彼女が憎んだものはなんだったのか
- ★★★ Excellent!!!
大切な者を奪われたがために、復讐を誓った主人公。
冷徹に状況を判断し、必要なときには断固として選択する強い意思。
隠されたおおくの情報の断片から陰謀を読み取り、人の心の綾を操っておのれの優位に持ち込む。
なにも知らぬままに「あるルール」の支配するゲームに巻き込まれ、姉と甥を理不尽に(そのゲームのルールを適用しているという意味では合理的な理由で)奪われた主人公は、そのルールを利用して復讐してゆく。
しかし、だ。
彼女に復讐される人々にもまた、哀しみの影がつねにまとわりついている。
陰謀を巡らせ、人の命を奪って行く彼らはみな、それを楽しんでいるわけではない。
主人公の仕掛けた罠にはまり、つぎつぎとゲームの盤面で命を散らしてゆく人々。
そして残るのは……
すべての人々からなにかを奪っていったそのゲームのルールとは、そもそもなんだったのか?
『外戚が権勢を持つことを防ぐ』のが目的だったのだとしたら、それは達成されていたと言えるのか?
「むかしからそうだった」というだけで繰り返された悲劇に、どうすれば終止符が打てるのか?
主人公のやり方が正しかったのか、読者はやりきれない悲しさを募らせつつも、終章にいたって彼女の祈りが天に届いた、そのことにちいさな救いを見いだす、そんな読後感になる物語です。