第67話 これは……まずいですね
一瞬の間に大金が掠め取られてしまった。ホーム上の依頼人たちもぼうっと立ち尽くしている。あまりにもあっけない最後だった。
――最後? いや、まだすべて終わったとは言い切れない。ここで油断しているようでは犯人に足をすくわれるだろう。
次の電車は一六時発。まだまだ時間はある。
その分、依頼人たちにとっては不安な時間が長引く。いつ犯人が次の仕掛けをかけてくるか分かったものではないのだ。何もかもが不確定。
だが、あの推理通りなら……。
報酬金とともに忍びこませた発信機はスマホアプリと連動している。そのため、海保メンバーには気軽に確認することができる。
佐山さんがスマホを取り出し、アプリを起動した。彼に導かれるように、その場の他のメンバーも自分のスマホを起動した。
ジェット機はオホーツク海上空を大きな円を描きながら旋回していた。引き返すタイミングを見計らっているようだった。
一〇分、二〇分、三〇分。発信機によると、犯人に動きはない。ずっとグルグルと旋回しているだけだ。
一方の依頼人たちはというと、ホームから出て少し離れた位置のトイレに入ったり、なぜか一台だけポツンと設置されている自販機でドリンクを買ったりして時間を潰していた。
四〇分、そして五〇分。突如ジェット機に動きがあった。旋回をやめ、明らかにこちらの方角へ一直線に向かい始めた。
「これは……まずいですね」
森が自分のスマホを眺めながら深刻な表情で呟いた。
五分後、一六時発の電車が到着した。依頼人たちがぞろぞろと電車に近づいていく。日が傾いてきているのもあって、細かい様子はうかがえない。
先の電車と同様、電車は二分ほど停車してから定刻通りに発車した。そのとき、芦原業務管理官がスマホをしきりに見ながら叫んだ。
「ジェット機がもうそこまで来ている!」
その直後だった。聞き覚えのあるエンジン音が響いてきたかと思うと――
例のジェット機が再び現れた。その腹の部分から何かが落下した。
……箱?
四角い何かは走行中の電車へと一直線に落下した。それが電車の角に接触した瞬間だった。
轟音を立てて電車が爆ぜた。火災を感知したからか緊急停車したが、その頃にはすでに天井部分がほぼ完全に破壊されていた。赤い夕日に横から照らされながら、もくもくと黒煙を上げる。
私は呆然と立ち尽くした。他の海保メンバーも、隣で口を開けたままただ眺めていることしかできなかった。一方、そんな光景には見向きもしないかのように、ジェット機は悠々と天高く飛び去っていった。
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