第21話 出発
リンブレンさんの送別会を終えた次の日僕たちは冒険者ギルドへよっていた。
え?すぐに出発しないのかって?
実は冒険者になった時に「ここを発つ時は申請が必要」って言われていたんだよね。
昨日依頼が終わった時によっても良かったんだけどリンブレンさんをあんまり待たせるのも良くないと思ったから手続きはせずに行ったんだよ。
「はい、これでお手続きは終了です。お疲れ様でした」
手続きに結構時間を取られるかな?って思ってたんだけど、思ったより全然時間かからなかった。
何よりそこそこ仲良くなったと思ってたギルドのお姉さんがめちゃくちゃ淡白すぎてちょっと寂しいな。
もうちょっとこう、「行っちゃうんですね...」なんて言ってくれるかな?って淡い期待があったんだけども。
「...お姉さん、めっちゃあっさりしてたよな」
「あ、やっぱりアレックスも思ったよね」
ふとアレックスの顔を見るとすごく悲しそうな顔をしてとぼとぼと歩いてた。
えとえと、何か慰めるような何かないかな!?
「あ、アレックス!切り替えようよ!ほら、串焼き買いに行こう?余ったお金がちょっとあるしさ!」
「おう、そうだな...。でもいいのか?それ次の街で宿を取るための金だったろう?」
「別にいいよ!一個宿の質を落とせばいい話だから!それだってここで泊まってた宿と大して変わらないとこだよ?大丈夫だって!」
実は次の街では一泊400バーツくらいの宿を取ろうと思ってたんだよね。
今泊まっているのが一泊250バーツなんだけど止まってから数日で二人とも不満がいっぱい出てきてこれからもこんな宿ばっかりだったら旅が嫌になってくると思ったから
「でもよ?今度も同じような値段の所に泊まるってことはまた狭かったり掃除が雑だったりするってことだろ?嫌だぜそんなの」
「日当たりも悪いしね。んー、じゃあ今度は350バーツ宿くらいの宿にしよう?そしたらここで1人50バーツくらいの美味しいものが食べられて次の宿はここより100バーツ高いとこに泊まれるんだしさ!」
「それお前がいい物食いたいだけじゃねぇのハイハイ、わかったわかった!わかったからそんな顔で見るんじゃねぇよ!」
むっ、そんな変な顔になってたのかな?頑張って何も考えないようにしてたんだけど。
まあでも僕も美味しいもの食べたかったしアレックスの失恋祝いに豪華なもの食べに行くぞぉ!オーっ!
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「はぁ〜、食った食った!俺ァこのまま死んでもいいかもしれんなァ」
「いや、アレックス?それはちょっと気が早いよ!?」
お酒こそ飲まなかったけどもアレックスの気はちょっと晴れたみたいだね。
でもそれはそれとして、まだ全然朝早い時間とはいえ、串焼きを買って食べるなんて言う事に時間を使ったおかげでちょっと出発が遅れてしまった事だし、今日はいつもより急ぎめで歩いて行こうかな。
「なんつうか、悪かったな...」
「アレックス、何言ってんのさ!僕たち友達じゃんか!友達の失恋の時ぐらい僕だって慰めたいしさ!」
「し、失恋じゃねぇし!!」
フッ、まだそんなこと言って...。
あの時のアレックスの顔といったら不謹慎だけどちょっと笑ってしまったよね。
「...笑ってんじゃねぇし」
「あはは...。えっと次の街ってどんな感じだったんだっけ?」
「お前誤魔化し方下手すぎだろ!?次の町はあれだなダンジョン市国の手前にある街だからな。確かこの街よりももうちょっと大きかったはずだぞ?」
「あ、そ、そうなんだね。楽しみだね?」
実は依頼の終わりとかで僕達は事前にどこの街に向かうのか、あとそこがどんな街なのかってのを調べていたんだ。
もし冒険者ギルドがないとかあったら僕たち仕事が出来ないからね。
にしてもやっぱりお見送りがないってちょっと寂しいね。
いや、リンブレンさんが昨日送別会をしてくれたのは別として、やっぱりこの街でも仲良くなった人はなんだかんだ多いんだしお見送りしてくれてもなぁ。なんて
高望みだよね...。串焼き屋のおじさんとか宿屋の人とかは結構話したりして仲良くなったと思ったんだけどなぁ。
「スミス!次の街、楽しみだな!どんな魔獣がいてどんな出会いがあるかワクワクするな!」
「そうだね!また美味しい串焼きのお店探さなくちゃ!」
「だな!」
新しい冒険が始まるって思ったらこの街とのお別れもそんなに悲しくないような気がしてくる。
見慣れた街の景色をアレックスと一緒に歩いていき、普段は使わない方の門でこの街を出るための手続きをしてもらった。
依頼を受けた時みたいに特に検査とかは無いのかな?って思ってたんだけど、案外荷物検査から何処に行くか。何をしに行くかとかしつこく聞かれてすごく面倒だったけどこれも新しい冒険の為と思えば笑顔で協力できちゃう。
「お前、ちょっと顔怖いぞ?笑ってるのに怒ってるみたいな...」
「そう?僕、全然怒ってないんだけどなぁ...」
うそ、ちょっとだけ『イラッ』ってしちゃった。だってこんな目の前の冒険をダラダラと伸ばされたらそりゃあ誰でも『イラッ』って来るよね!?僕悪くないよね!?
...まあいいや、さよなら僕の最初によった街!
さよなら僕の知り合いになってくれた色んな人達!
僕はきっと大冒険をしてまたここに戻って来ます!
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