第14話 初依頼

 次の日、僕たちは朝早くに宿を出てギルドへと依頼を受けに向かっていた。

 冒険者ギルドに入って直ぐに冒険者たちが詰めかけている依頼ボードへと走っていった僕たちは暑苦しい肉団子の一部となりながらも大声でアレックスと相談し、依頼を選んでいる。


「で、どんな依頼がいいかな!?」


「やっぱ俺たちが初めて受ける依頼なんだし派手なヤツがいいよな!やっぱゴブリン討伐なんてどうだ!?」


「初めての依頼なんだし最初は薬草採取とかちょっと安全な依頼にしない!?って、あっ!!やめてください!!あっ、あっ...」


 そう、これだけいっぱい人がいるとすぐに自分の受けたい依頼を決めてその依頼が書いてある依頼を受けないと迷惑そうな顔をした冒険者数名に後ろへと追いやられてしまうのだ。

 当然まだ体が仕上がっていない僕たちはあっけなく後ろに下げられて抵抗はできない。


「あ、アレックス!一旦離れない!?このままじゃなんにも見えないから決められないよ!!」


「そ、そうだな...。1回離れてどんな依頼を受けるかだけでも決めるか」


 このままでは埒が明かないので一旦離れることにし、依頼ボードとは逆の位置にあるテーブルでどんな依頼を受けたいか話し合うことになった。


「で、どうするんだ?俺は断然ゴブリン討伐がいいんだけどよ」


「でもアレックスだって依頼を受けて、って言う狩りは初めてなんでしょ?だったら様子を見て薬草採取しながら慣れて行ってもいいじゃない?」


「むぐぅ。い、いや!それじゃあ受付の人に俺とお前、どっちが正しいか聞きに行ってみようぜ?」


 挑発的にアレックスは笑い受付嬢に向かう長い列へと僕を引っ張って行った。


 列に並んでいる人たちは皆強面での大人ばっかりで僕たちみたいな成人したて、みたいな人は少ない。3組くらいかな?


 僕が人間観察をしている間にもどんどんと早いペースで冒険者の行列は処理されていき、思っていたよりも早く僕たちの番が回ってきた。


「おはようございます!今日はどうされましたか?」


「お、おはようございます。実は...」


 宿でどんなクエストを受けるか揉めた事を受付嬢のお姉さんに話すとお姉さんは机の下に手を入れそこから分厚いノートを取り出した。


「初めての依頼でしたらやはり薬草採取や街の中で受けられる依頼、例えば荷物運びなどがオススメですね。この依頼などですと報酬額という面でもよろしいかと」


「いやいや、でも俺、村ではみんなと一緒に狩りに行ってた事だってあるしゴブリンだって狩ってたんだぜ?」


「では、例えば同じくゴブリンの討伐を受けたとしましょう。ですが同じゴブリンだとしても様々な違いがあります。生育環境による体格の差、知能、そして人間の数、などですね。ですので初めは様子をむるという意味でも当ギルドでは初めて受けられる依頼には体力をつけるための依頼、もしくは外の空気を感じるための採取依頼をお勧めさせていただいています」


 初めは得意げに聞いていたアレックスの顔が段々としょんぼりとした顔になって行き、お姉さんの話を聞き終えたアレックスは大人しく受付嬢におすすめされた中で1番報酬の良かった薬草の採取依頼を受けた。


 その後、受付嬢から押し花となった薬草と採取方法などの詳しい説明を受け手ギルドを後にした。


「アレックスぅ。ねぇ、やっぱり僕の方が正しかったじゃん!」


「うっせえやい!今回はたまたまだし、何より俺が間違えてるなんて思ってない!」


「じゃあなんで薬草採取の依頼なんか受けたのさ?」


「それは...、ほら?やっぱりこっちの依頼が受けたくなった、っていうか...」


「ハイハイ、じゃあ今回はそういう事にしておいてあげるよ」


 そこからは会話が続かなくなって僕たちは黙りこくったまま門の方に向かって歩いていった。

 話題がなくなって静かな時間が続くとちょっとだけ気まずいよね。


 話題探しでキョロキョロしていた僕は何も話すことが見つからず、結局門を出るまで無言だった。



「で、えっと、確か依頼の薬草って黄色い花で細かく縦筋が入った葉っぱが特徴の草、名前はハルルだったよね」


「お、おう。そうだな。で、根っこまでしっかりと抜いて三十本以上持って帰る、ってのが今回の依頼だな」


 どうやらこの薬草、どうやら傷に効くポーションの材料を作るために必要な材料らしい。

 その為に常に怪我のリスクがある兵士や冒険者以外にもご家庭でも二本程度は確保していることが多く使用頻度も高いことからこの薬草の需要は非常に高いとか。


 幸いにも繁殖力は非常に高いらしく、風通しがよく、さらに日陰になる木の根元等を見ると大体木一本につき五本程度は群生して生えているらしい。

 注意としては二本は抜かずに置いておかなければならず、抜いて持って帰ってしまうとそこにはもうハルルが生えなくなってしまうのだとか。


「あ、あそことかよく生えてそうじゃない?」


 僕が指さした場所は少し街道から離れるが少し間隔をあけながら三角形になるように生えている木の場所。

 あそこでなら沢山のハルルが生えていそうだ。


「条件にピッタリの場所だな!行って見ようぜ」

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