第18話 チャリン

 やっぱり街道を歩いてる時と違って森の中は薄暗くってちょっと怖いなぁ。

 前みたいに強い魔獣が出てきたらどうしよう...。


「スミス、大丈夫だ、きっと。前みたいなことにはならないって!前とは違って今は昼で見通しもいいし、何より俺たち二人で警戒してるんだからな!少なくても不意打ちは無いはずだ!


「あはは、アレックスには叶わないなぁ。...ありがと、そうだよね。きっと大丈夫だよね!」


 めっちゃ周りをキョロキョロ見回しながら僕の事を気遣ってくれて、アレックスはホントに優しいなぁ。

 なんだかちょっと恥ずかしいから絶対本人には言ってあげないけど。


 会話も程々に切り上げ泉に続いているのであろう獣道をひたすら歩いていくと思ったよりすぐに鬱蒼と茂っていた木々が少なくなり、目的地が近くなってきたことを知らせてくれる。


「そろそろ着くんじゃないか?結局スライム、全然いなかったな」


「思ったよりね。まあ、まだ泉にすらついてないんだし、泉に着いたらが添えきれないくらいいっぱいスライムがいるんじゃない?」


「そんないっぱい居たら気持ち悪くないか?」


「ハハハッ!確かにそうかもしれないね!あっ、そんな事よりほら!着いたみたいだよ!...思ったより小さくて汚いけど」


「ホントだな。俺ももうちょい大きいのかと思ってたけどな。それに、クセェ」


 木がなくなり、開けた場所にあったのは確かに泉と呼べるものではあったけど思ったよりも小さくてその大きさは50メートルくらいしかない。形はひょうたん型で水も緑がかって泉の底が見えないくらい濁ってて凄く汚いね。それに臭い。


「スミス!アソコ見てくれ!スライムがいたぞ!しかもいっぱいいる!」


「ホントだ!...でも言うほどいないじゃん。居て3匹くらいだよ?」


「んな細けぇこたいいんだよ!行くぞ、こんな臭いとことはおさらばして早く帰りてぇし!」


 全部アレックスに仕事取られるのも嫌だし、スライムに手を突っ込んで魔石を撮っているんだけど、なんかパンを捏ねてるみたいな感触でちょっとひんやりと気持ちいい。

 手は少しピリピリはするけどもこんなに楽な依頼だったら今後も受けていいかもね!


「アレックス!あっちにもいたから行ってくるね!」


 魔石を撮り終えた僕はアレックスに離れることだけを伝え、左の方にいたスライムへと向かっていった。

 勿論、スライムの液体はちゃんと回収してね。


 アレックスはスライムの魔石集めに夢中で僕の言ったことが聞こえてないみたい。

 返事も頷きも何もなしで既に次のスライムへ向かって走り出していた。


 僕も負けないよッ!


 そうしてずっと集中しながら集めていると案外時間というものはすぐに過ぎていくもの。

 集め終わった頃には太陽が沈みかけていた。


「スミス、これ不味くないか!?もう日が暮れちまうぞ!」


「あ!?ホントだ急いで戻ろう?野宿なんて嫌だからね!」


 日が完全に落ちたら門が閉まっちゃうッ!!

 今日なんてすぐ帰ると思ってたから野宿の準備してないんだよ!?早く帰らないと!


「ハァッ!ハァッ!ハァッ!...すいません!僕たちも入れて貰えますか!?」


 僕たちは門を目掛け急いで走り、街までたどり着いたのはもんの外にいる門番の人が街の中に入っていったタイミングでちょうど門が閉まるか閉まらないかギリギリだったらしい。

 もんを閉める準備をしていた門番の人からもっと早く来てくれ、って凄く怒られちゃった。


「あっ、おかえりなさい!遅いから心配したんですよ?なにかに襲われたんじゃないかって...」


「ごめんなさい!ちょっとスライムの魔石集めに夢中になっちゃってて。その代わり、ほら!いっぱい集まりましたよ!魔石もスライムの体も!」


 ここ1ヶ月くらいの冒険者生活で受付の人ともそれなりに仲良くなれたと思う。帰ってきたら挨拶くらいはしてくれるしそれなりにだけど夕方とか暇な時間は雑談にも付き合ってくれてる。

 流石に朝とか忙しい時間に話し始めたら後ろの冒険者から凄く圧を感じるし、しないけど。


「はい、じゃあこれが今日の報酬ね。大切に使わないとダメよ」


「おぉ!やっばりいつもより多いな!おいスミス!今日は腹いっぱいになるまで食おうぜ!?」


「ダメだよアレックス!次の街に行けるまで貯金するって言ったじゃん!」


「えぇ?ちょっとぐらい!いいじゃんかよォ」


「ダメ!」


 僕は早くダンジョンがある街に行きたいんだよ!...安全にね。

 そんなことを考えながら頭の中で次の街に行くための旅費を数えてたんだけど、すごい事に気づいちゃった!


「アレックス!あと3回ぐらいこのスライムの依頼達成出来たら次の街に行けるみたいだよ!やっぱり討伐系の以来ってすごいんだね!!」


「そうだろ!?やっぱ早めに討伐依頼の方に行くべきだったんだって!!」


 今回ばかりは僕が悪かったし、素直に謝しかないなぁ。

 アレックスの言う通り早くから簡単な討伐依頼とか受けたら良かった。


「そうだね。ごめんよ」


「別に謝るほどのことでもねぇだろ!?」


 明日からは討伐依頼祭りだね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る