勝利 ユラン

 ヘリオ一行は馬車で、急いで目的地へと向かった。ネーラの力はよわまっていて、もはや、エイブスの傷を完全に治すには、魔力が足りない。エイブスは徐々に回復をし始めていたが、それでも、ネーラには不安だった。

「エイブス、エイブス……」

 ネーラが名を呼ぶ。

「……て、くれ……」

 エイブスが何かをささやいたが、ききとれず、大事な事だと思ってネーラは彼に耳を傾けろ。何事かを耳打ちされたあと、ネーラは体をおこした。

「なんだ、そんなこと」

 そういって、ヘリオを見つめた。

「ヘリオ、エイブスがね」

 ヘリオは緊張した、まさか、別れの言葉でも口にしたのではないかと。

「あなたには、世話になったって、本当はあなたをたださらうだけの作戦だったのに……」

「……」

 ヘリオが落ち込んでいると、ネーラはヘリオの頭に手を伸ばし髪をなでた。

「エイブスの本当の名はユランというの、目立つことを嫌って作戦時には偽名を使うのだけど、そのことを、信頼の証しに伝えてくれって……」

 ヘリオは、ユランに近づいた。初めて自分を冒険に連れて行ってくれた人、そして、人のために傷を負った人だ。この人の生き方は、自分のためにも目に刻み付けておかなければならないと思ったのだった。

「あら?」

 ネーラが、ヘリオをの髪をなでるてをとめた。それは丁度後頭部にさしかかったところだった。

「ん?」

 ヘリオも後頭部に違和感を感じる。ガタガタと揺れる荷台の中でヘリオは後頭部にいままでのない違和感を感じていた。

「やっぱり私は……魔女なんだ」

 そうつぶやくと、ネーラが答えた。

「でも珍しい、角は赤いのが普通よ」

 ヘリオはネーラから手鏡を渡された、ネーラがもうひとつ手鏡をとりだし、後頭部をうつすと、合わせ鏡にした。そして後頭部に生えた角を見る。

「白……」


 しばらくすると、馬車は止まった。ヘリオは、少し前まできこえていた何者かの叫び、その響きと、意味とを捉えたときから、足が震えて、楽しみで仕方がなかった。

「ヘリオ!!ヘリオ!!」

 懐かしい響き、優し気な、しかし力強く自分を庇護するような音の響き。

「ケローネ!!」

 馬車が止まった瞬間に、ヘリオは外に飛び出した。ケローネは両手を広げていた。勢いよく抱き着くと、ケローネはヘリオの頭をなでたのだった。

「ずいぶん大人になった気がするね……」

「そんな事ない!!」

「危ない目にあわなかったかい?」

「大丈夫……」

 しばしの沈黙のあと、ケローネの腹につけていた頭を上げて、ヘリオはいった。

「ケローネ!!ただいま!」

「ああ、おかえり」

 二人は長く抱き合っていた。


 


 

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