第19話 優しいあの人
スライム討伐3日目。
僕たちは前に来たのと同じ場所に来ていた。
「なあスミス、お前の『罠魔法』で楽にこいつらかれないか?」
「え?...考えたこともなかったなぁ。ちょっと待ってね」
うーん、いつも使ってるトラバサミだったら簡単に倒せばするけどスライムの体がこぼれちゃうから勿体ないし。
じゃあ、どうしたら上手くできるかな?
いつも手でスライム液体を捕まえる時はませ気を抜いて、体が崩れる前に急いでバケツでキャッチしていたんだけど。
そうだ!トラバサミの棘の部分を半分にした箱状にして踏んだらそれが閉じる。
で、筒に捕まえられる。みたいにしたらいいんじゃない!?
「アレックス、そこにいるやつに試すからしっかり見ててね!それッ!」
僕の近くを通りがかったスライムへと人差し指を向けさっき考えついたばっかりの新魔法をそいつの歩いている方向へ向けて放った。
狙いを余すこと無くスライムの一歩前に設置された罠はそのすぐ後にスライムが罠の起動スイッチの上に乗ったことで発動しスライムの魔石を壊すことなく箱の中に閉じ込めた。
「おおッ!スミス、これ成功じゃないか!?」
「うん!絶対に捕まえられたよ!!じゃあま席取ってくるね!」
まさかこんな楽にスライムを捕まえることが出来るなんて提案してくれたアレックスに感謝だね!
スキップしたくなるほどウキウキしていることを自覚しながらも一応罠を解除されて逃げられないように走ってスライムがいる罠へと向かって走った。
箱型の罠を開けるとぷるぷると僕を見上げているスライムの魔石が。
まあ、目は付いていないんだけれど。
「アレックスこれ見て!ちゃんとスライムがいるよ!!」
「やったじゃねぇか!これで早く帰れるようになるな!」
「...多分そんなには変わらないと思うよ??」
なんせ射程距離が3mしかないのだ。逃げられるのは止められるから多少は楽になるだろうけどもそこまで楽にはならないと思う。
新魔法を開発したあとも変わらずスライムの魔石集めを続けていくと昨日よりもだいたい1時間くらい早く最終を終えることが出来た。
「やったよアレックス!これで門まで走らなくって済むようになったんだ!これもアレックスのおかげだね!」
「おう!当たり前だろ!?もっと感謝してくれてもいいんだぜ?」
そう笑いながら言うアレックスの顔は赤くなっていた。
そんなバレバレの照れ隠しをするなんて、アレックスは可愛いね。男だけど。
「何笑ってんだよ!」
そんなアレックスを見ている僕に気づいたんだろうアレックスは赤く照れた顔を今度は怒りの赤で染めて詰め寄ってきた。
「んん?なんでもないよ」
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「お?どうしたんだ、今日は何時もより早かったな。スライムの大量発生でもあったか?」
「いや、こいつがすげぇ魔法を開発したんすよ!!んで、いつもより早く帰れたってわけっす!」
「ほう、新魔法か。いいねぇ俺も若ぇ頃は色んな魔法を開発したもんだ。しょうもないのからめっちゃ役立つ魔法までな。どうだ?試しにどんな魔法か見せてやろうか?」
今話しているのは南の門を守ってくれている衛兵のおじさんだ。ここの街道を使う人は少ないらしくって2回目のスライム討伐を終えた帰りに声をかけられたんだ。
いや、声をかけられたって言うより僕の村にいたやたら喋ってくるおばちゃんみたいな感じだったね。
これが僕らが以来に出発する時にも遠慮なく声をかけてくるんだから困った物だったよ。
アレックス目を回してウンウンって頷くだけのゴーレムみたいになってたしね。
「まあ、魔法は次の機会にって事で。僕らも依頼達成の報告をギルドにしなくちゃ行けませんし。また明日になればもうちょっと帰ってくるのが早くなると思うのでそのタイミングで話しませんか?」
「ほう?そんなに早く帰って来れるようになったのか。やるじゃないか!...ただなぁ、俺明日非番なんだよ」
「え?そうなんですか?残念ですね...。僕達も次の依頼が終わったら目標にしていた金額が溜まるのでまた旅に出ようって話していたんですよ」
「そうなのか...寂しくなるなぁ。でもそれなら送別会をしなきゃならんな!明日お前らの仕事が終わったらどっか行こうぜ?ご馳走してやる」
「え?そんな!悪いっすよ!衛兵さんの色んな魔法を見せてもらっただけでも凄くありがたかったって言うのに」
「ワケぇもんが遠慮するもんじゃねぇぞ?大人しく俺に奢られとけ?」
「そうですか?ではお言葉に甘えて。ありがとうございます!」
「ありがとうございます!ご馳走になりに行きます!」
実はこのおじさん口だけじゃなくって本当に魔法をいっぱい習得しているんだよね。昨日見せてもらったんだけど攻撃力が強いかは兎も角、色んな種類の魔法を見せてくれて、一つしか属性がないはずなのにこんなことも出来るんだ!?って何回も驚かされたよ。
多分この人、ダンジョンの心臓って言われてる『真核』って奴さえ手に入れたらすごい強さになるんじゃないかな?って思ったくらい。
「それじゃあ衛兵のおっさん!取り敢えず依頼の報告すませてくるっすね!」
「おう、何事も仕事が終わってからだもんな、行ってこい。帰ってきたら店決めしようぜ?俺は日が落ちてもここにいるからゆっくりしててもいいぞ!...あぁ、そうだ俺の名前言ってなかったな。俺の名前はリンブレンだ、よろしく」
挨拶だけ済ませて僕たちは急いでギルドの方へと走っていった。
ゆっくりとは言うけど待たせるのは気まずいしね。
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