初めての任務 その⑥

事故が起きてから少し経ち、トンネルの入り口に、葵と朱珠が到着した。


葵と朱珠がトンネルの中へ入ると、小規模の炎ではあるが、炎が上がっている乗用車3台と、乗車している人を救助している白華と如月警部の姿があった。


朱珠が慌てて炎の上がっている乗用車に向かおうとしていると、葵は朱珠の肩を掴み『駄目よ。』と一言呟いた。


神原 朱珠

『えっ、でも!』


綾女 葵

『バラちゃんの中には、学校で出逢った女性警察官の霊体が居るから、この炎の中に飛び込むのは危険よ。』

『ここは、憑依されていないリンドウちゃんと、如月警部に任せましょ。』


神原 朱珠

『う、うん。』


葵は話し終わると、持っていた白と黒に彩られた球体を、炎の上がっている乗用車の方へと投げた。


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白華と如月警部が駆けつけた頃には、衝突された乗用車を避け切れずに衝突した、一番後方にある乗用車の運転手は軽傷だったようで、自力で外へ出てきていた。


その為、2人は2手に分かれて、白華は対向車線へ突き込んで行った白い乗用車へ向かい、如月警部は衝突された乗用車の方へと向かい救助活動を行っていたのであった。


白い乗用車の中でハンドルと座席に挟まれ、『痛いよ!』『熱いよ!』と泣き叫ぶ運転手は、正気を取り戻しているようで、どうやら憑依した霊体は、既に消滅した後のようで、白華は胸を撫で下ろした。


林藤 白華

『大丈夫ですよ!』『今、助けますから!』

『さあ、私に捕まってください!』

 

運転手が弱々しい力で白華にしがみつくと、白華は腕に自身の持つ全ての力を入れ、運転手をハンドルと座席の間から、助手席の方へと引き摺り出した。


林藤 白華

『はぁ、はぁ。もう少しですよ。』


そう声をかけながら白華が後部座席に目をやると、チャイルドシートが設置されていないことに気がつき、白華は青ざめながら運転手に対して問いかけた。


林藤 白華

『あの・・・ 赤ちゃんは・・・?』


運転手は顔を歪めながらも、白華に対して少し笑顔を見せながら『赤ちゃんなんて居ませんよ。僕、独身ですから。』とゆっくりとした口調で話した。


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数分後、如月警部の連絡で、トンネルの中には救急車と消防車が到着し、負傷者は次々と救急隊員によって救急車の中へと担ぎ込まれ、消防士が消化活動の準備を始めていた。


綾女 葵

『私達は、用済みのようね。』


神原 朱珠

『せやな。』


2人が話していると、白華が負傷した運転手を救急隊員に引き渡した後、葵と朱珠の方に駆け足で近づいてきた。


林藤 白華

『リーダー、御免なさい!』

『情報をもらっていた車を、見逃したみたいなんだ!』


神原 朱珠

『見逃した?』

『でも白い車は、そこに・・・。』


林藤 白華

『この車には、ベビーインカーのステッカーもチャイルドシートも付いていなかったんだ・・・。』


神原 朱珠

『えっ、この車、違う車なん⁈』

 

燃えている乗用車を眺める葵と朱珠。

 

綾女 葵

『そう言われてみると、確かに私達の見た車は、もう少し丸くて可愛らしい形をしていた気がするわ。』


神原 朱珠

『てことは、何なん?』

『この事故は、幽霊とか関係あらへんの?』


林藤 白華

『目の前の白い乗用車の運転手は、トンネルに入る直前から車に衝突する直前までの意識が無いみたいだから、たまたまこの周辺に悪霊が2人いた可能性も0では無いと思う。』


綾女 葵

『そうなると一刻も早く、私達の見た乗用車を探す必要があるわね。目的が小さな子をもつ幸せな家庭を壊すことなら、その為の手段は選ばないはずよ。事故を起こすことができなかったからといって、運転手から離れて、この付近に戻ってくるとは思えないわ。』


葵の話しを聞き、唾を飲み込む白華と朱珠。


そう話していると如月警部が、葵達の元へやってきた。


如月警部

『林藤ちゃんから話しは聞いたよ。少し時間は掛かるけど、車のナンバープレートの情報から、所有者を特定してみるよ。』


綾女 葵

『有難う御座います。』


そう言うと如月警部は、スマホを手に電話をかけ始めた。

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