第22話 拘束

 今回も代わり映えのない旅を終えて次の街がよく見える丘へやってきた。


「お〜!見えたぞ、あれがフリースだな!!」


「これ前の街よりも大きいんじゃない!?」


「そうだろうな!なんか他の国の物も一緒に入ってくるんだよな?楽しみだぜ」


「アレックスは食べ物でしょ?結局」


「んな事ねぇよ!ちゃんとカッケェ武器とかにも興味あるし!?それにお前も食い物しか興味ねぇだろ!!」


「いや、そんな事は...」


 うーん、武器は...僕罠師だし、そもそもとして父さんにショートソードを貰ってるから使えなくなるまではこれを使いたいし。

 あとは...、あっ!防具!防具が欲しいや!!今ただの布の服だから相手の攻撃とか一撃も受けられなかったんだよ。


 ダンジョン市国に行ってダンジョンに潜る以上、これまでみたいにスライムばっかり倒してる訳にも行かないしダンジョン市国についてすぐ防具を買えるだけのお金を稼ぐかもしくはこの街で防具を買ってダンジョン市国へ行くかをしたいところ。


「アレックス。ここで防具を買うかダンジョン市国に着いてから防具を買うか、どっちがいい?」


「それはお前、早く買って早く装備した方がいいに決まってんだろ?何言ってんだ?」


「いやね、同じ値段でも市国の方がいい防具が売ってるかな?って思ったんだ。もしかしたら防具の質が落ちるなんてのもあるかもだけどね」


「そんな博打打つくらいならここで買っいた方がいいんじゃねぇか?市国に着くまでで大怪我なんてしたらそれこそ馬鹿見てぇだしな」


 あぁ、それは考えてなかったなぁ。この街にどんな依頼があるかとか何も分からないから危険がある依頼を受けるか、とかもまだ決めてない。

 でももし討伐依頼受けるのなら買った方がいいもんね。


「お、あそこに並んでるぞ!行こうぜ!!」


 考え事をしている内にいつも間にか門の前まで着いていたみたいだ。

 前の街に着いた時より少し多い、大体十数人位が門番の検問待ちで並んでいた。


「やあ、お酒にジュース、軽食はどうだい?お安くしておくよ?」


 なかなか順番待ちの列が減っていかなくってダラダラアレックスと喋っていると木箱を紐で縛って首にかけているお兄さんが話しかけてきた。

 木箱の中を覗くと色んな色をした液体が瓶に詰められぎっしりと入っており、その上にサンドイッチが敷かれていた。


「まじか!?俺めっちゃ喉乾いてたんだよ!ジュース適当なの一本くれ!」


「待ってアレックス!!これ値札が付いてないよ!?先に値段を聞いておかなくちゃ!」


「え?うわ危ねぇ。ちょっと待ってくれ、それの値段を教えてくれねぇか?」


「...まあ受け取れよ。」


 値段を聞いた瞬間にこやかに笑っていた顔がスッ、と無表情になり木箱の中にあったジュースを乱雑にアレックスの手へ押し付けてきた。


「『罠』」


 ガチャンッッ!!


 あまりにも危ない感じがしたから思わず魔法を使ってお兄さんの足を捕まえちゃったけど、良かったのかなぁ??

 勿論何時もお世話になってるトラバサミなんだけど怪我はしないようにギザギザはつけていないよ。


「あ!?んだよこれッ!!ごらテメェ、このクソみてぇな魔法を解きやがれ!」


「うわ、めっちゃ怒ってる...。だ、大丈夫ですか??」


「足が痛てぇんだよ!!こりゃあ教会に行くための料金もは払ってもらわねぇとなぁ!?」


 え!?どどど、どうしよう!?


 そんなに大きな怪我はしないと思ってたんだけど、もしかして骨が折れてたりするのかな!?


「何事だ!!」


 騒ぎを聞き付けた門番がこっちへバタバタと走ってきた。

 ただその表情はなんだか少し面倒くさそうな感じであまりやる気は感じられない。


「聞いてください!俺ここで普通に商売をしていただけなのにこのガキが突然魔法をぶっぱなしてきたんですよ!」


「は!?んな事してねえだろ!?お前が急に怒鳴りながらその商品を押し付けてこようとしたからスミスが足止めしてくれたんだよ!!」


 嘘でしょ!?門番さんが来た瞬間にこの人なんか自分がいきなり魔法を打たれたみたいな言い方をしてるんだけど!?


 あ、でもアレックスが反論してくれたおかげで門番さんが僕たちに向けてた怖い視線がちょっとだけ柔らかくなった気がする...。

 って言うか、僕の前に並んでる人達とか助けてくれないかな...?


 そう思って並んでる人達に少し視線を送って見るもちっとも目が合わない。

やっぱりみんな面倒事は嫌がって助けてはくれないんだ。


「まあいい、三人共、一旦詰所まで来てもらおうか」


「そんな!僕たちなんにも悪い事してないですけど!」


「それでもだ、早くこい!」


 少し声を荒らげて門番は僕たちの腕を掴み無理やり腕輪みたいな物をつけられた。


「えっ!?な、なにこれ!?」


「拘束用の腕輪だ。魔力を吸い取り擬似的な魔力枯渇状態を誘発する。間違っても逃げようなんて思うなよ?俺の持っている鍵を使わんと絶対にそれは外れんからな!」


 僕たちこのまま捕まってしまうのかな...?

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