初めての任務 その④
一方、葵達は如月警部の車で、海岸へと移動していた。
神原 朱珠
『なあなあ、葵ちゃん!』『テンション上がらへん?』
『私こんなオシャレな車に乗ったん、初めてやわぁ♪』
朱珠は上機嫌で、はしゃいでいた,
神原 朱珠
『なあなあ、如月警部!』
『警部さんって、こんな儲かるん?』
如月警部
『そんなに儲からないよ。この車だってローンを組んでるからね。』
神原 朱珠
『でもこの車を、ローンで買えるくらいは貰うてんやな!』
『私んところの従兄弟には、絶対無理やわ!』
如月警部
『従兄弟って何歳くらいなの?』
神原 朱珠
『確か27歳やねん。』
如月警部
『27歳!』『兄貴と一緒だ!』
神原 朱珠
『如月警部、お兄さん居るん!』
如月警部
『居るよ。2歳年上のね。バラちゃんは、お姉ちゃんとかお兄ちゃんとか居るの?』
神原 朱珠
『おらへんよ!』
『でも歳の近い、従姉妹とか従兄弟とか、歳の離れた伯母とか叔母とか、伯父とか叔父なら、仰山おんねんで!』
如月警部
『ははは!』『なら余り寂しく無いかもね!』
神原 朱珠
『せやねん!』
意気投合した2人は、楽しそうに話しをしている。
そんな中、白華は葵に話しを切り出した。
林藤 白華
『リーダー。バラちゃんって、週の契約時間は何時間なの?』
綾女 葵
『24時間よ。だから週に4回は来てくれるわ。』
林藤 白華
『そうなんだ。それは助かるね。ユリちゃんもヒマワリちゃんも、出勤時間が少ないから・・・。』
葵と白華が会話をしていると、2人の会話に割り込む形で、朱珠が会話に入り込んできた。
神原 朱珠
『ユリちゃんもヒマワリちゃんも、出勤時間少ないん?』
林藤 白華
『如月警部と話しているから、私達の会話は、てっきり聞こえていないものかと思っていたよ!』
綾女 葵
『そうね。今度、バラちゃんが、何人の話しを一度に聞けるのか、試してみるのも良いかもしれないわ。』
神原 朱珠
『お!』『ええなあ!』『それ!』
『もしかして、私も偉い人になれたりする?』
林藤 白華
『どうだろうね?』
『それだけで偉くなった訳では無いからね(苦笑)』
苦笑いを浮かべる白華。
神原 朱珠
『それはそうと、2人は何日出勤なん?』
綾女 葵
『ユリちゃんは週3、ヒマワリちゃんは週2よ。』
林藤 白華
『といっても、ヨツバちゃんの家に、ユリちゃんは毎日来てるけどね。』
神原 朱珠
『何でなん?』
林藤 白華
『ユリちゃんには、小学生の弟さんが2人居るから、弟さんが学校から帰ってくると、賑やかで趣味の読書ができないんだって。』
綾女 葵
『そう言いつつ、いつもアサガオちゃんの後を追って、外へ出て行っているみたいだけどね。』
林藤 白華
『彼女は、アサガオちゃんのことを、物凄く心配しているところがあるからね。』
神原 朱珠
『ふ〜ん。でもそれならアサガオちゃんと同じ出勤日数にしたら、ええんちゃうの?』
綾女 葵
『そうね。でも人数が少ない時は、固定メンバー以外の3人で目的地へ向かったり、個々に分かれて行動することもあったから、ずっと側に居るとなれば、こっそりと後を付けていった方が効率が良かったんじゃないかしら?』
林藤 白華
『そうかもね。』
神原 朱珠
『成る程な。』
朱珠は2人の会話に納得した直後、再び気になっていたことを、葵と白華に尋ねてきた。
神原 朱珠
『そういえばやなぁ、皆はどんな霊体が憑いてんの?』
林藤 白華
『私は、今何も憑いていないよ。この間、成仏して空へ昇っていったからね。』
神原 朱珠
『へぇ〜。ほんまに霊体って、空の上におんねんな。葵ちゃんは、どんな霊体が憑いてんの?』
『ユリちゃんは?』『ヒマワリちゃんは?』
興味津々な朱珠に対して、白華は『いつか、分かる時がくるよ。』と言い苦笑いを浮かべていた。
そんな会話が進む中、如月警部が口を開いた。
如月警部
『そう言えば、四葉さんに就いている霊体に関して、進展はあった?』
綾女 葵
『いえ、全く進展は無いわ。』
如月警部
『そうか・・・。中々、難しいよね。署の方でも全力で情報を集めてはいるんだけど、流石に限界があってね・・・。』
神原 朱珠
『何なん?』
『ヨツバちゃん、どうかしたん?』
綾女 葵
『彼女には、物凄く厄介な霊体が憑いているの。だから「もしものこと」があるといけないから、ヨツバちゃんは、家の中から外へ一歩も出ることができない・・・というよりも、ヨツバちゃん自体が、外へ出ることを拒んでいるといったところかしら。』
話しを終えた葵や、白華、如月警部の表情は、先程とは違い、少し真剣な表情をしていた。
神原 朱珠
『(凄い霊体?)』『(何なんやろ?)』
『(凄く聞きたいねんけど、中々、聞ける雰囲気やないなぁ・・・。)』
そうこうしていると、如月警部の運転する車は、海岸付近のコインパーキングに到着した。
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如月警部は、車を止めると『とうちゃ〜く(到着)!』と言い、先程と同じ明るいテンションに戻っていた。
朱珠が窓の向こうに目をやると、そこには綺麗な海岸が広がっていた。
外に出るなりコインパーキングから、海岸を一望出来る所まで走り、大騒ぎする朱珠。
神原 朱珠
『葵ちゃん!』『リンドウちゃん!』
『こっち、こっち!』
そんな朱珠の姿を、少し離れた所から立ち止まり眺める葵と白華。
綾女 葵
『本当に元気ね。』
林藤 白華
『そうだね。』
そう言うと、葵は朱珠の方へと歩いて行った。
そんな中、白華は隣に立っている如月警部に向かい、『すみません。気を悪くされていませんか?』と、朱珠の振る舞いに対して謝った。
如月警部は白華の問いに笑いながら、『全然、気にしてないよ。』と言うと、再び朱珠の方を眺め、落ち着いた口調で話し始めた。
如月警部
『良いんじゃないかな?』
『このチームには、ああいう子が居た方が。』
如月警部の言葉を聞き、白華も『そうですね。』と言い、朱珠の方へ再び目をやった。
白華の見つめる先には、笑顔で葵の腕を引く朱珠の姿と、まるで妹を眺めるかのような、優しい顔をした葵の姿があったのであった。
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