第27話 仕込み依頼

「それにしても災難だったなぁ」


「ホントだよもう!何が嫌って変なことに巻き込まれたけどお金が無い所為で今から軽い依頼でもいいから受けなきゃ今日の宿がないんだよねぇ」


 そう、僕たちのお財布はこの街に来た段階でほぼ全てのお金を使い切ってしまっていたのだ!

 もう!前の街で串焼きなんかいっぱい買っちゃった誰かさんのせいで!...嘘だよ?


 「おーい、坊主共!リザードのトルティーヤはどうかな?ここの名物だぜ!?」


「ゴメーンおっちゃん、俺たち金欠でさぁ?金ができたらまた来るぜ!」


「早く金作って来いよ〜!!」


「任せとけッ!」


 ご飯も買えないなんて...。何とか日が出てる内に依頼を達成したいな。

 前みたいにウルフとか怖い魔物が出たら嫌だしね。もう怪我したくないよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「冒険者ギルドへようこそ!...あの、大丈夫でしたか?」


 何が?ってさっきの冒険者の事だよね。大丈夫な訳ない。何てちょっと言葉に出そうにはなったけどグッ、と我慢した。僕はもう大人だからね!!


「助けてくれても良かったじゃないすか...」


「申し訳ありません。当ギルドでは冒険者同士のいざこざには介入出来ない制度となっておりまして」


「グッ、そうかよ」


 なんでそんな制度になってるんだろう?自分のギルドの治安が悪くなるだけのような気もするんだけれども。


「まあまあアレックス。...えっと依頼を受けたいんですけど何かいい依頼ってありませんか?」


「具体的にどのような依頼がよろしいでしょうか?」


「テメエ!言い方何とかなんねぇのか!?」


「いいってアレックス、時間的に今から討伐系は難しいので街の中で出来るような仕事が欲しいです」


「少々お待ちください...これはどうでしょう?」


 そう言って受付嬢が出してきた依頼内容は次の日に使う屋台料理の仕込み手伝いだった。依頼料はそこまで高くはないけれど今日の夕食と宿代を払うには十分な感じ。


「他の依頼とかも見せて貰っていいですか?」


「え?わかりました。こちらが依頼の一覧となっております」


「うーん、スミス?やっぱり一番最初に見せて貰った依頼で良くねえか?」


「うん、そうだね。じゃあやっぱりこれお願いします!」


「了解いたしました。ではギルドカードの提示をお願いいたします」


 僕とアレックスはギルドカードを荷物入れから出し受付の人に渡した。

 受付の人は前の町の人と同じようにギルドカードを受け取ると机の下で何か操作をした後また僕たちにカードを返してくれた。


 何時も何の操作をしているか分からないけれど依頼の情報とかを入れていたりするのかな?


「これで以来の登録は終了です。これを持って指定の場所に行ってください。ではお気を付けて行ってらっしゃいませ」


 受け取った羊皮紙には


「さ、行こうぜ!」


「うん、そうだね」


 さぁさぁ、お仕事の時間だ!



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「お前たちが手伝ってくれるって奴らか?」


「そうです。はいこれ、依頼書になってます、幕人お願いします!」


「...おう、あってる。じゃあ今から俺が肉捌いてるからお前らは捌いた肉を串に刺していってくれるか?」


「おう。俺らに任せとけ!完璧に仕上げてやるよ!!」


「任せてください!」


 僕らが返事をするとおじさんは満足げに頷き奥に引っ込んだ。

 しばらく待っているとおじさんは大きな何かのお肉を持って出てきてこれまた大きなまな板の上に乗せてドンドン華麗な手さばきで捌いていった。


「おらガキどもッ!サボってねぇでこの串にどんどん肉刺してけ!!」


「「す、すみませんッ!!」」




 ッ!?


 あれからどれくらい時間がたったんだ!?気付いたら太陽がもう沈んでるし!!

 作業が忙しかったのと店主さんが肉切る→僕らそれを串に刺すっていう謎にリズムの良かったから楽しくなっちゃった。


 でも長い事仕事をしていたおかげで僕とアレックスの間には大量に山積みになった串焼きがデンッ!と僕の頭くらいのサイズになって鎮座している。


「お前えら、お疲れさん!これで明日の分の仕込みは終わりだ。後はこれを元の倉庫に持って入って、半分の串焼きをこの秘伝のタレにつけるだけだから俺一人でも出来る」


「じゃあ依頼は終了って事でいいですか?」


「そうだ。もう依頼書にハンコは押してあるからギルドに戻ったら確認してもらえ。あぁ後お前ら晩メシまだ食ってねぇんだろ?今何本か焼いてやるから食いながら戻るといい」


「おっしゃあ、まじか!?おっちゃんサンキューな!」


「ありがとうございます!晩御飯どうしようかな?って思ってたので凄く助かります」


「いい、また依頼受けてくれよ?お前らと働いてると楽しかったしな。お疲れさん」


「「お疲れ様でした!!」」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 屋台からギルドへの帰り道。

 まだあまり見慣れないせいか、昼間は活気があるのに今は全然人の気配がないせいかただの住宅地だけどちょっと不気味だなぁ。


「いやぁ、にしてもテンチョー最後までニコリともしくてちょっと怖かったぜ」


「そうだね。でも別に悪いべとじゃ無かったよ?なんならいい人だったし」


「まぁな。気が向いたらまた、あの依頼受けようぜ?」


「そうだね。なんだかんだ楽しかったし」


「だな!」

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