第32話 特バツを処刑せよ
「不二華サツキ、、、。お前を直接殺せるなんて今日はいい日だな」
小堺スミカズはサツキの目の前までゆっくりと近づいてきた。
スミカズはとても怒っている雰囲気だが笑顔でくるのだからサツキは恐怖するばかりだった。
この状況は今までの人生にない体験だろう。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!小堺さん!一旦落ち着きましょう!ね?」
サツキは殺しにきそうな勢いのスミカズを必死で止めた。
「ね?じゃねーよ。お前のせいで俺の顔がこんなんになっちまったんじゃねえか」
「かっこいいと思いますよ、、、?えっと、、、。メロンみたいで!」
「殺すぞ」
確かに顔に複数ついた傷は網目状でメロンみたいだと言われればそうかもしれなかったが、あまりにも失礼である。
「お前のせいだ。お前のせいで任務は失敗、俺は緊急搬送され、この体に傷を負わせた」
スミカズのその言葉でサツキは何てことをしてしまったのだろうと反省した。
だがこのまま殺されるのは嫌だ。何かポジティブな話をしておこう。
「いや、あの本当にそれはごめんなさい!で、でも!結果的にテロリストを倒せたんですよ!!」
「あれは俺が仕組んだことだ」
「、、、は?」
自作自演?どういうことだ?
サツキは頭の中の整理がつかなかった。
「あのテロリストは銃をもたせたチンピラさ。俺と一芝居打つ代わりに大量の金を渡す約束をしていたんだ」
「え!?いや、あの、、、。それって、おかしいでしょ。あの銃乱射事件で何人死んだと思っているんですか、、、?」
「俺の出世のためならどうでもいい」
スミカズは何の悪気もなさそうに言う。
「銃を乱射しているテロリストだぜ?そんなの逮捕した時にゃあ俺の評価爆上がりだろ」
サツキは何を言っているのか理解できなかった。
あまりにも恐ろしい悪な思想である。
「なのによぉ〜!テロリスト役は死んだ上に、俺は緊急入院!!テメェのせいだぞゴラァ!!」
「ひ、ひぃぃ〜!!ごめんなさい!ごめんなさい!」
サツキはスミカズの怒りの迫力に思わず謝ってしまった。
逃げたい。だが、椅子に縛られててそんなことできるわけがない。
「ギャハハハ!!だっせえ!何だこいつ!」
周りにいた仮面の男たちがビビるサツキを見て爆笑した。
だがその中、スミカズだけは平静でいた。
「おい、油断するな。こいつはとんでもないやつだぞ。なにしろ沢城のお気に入りだからな」
スミカズのその発言はすぐに周りへ緊張感を与えた。
「マジかよ、、、。沢城ってあの?」
「特バツ最強のお墨付きかよ、、、」
ボスの手下達はざわつく。
「沢城はこいつのことを厳しくしているが俺には分かる。あれは愛の鞭ってやつだ」
スミカズはこのように言っているが、実際はそんなことはない。ただ単にサツキが仕事ができないせいであった。
(本当に怒らせちゃっているだけなんだけどなぁ)
手下の方を向くスミカズの後ろ姿を見ながらサツキは心の中でつぶやいた。
「いいか?お前ら。こいつに隙を見せたら終わりだ。きっと今もどうやってここから抜け出すか考えているだろう」
スミカズはひどく警戒しているが、またしてもこれは違う。
「本当に何も考えていないです」だなんて言えないため、サツキはただ黙っておいた。
「だが残念だったな。今ここでお前が逃げ出したとしても、この屋敷から出ることはできない。外には警備が行き届いている。よほどの強行突破じゃない限り脱出は不可能だ」
スミカズは完全に勝ち誇った様子だ。
「さらに、ここは人気のない場所だ。サツキ、これがどういうことか分かるか?」
「あー、、、。夜に出歩くのは危険だよってこと?」
「ここではどんなに大きな音を出しても聞こえないってことだよマヌケ。撃ち殺しても、爆発させてもな。だからお前を痛めつけて殺すにはもってこいの場所だってことさ」
サツキのバカな回答を鼻で笑いつつ、スミカズはカッコつけなのか知らないが、腕を組んで壁によりかかった。
「もちろん、誰に助けを求めても無駄ってことでもあるな」
ボスはそう言って自分の息子と同じように勝ち誇る。いやもう私たちは勝ったも同然だというふうにだ。
「あとはサツキ、お前を始末するだけ、、、」
ふと、ボスの中である違和感を感じた。
何かが変だ。何かを忘れている。
そして、その何かを思い出した。
「ん?アルファ。そういえば、こいつにはレツがいた気がするんだが」
ボスはサツキを指差した。
「そうですね。ツツジという女がいます」
「そっちの方は始末したのか」
「あ、忘れてました」
「、、、じゃあ、そいつは今どこにいるんだ?」
次の瞬間。
壁に寄りかかっていたスミカズやボス、アルファ、その手下どもが吹っ飛んでいった。いや、スミカズ達だけじゃない。屋敷にあった家具も吹っ飛んでいった。
壁を外側から何かがぶち壊したのだ。
「え!?なに!?何が起こってんの!?」
サツキは驚愕した。
トラックカーだ。
信じられないがトラックが屋敷に突っ込んできていたのだ。
「と、トラック!?何で車が、、、」
サツキが震えていると、トラックから"何者"かが降りて彼の拘束を解く。
サツキはその人物の顔を見て目を見開いた。
「ツツジ!?」
こりゃまたびっくりだ。
「先輩が無事でよかったぁ〜っ!!」
そう言ってツツジは喜びのあまり泣きそうになった。
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