第65話 張牛角と言う男

「…申し訳ない」

「まぁいい下がれ」

「はっ」


周倉を下がらせた後、張牛角はお茶を飲む

うむ…美味い

戦場で飲む酒もいいがお茶も一興よ。


「何か言いたい事でもあるのか?」


不満そうな部下に話しかける

牛角は、賊の頭領だからこそ

こう言う細かい気遣いが大切だと思っている。


「本当に罰を与えなくてもよろしいので?」

「周倉にか?」

「はい内通者使って門を開けさせたのに

 むざむざ逃げ帰ってくるとは」


「ふっ…そう言うな、勝ち負けは兵法の常

 それに目標の一つであった

 劉子敬を重傷に追い込み

 あまつさえ武力で勝る男から

 生還して来たのだ

 褒めるならばまだしも

 罰を与えるなどやり過ぎだ」


それでもと続けようとする部下を黙らせて下がらせる。


(…まったく周倉達が

 河南(黄河から下の地域)から

 来たからと対抗心を出しよって

 これでは先が思いやられる)


この数年で牛角の勢力は、急激に増えていた

その中でこう言う諍いが多くなり

牛角にとって悩みの種になっていた。


「ズズッ…しかし手強いな」


牛角は、包囲している村を見る。

北門は別として他の門は、

こちらも小手調べではあったが

結果近づくことさえできなかった。


「商人達だけで簡単に落とせると言われたが

 なかなかどうして…話と違う

 …ふ…ふふふふ……」


ガシャャン!!

牛角は、急に地面に器を叩きつける。


「ふざけよってッッ!!

 あの…小僧ッッ!!

 よくも張牛角を謀ってくれたなッ!!」


牛角の突然の怒気に周りにいた賊達は、

顔を伏せ自分に向かない様に体を小さくする。


張牛角、その名は本名ではなく偽名であり

普段は寡黙な男だが一度怒りに火がつくと

誰にも手のつけられない暴れ牛になる

まさに牛角…為人が出ている名である。


「報告!!」

「何だッッ!!」

「ひっ」


報告に来た賊が怒気に当てられて尻餅をつく。


「…何をしている殺されたいのか?」

「あっ…あっ…申し訳ッ」

「さっさと言わんかッッ!!」

「はいッッッ、その…例の者から

 連絡が来まして

 北方に数里の所に着陣したとのこと」

「ほう…それで」

「…この後は、手筈どうりに頼むと」

「…そうか…そうか…手筈どうりか

 …くくくくく…ハハハッ!!」


牛角は、涙を流しながら

大声出して笑う。

その異様な光景に周りは、恐怖で震える。


牛角がこの様に笑う時は、

いつも残虐な事になる。


「…撤退だ」


ひとしきり笑った後、牛角が呟く。


「包囲を解き軍勢を

 に集めろ!!」

「…北側」

「さっさとしろッ!!」

「「「ハッ!!」」」


周囲は、一斉に動き出す。


「この張牛角を舐めやがって

  ……落とし前つけてやる

   ハッハッハッ!!」


        ・

        ・

        ・


「あぁ?賊どもが引いてやがる」


張飛は、目の前の賊を見て首を捻る。


「こちらの状況は、どうだ?」

「ん?あんたは高順殿か

 ここに来ていいのか?」


張飛は、隣に来た高順に話しかける。


「軍勢が北に集まり始めたのでな

 援軍に来たのだが…」

「あぁ見た通りだぜ追撃するかい?」

「…いややめておこう罠の可能性がある」

「そうかい…チッ消化不良だぜ

 暴れられると思ったのによ」


張飛は、ドスンと床に座り込む。

「ふっそれは残念だったな

 張飛殿良ければここの指揮を変わるから

 今のうちに食事をとって来ていいぞ」

「ん?あ〜そうするかな」

「酒も少しは出るらしい」

「なっ!?それを早く言ってくれよ

 それじゃ行ってくるぜ」


張飛がウキウキしながらその場を去る。

 

「面白い男だ…さてここは何とか守れたが

 劉良の方はどうだろうか」

「高順様少々宜しいですか?」

「ん?あぁ今行く」


高順は、ここにいない甥に想いを乗せながら

兵の方に歩いていった。

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