3日目① やってみせ、言って聞かせて
「というわけで、カウンターの修行に入ります」
修行場所のダンジョンは、地元では幽霊トンネルとして有名な場所であった。そのせいか、ここに出没するモンスターは幽霊だけである。
「普通は霊体に物理攻撃は効かないんだけどな」
師匠は言いながら片手で剣をゆっくり(師匠にとって)幽霊を斬る。多分僕の目に見える限界の速さでやってる。
因みに霊体とは、幽霊のような物理的な体を持たないモンスターの特性である。霊体の特性持ちでも、アンデッドではないモンスターもいるため、注意が必要である。そんな魔法使えないから関係無いけど。
なので物理無効の霊体に振るわれた剣は当然のようにすり抜ける。
「とまぁ普通に攻撃しても無駄なわけだ。そこで魔法とかの対抗策を使えない人は考えた」
そこは素直に魔法使える人を頼ったり、魔法の武器を使えよ。
「これが答えの1つ」
そして剣とは逆の腕、拳を大きく振りかぶって
「魂ィィィィ!!!!」
叫びながら霊体を殴った。
……ん?殴った?
殴った!?物理無効というか通り抜けるのに!?
「と、これが霊体に対して魔法とか抜きで攻撃する手段その1、気影流という超マイナー流派の技だ」
「いやいやいやいや、物理無効なのにさも当然のように殴ってる意味がわかりません!どういう原理ですか!?」
しかも当然のように2以降の手段があるの!?あと超マイナーでもこれだけインパクトあるなら話題にはなるよ!
「原理、か。
まず、幽霊は魂の塊だな」
「まあそうですね」
「そして人間にも、魂があるよな」
「それもわかります」
「つまり拳に魂を込めて殴れば、魂を殴れる。すなわち幽霊も殴れる」
そうはならんやろ
「理屈が正しいかなんてわからないが、魂を込めれば殴れるという結果は変わらん」
それ、師匠が特殊なだけじゃないですか?
「なんだその『それ師匠が変人だからじゃないんですか?』という疑いの眼は?
気影流の中では余興的な技で使える人も多いぞ。大抵は魔法で処理するから実戦ではあまり使われんが」
そこまで酷いこと考えてない。あと、余興と言いながらできる人いないパターンでしょそれ。
「最初のうちは叫びながらの方がやりやすい。慣れるとこういうこともできる」
そして師匠はそこらにいた霊体をむんずと掴み、投げた。投げた先の別の霊体を巻き込みながら複数体を倒した。もう何でもありだなぁ。
「聞こえなかった通り、叫ぶ必要はない。あと、投げ技以外にも関節技ができるが、こっちは使う必要が無いな」
確かに、関節技を仕掛ける必要は感じない。投げた時に複数を巻き込んでいるから、そっちは使う機会があったのかもしれない。
「投げて足場にする事もできるから、覚えて置いて損はない」
師匠はタオ◯イ◯イか何かですか?
「因みに、剣に魂を込めても斬れる」
そして振るわれる刃。スローモーションのようにゆっくり振るわれたそれは幽霊を両断した。
もはや何でもありだ。
「魂を肉体以外に通したらどうなるかと試して、剣に魂込めたら魔法より強い威力で幽霊を斬れしまった」
へー。
「そして、それは気影流の奥義でドン引きされた。見ても無い奥義を盗むなと」
それはドン引きされて当然だろ!
「で、次が本命、覚えるべき手段、狂理の技だ。こっちは確実に倒す事になるから、選択肢は狭まる。逆に言えば、複雑な事を考える必要はない。戦術センスが無いならこっちだけ使えればいい」
そして幽霊を斬り……なんで斬ったのに幽霊が弾け飛んでるんですかね?
「こっちの方が盗むのが難しかったな。けっこう練習したぞ」
そして当然のように技を盗んでいる。師匠って、誰かに師事したことあるんだろうか?
「少し考えてることが顔に出てるが、才能あるなら教えを請う必要ないからな。必要と思った技術は見て盗めるから。あとこれはスキルではない」
それは才能というよりスキルか何かでは?と思ったけど否定されたよ。心を……
「心を読むスキルも無いな」
逆に怖いよ!
「脱線を無理矢理戻すが、やってる事は幽霊の急所を斬ってるだけだ」
「急所を斬っただけで、なんで弾けるんですか?」
「ダンジョンのモンスターって、幽霊含めて例外なく魔石を持ってるだろ」
逆にダンジョン以外のモンスターって何ですかと聞きたい。
因みに、魔石とは魔力の塊である。エネルギーを取り出して電池の代わりに使ってたりする。大きいのだと1つで車を動かしてりしてるが、基本的に発電所で大量に消費して魔力発電に使ってる。
「その魔石に上手くダメージを与えると爆発する」
だから何でだよ?聞いたことないぞ。
しかし、昔はバッテリーから火災がおきたりしてたから、まだ納得できる方なのか?壊して爆発した話なんて聞かないけどな。そういった疑問はあるけど、それ以前の問題として
「モンスターの中の魔石って見えないんですけど」
体が透けてる幽霊でも見えない。あとモンスターの個体によって微妙に位置が変わるし。しかもこの辺りのモンスターだと、爪の先の大きさもなくて、ほとんど砂と変わらん。
「モンスターのエネルギー源を探知するとわかるぞ。魔石の気配、というよりエネルギー的なものの流れの中心が」
わかるか!もうやって探知するんだよ!
「この、違う流派だと頭おかしい奥義クラスの技術が狂理の基本になる。普通もっと段階踏むだろと思うが、頭おかしい流派だから最初から習得難度マックスでも仕方がない」
頭おかしい師匠にとっても、頭おかしいと思ってるのね。
「あと、これでもワンクッション増やしたからな」
源流はもっとおかしかった。
「これができると、魔力の結合を切って無力化したり、逆に詰まらせて爆発させたり、そういった理解を拒むような事ができるようになる。クウリ……タンクやるのに必須な技は先の先だが」
頭おかしいレベルの上に理解を拒むレベルがあるのね。頭おかしいは理解できるからか。
「因みに、魔石を持たない幽霊を斬った場合は爆発せず、違う壊れ方をする。地元だと魔石のない幽霊はそこそこいたけど、この辺りにはいないから実演できない」
ん?それはどういう意味?
「じゃあ実践、逝ってみよう」
なんかイントネーションおかしく無いですか?
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