11月のある土曜日、浅井大樹の元へクール便が届いた。ずしりと重い荷物、その内に収まっていたものは弟である翔太の生首! しかも「あ、兄ちゃんや!」、突然しゃべり出して……。どうやら酷い殺されかたをしたらしいが、とにもかくにも昔通にしゃべるしゃべる。そうして始まったのだ。兄と生首との不可思議な共同生活が。
理不尽でシュールなシーンからスタートするこのお話ですが、驚くほど普通なのです。翔太さんは普通にクズ野郎なのに、思いの外真っ当な人間なのが効いているのですよね。
テンポよく朗らかに綴られる彼の驚くほど無垢な人となりが読者に好感を与え、最初は混乱していた大樹さんにもまた兄としての心持ちを取り戻させていく。気がつけば、兄と生首の日々という異様で異質な話ではない、兄弟愛で彩られたなんとも普通の人間ドラマに魅せられ、惹き込まれていくのです。
「何事か!?」から「何でもない」へシームレスに変じていくドラマ。他愛のなさの端々に光る大切なものを、あなたもぜひ拾い上げていただけましたら。
(新作紹介「カクヨム金のたまご」/文=髙橋剛)
「兄弟は他人の始まり」とよく言います。
おなじ両親のもとで長く暮らした兄弟といえど、いずれは別世帯になって、それぞれ家族を持てば、配偶者やこどものほうに気持ちが通い出す。
仲良し兄弟もいつしか疎遠に。
そんなことないって?
いやまあ、そんなことないと思われるかもしれませんが、よくあるんですよ。
相続財産の取り合いとか。
と、まあ、突然生々しい話はやめておいて、本作の兄弟もご多分に漏れず兄はお堅い公務員、弟は利用できるものはすべて金づるとして利用するホストになって自立。
あまり交流がなくなっていたのですが……
弟君、生まれもつかぬ生首に。
いろいろやり過ぎたらしいですよ?
弟君の武勇伝(?)、掘れば掘るほど血も涙もない感じですが、それでも弟は弟だと甲斐甲斐しく世話を焼く兄の物語。
そんなふたりのドタバタの行き着く果ては?
それは読んでのお楽しみ。
お兄さん……もしかして、目の前の天使に惑わされて、ラブがいっこ、舞い込んできそうだったのに気がついてないんじゃ……