第17話 スライム

 それからは旅費を貯めるためにギルドで依頼を受け、完了し宿に帰る。というサイクルをずっと繰り返した。来る日も来る日も。


 勿論依頼の内容は毎日と言ってもいいくらいに変わっていって依頼主の名前も知らない名前ばっかりだった。

 時には薬草採取をしたり、時には街の中で荷運びをして夕方に宿へ帰ってくると2人とも何も言わずに夜まで寝る、なんてこともままある。


 最初、荷運びなんてやった日には筋肉痛が二日くらい続いて休もうかと思った日もあったが着々と溜まっていく旅費を無駄に消費はしたくないと薬草採取などの体を休ませられる依頼をこなした。


 そんな生活を続けて一ヶ月ほどだった頃、アレックスがついに爆発してしまったのだ。


「ウガァァアッ!何時になったら討伐の依頼を受けるんだよ!!もう一ヶ月も待ってやったんだぞ!?いい加減に討伐依頼行こうぜ!!」


「い、いやでもほら?今でも充分稼げてるじゃん?このペースだとあと一ヶ月もしたら次の街に旅立てると思うよ?」


「でも討伐の依頼を受ければそれを二週間で旅に行けるようになるんだぜ?それに...、今のまんまだとただの便利屋じゃないか!冒険者は魔獣を倒してなんぼの仕事だろ!?」


 うーん、このままだとアレックス一人でも討伐に行ってしまいそうだなぁ。

 出来れば討伐依頼なんて受けたくないわだけどなぁ。


「わかった、わかったよアレックス!行けばいいんでしょ行けば!行くよ討伐依頼!」


「んだよ、その言い方...。まあいいや。じゃあそうと決まったなら早くギルドに行こうぜ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「おはようございます。本日はどうされましたか?」


「おはようございます!この依頼をお願いします!」


「了解しました。...ではお気をつけて行ってらっしゃいませ」


 今回僕たちが受けたのはギルドから出ているスライムの討伐依頼。特に何処で討伐をして、とかいう制限は無いけどギルドに持って帰ってくるものとしてスライムの魔石を10個、それとスライムの体を作っている液体だ。

 魔石とはスライムの体の中で作られる結晶のような物、で絶対に持って帰らなきゃ行けないけど体の液体は持って帰ってくると追加報酬が貰えるってだけで強制では無いらしい。


 あ、でもスライムを狩る場所はどこでもいいって言ってたけど流石にスライムがよく出る場所は教えてもらったけどね。

 普段僕らが薬草採ってた場所ってスライムどころか魔物が現れる事だって滅多に無かったしら。


「えっと南のもんから出てしばらく行くとよく出る場所がある、んだよな?」



「そうそう、大きな池みたいになっていて、そこでよく出るらしいね」


 いつもとは違う方向の門から出るからちょっと店で売っている商品が微妙に違う。

 かと思えばいつも見るような物も結構売っているから大通りは見ていて飽きないよね。

 ...その分門を出てからは退屈なのだけど。


 門を出てからはいつも通りの草原と永遠と続いているんじゃないかと思わせる石造りの街道があるのみで今更話すことも無く目的地まで黙々と歩いていった。


「...?おっ!スミス!あれってスライムじゃないか!?」


「え?あっ、ほんとだ!じゃあここら辺に受付の人が言ってた泉があるのかな」


「それよりあいつ一匹だけみたいだし仲間が来る前に早くやっちまおうぜ!」


 それもそうだ。そう思った僕はアレックスに相槌を打つとアレックスは目の前のスライムに向かって走り出した。


 アレックスってウルフからあんなに今ちい目にあったって言うのによく突っ込んで行けるよね。

 そう思いながら僕は街道の左右に広がる森からスライムが合流しないかチラチラと警戒しながらもゆっくりと走り出した。


 スライムは僕の思っていたよりも小さく高さは僕の膝くらいまでしか無かった。

 そのせいかスライムの魔石も僕の握りこぶしより少し小さくってちょっとだけ可愛い。

 基本はスライムの中に手を突っ込んで魔石を抜くと倒せるんだって。


「オラッ!よっしゃ、見てくれスミス!魔石が取れたぞ!一個目ゲットだ!」


「おぉ、やったねアレックス!おめでとう!」


 僕が追いつく頃にはもうスライムは魔石を抜き取られた後で、折角の追加報酬はどんどん液体みたいになって石畳の隙間に染み込んでいっちゃった!


「あ、アレックス!足元のそれ、早く回収なきゃ...、あぁ...」


「あっ、ヤベッ!すまんスミス逃がしちまった!!」


 アレックス、君、今日の晩御飯串焼きにしようと思ってたけど、一本抜き決定だよ...。


 まあでも、追加報酬を逃がしたとしても魔獣討伐での報酬獲得に一歩近づいたことには変わりないんだし、あと九個も魔石を集めなきゃなんだから次からいっぱい集めたらいいよね!


「いいよ全然!僕もアレックスに追い付けなかったのも悪いんだし、初めから言っておけばよかった。次から頑張ろ?」


「おう、そうだな!えっとじゃあ取り敢えず左の方に行って泉を探すか?」


「そうだね。スライムも出始めたしすぐに着けるんじゃないかな?」


 いい事に草もそんなに生い茂ってないから歩きやすくていいしね。

 ...前に来た人とかが刈ってくれてるのかな?

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