第20話 財宝と冒険
「すみませんお待たせしました!!」
次の日、僕たちはいつも通りスライムの討伐依頼達成させ、ギルドへ急いで報告を終わらせた後リンブレンさんのいる門まで戻ってきていた。
アレックスは冒険者ギルドのお姉さんにもその事を話して誘っていたけど「仕事がありますので」ってすげなく断られていたのにはちょっと可哀想になったけども。
「おう、お疲れさん。じゃあ早速だけど行くか。もう引き継ぎも済ませたしな」
そう言ってリンブレンさんは同僚の人と一言二言だけ言って街の中を歩き出した。
食べに行く店は昨日依頼を報告したあとで決めてあったからリンブレンさんの行く先は迷いがない。
僕たちはこの街の美味しい店のことは串焼きの屋台以外はあんまりよく分からないから殆どリンブレンさん一人で店を決めてくれていた。
「なあスミス。どんな店に連れてってくれんだろうな?めっちゃ楽しみだぜ」
「そうだねアレックス。お肉のお店って言ってたけどステーキとかなのかお肉料理なのかとかなんにも聞かされてないもんね!」
「まあまあ、そんな焦んなよ坊主ども。俺が保証すんだ。絶対に美味いに決まってるだろう?」
いやぁ僕リンブレンさんの食の趣味とかよく知らないしなぁ。
なんて口が裂けても言えないね。だって今日はリンブレンさんの奢りだし。まあ、吐き出さなきゃ行けなくなるような美味しくないご飯は出してこないでしょ。...多分。
「ここだ」
そう言って連れてこられた先はなんてことの無い居酒屋みたいな見た目をしたお店。まだ日が暮れていないって言うのにもうお酒をしこたま飲んだのかお店の先では壁によりかかって座ったり寝転んだりしている人たちがいて何とは言いたくないけど茶色い物体Xが臭気を持って僕たちに存在をアピールしてきていた。
「え、まじで...?」
「おう、まじだぞ?見た目こそこいつらのせいで悪くなっているが味は保証するぜ?」
「そ、そうっすか...」
アレックスはちょっとお店の外観に対して引いていたけどもそんなアレックスを置いてリンブレンさんはズカズカと居酒屋の戸を開けて中に入っていった。
「おう女将さん今日予約したから大丈夫だとは思うが3人、いけるか?」
「いらっしゃい!もちろん空けてあるよッ!にしてもまたアンタ見送りとか言って新人の子酒の席に誘ったのかい?いい加減にしないと奥さんに愛想かされちまうんじゃないかい?」
「いやぁ、それを言われちまうと痛てぇなぁ」
仲良さげな会話をしながら女将さんは呆れたような表情ではあるものの手馴れた仕草で僕達を個室の方まで誘導してくれた。
話を聞く感じだとリンブレンさんはよくこの街を離れる人たちと送別会とかしてるんだろうね。で、それを開きすぎて奥さんに怒られている、と。
「いやぁ、お前らに情けねぇとこ見られちまったなぁ。すまねぇすまねぇ」
「ここの女将さんとは結構仲がいいんすね」
「まぁなぁ。今でこそあんなに恰幅がいい女になっちまったが昔はめちゃくちゃ美人でそれ目当てで足繁く通ったもんよ」
「へぇ、それ奥さんの前でもちゃんと言ったんすか?」
「よしてくれよ。んなもん絶対言えないに決まってるだろ?まぁ俺も結婚してからは嫁さんと飲むようになったからな。別にいいだろ?」
まぁ僕たちはただ奢られるだけだから大きな口では何も言えないし奢るの辞めるなんて言われた日にはまた旅に出る日が遅くなってしまう。
アレックスがこれ以上余計なこと言わないように釘を刺す意味を込めて軽く脇をこずいておこうかな。
「何すんだよ...」
アレックスがこっちを恨みがましい目でジロリと睨んでくるけれど気にしない様に務めて無視する事にして。
なにか別の話題ないかな?この流れはまずいし。
「えっと、ここを出て行った人たちってやっぱりもっと大きな街に移り住んだりするって事ですか?」
「いや、まあそれもあるだろうが、やっぱり冒険者としてこの街を出ていく連中はダンジョン市国に移り住むことが多いな」
「「ダンジョン市国!!」」
「やっぱりそうですよね!僕たち冒険者なら目指して当然の国ですよ!なにせあそこには未知と財宝、そして何より冒険がある!...って村の元冒険者の人から聞きました!!」
「ま、まあそうだが。一旦落ち着けよ。そう興奮すんなって」
ダンジョン市国とはとあるダンジョンを中心として不思議なことに攻略しても攻略しても大小様々なダンジョンが次々と発生していく場所に建国された一つの街しかない国だ。
そこではダンジョンを攻略する為に各国の騎士たちや冒険者たちが集まり、その人達の食事や核の買取等を目当てにした商売ですごく賑わっているらしい。
その為一つしか街が無いとは言っても街の端から端まで行くのでも歩いて一週間はかかる、なんて笑い話もあるそう。
「でもあれっすよ!?ダンジョン市国で成功した冒険者はありえない威力の魔法を撃てたり手では抱えきれないほどの財宝を持ってたりするって聞いたんすよ!」
「まあそれこそあれだ、お前らの人工的な核じゃなくてダンジョンの最奥で取れる最高峰の真核を持ってる冒険者とかはそんな話を聞いたことがあるが、大半の冒険者は俺みたいに途中で諦めるか戦えない体になって引退するかだぞ?」
「俺たちはそうはならない!」
アレックスの言う通り、そういう冒険や溢れるほどのお宝に満ちた話を聞いてから僕は冒険に憧れ、いずれは最高の冒険者になりたいと思ったんだ。
「意思は固いってこったな。...わかった、俺から一つだけ言わせてくれ。怪我だけには注意しろよ?」
「分かりました!気をつけます!」
「ま、辛気臭ぇ話はもうやめだ!おら、食え食え食いまくれ!今日は俺の奢りだからな!」
「「ありがとうございます!!」」
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