男性に突っ込んでいった。
どうやらトラックの運転手には、男性の姿が見えていないようだ。
青ざめた表情で唾を飲み込む朱珠。
だがそのトラックは男性を貫通し、男性は何事も無く歩き続けている。
神原 朱珠
『(嘘やろ!)』
『(もしかして、このおっちゃんが、この事件の黒幕なん?)』
葵が信号の手前で、白と黒に彩られた球体を床に叩き付ける中、男性は体から漆黒のオーラを放ちながら、トラックの後ろを走ってきた、白い乗用車と共に姿を眩ましてしまった。
どうやら、白い乗用車の運転手に憑依したようだ。
息を切らしながら朱珠が信号の方へ向かうと、葵はスマホを取り出し、白華に電話をかけていた。
葵は電話を切ると、朱珠に向い『リンドウちゃんの方へ行くわよ!』と言い、トンネルの方へと再び走り始めた。
朱珠は息を切らしながら、信号の前に立ち止まり『嘘やろ、また走るん!』と言った後、葵と同じくトンネルの方へ向かい走り始めた。
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一方、葵の電話を受けた白華と如月警部は、白と黒に彩られた球体を手に、トンネルの前で立ち構えていた。
林藤 白華⭐︎
『霊体が憑依したと思われる車の色は白色。ナンバープレートは、○○県 ○ ××-××。リアガラスには、ベビーインカーのステッカーが貼られているみたいです。』
如月警部
『ベビーインカーのステッカーか。時間帯といい、今までの事故と一致する点が多いね。』
白華の話しを聞きながらメモを取る如月警部。
小さなショルダーバッグから、白と黒に彩られた球体を手に取る白華。
林藤 白華
『出来れば、話し合いで終わらせたかったんですけど・・・仕方がありませんね。』
白華は、静かに言葉を発した後、『ターゲットを確認次第、この球体を投げても良いんですよね。』と如月警部に尋ねた。
如月警部
『うん。命に比べたら車の1台や2台くらい、どうってこと無いよ。』
そうこうしていると、コンビニのある方角から、白い乗用車が物凄いスピードで走ってきた。
白華と如月警部は、その異常なスピードに驚きながらも、白華は慌てて手に握った球体を、乗用車のフロントガラスに向かって力強く投げつけた。
乗用車は、その後もスピードを落とす事無くトンネルの中へと走って行った。
林藤 白華
『失敗した⁈』
如月警部
『車の前方から霧が立つのは確認ができたから、大丈夫だと思うよ!』
『トンネルの中へ急ごう!』
林藤 白華
『はい!』
2人がトンネルの中へ入ったと同時に、トンネルの中から大きな衝突音が聞こえ、白華と如月警部は、その音の方へと慌てて向かって行った。
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トンネルの中では、白い乗用車が対向車線上に飛び出し、
1台の乗用車に衝突した後、衝突された乗用車の後ろを走っていた乗用車が、衝突された乗用車に突っ込んでおり、3台の乗用車からは、炎が上がり始めていた。
白い乗用車が元々走っていた側の道路を、2台の乗用車が通過した後、2人は事故が起きた対向車線側へと走って行ったのであった。
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