第12話 冒険者登録

 いつも僕が憧れていたあの冒険者達が集まる冒険者ギルドへと僕達は入っていった。

 冒険者ギルドの中は温かみのある渋い色の木の床になっていて正面奥に受付嬢たちがいるカウンター、右手側に依頼が張りつけてあるコルクのボードがあった。


 さらに左手側には酒場が併設されていてそこではまだ太陽が真上あたりにあるというのにべろべろに酔っ払っている人達が沢山いて、しかも僕たちが入ってまだ5分も経っていないのにこの短い時間でもう殴り合いの喧嘩になっている人たちもいる。


 勿論、ここに居る人達はみんな教会にいた人たちと同じような雰囲気の怖い大人たちばっかりだ。

 まあ因縁をつけてくる人達がまだ出てこないだけいいけどね。みんな依頼か酒か受付嬢に夢中になってるから。


「お〜っ!ここが夢にまで見た冒険者ギルドッ!!まじで来ちまったんだなぁ、スミス!ここから俺の最強伝説が始まっちまうんだなぁ!?」


「ちょっと何言ってんのアレックス!?最強は1人しかなれないんだよ?つまり!僕の最強伝説が始まるんだよ!」


「何を〜っ!」


「そっちこそっ!」


「「プッ、アハハハッ!」」


 周りをキョロキョロしながらアレックスと正面にある受付嬢が待っているカウンターへと歩いていった。


「冒険者ギルドへようこそ!本日はどうなさいましたか?」


「ぼ、冒険者登録をお、お願いしましゅ!!...っ!」


 2人を代表してアレックスが話したのだけど盛大に噛んでしまった事で頬が赤く染まり俯いてしまった。

 でもホントにしょうがないと思う。今までこんなに綺麗な人なんて見た事なかったしこの様子を見るにアレックスもそうで、きっと緊張してしまったんだろう。


 ...後で噛んだこと揶揄ってあげよう、っと!


「フフッ、冒険者登録ですね?かしこまりました。ではこちらの用紙に記入をお願いします。代筆は必要ですか?」


「はい、2人分お願いします!」


 この世界の識字率は高くない。それこそ文字をかけるのなんて商人とその子供、または貴族など偉い人だけだ。当然僕なんかは農夫の息子と狩人の息子、文字をかけるはずがない。

 そういう人たちは文字をかける人に少しのお金を払ったりして代わりに文字を書いてもらったり、読んでもらったりするのだ。


「えっと、いくら位かかりますか?」


「いえ、冒険者ギルドでは代筆の料金は必要ありません。ギルド関連の書類でしたら代筆はサービスとなっております」


「おーっ!凄くありがたいです」


「では最初はお名前からよろしくお願いします。......」


 それから僕たちは必要な事、名前や性別、使える魔法から持っている疑核の格まで聞かれ、それを聞いた受付嬢はきれいな字、だと思う字でスラスラと文字を書いていった。


「はい、これにて冒険者登録は完了です。ではまず冒険者としてのルールと当ギルドをはさみ依頼を受ける際の注意点を説明させていただきます」


 ざっとまとめると、死んでも責任はとりません。あまりに損壊が激しい素材は安くでしか買い取れません。冒険者ギルドないで争わず喧嘩は修練場でして下さい。等だった。


「なにかご質問等はございますか?」


「いえ、大丈夫です!スミスの方はどうだ?」


「じゃあ、素材の損壊ってどの程度までだったら安くならずに買取ってくれますか?僕たち基本的に切りつけたり、罠にはめて倒すことになると思うのである程度は傷がついてしまうと思うんですけど」


「そうですね、素材の損壊に関しては毛皮ならば全体的に見て補習が容易である、胴体などの部位に大きく裂傷ができている。などではどうしても安くなってしまいます。やはり修復作業などでもお金がかかってしまう上価値が落ちてしまいますから」


 うぅん。難しいなぁ。ギルドの理想はじゃあ首とかを一撃で切り落としたりするのが一番いいんだろうけど...。

 上手く僕の罠とアレックスの斬撃がハマってくれれば行ける、かな?それこそ一体ずつ出てきてくれたりしたら。


「わかりました!ありがとうございます」


「はい、では、こちらがあなた方の新しいギルドカードになります。これはほかの町の通行証としても機能する為大切に保管し紛失にはお気をつけください」


「「おぉ!ありがとうございます!!」」


 ギルドカードは薄い鉄でできていてそこに僕の名前と冒険者のランクで一番下を表す『F』の文字が刻まれていた。

 受付嬢のお姉さんから1人ずつカードが渡されるとほのかにカードが光りすぐに収まる。


「わっ、カードが光った!」


「個人の有する魔法の属性を記録しているんです。これにより他の人にギルドカードが盗られてしまった場合でも、その盗った人はあなたのカードを使用出来ないのです」


 へぇー、なんかすごいんだなぁ。


 僕たちでも凄いことは分かるのだけど、どの程度すごいことなのかはよく分からないので受付嬢の人がちょっと自慢げにしている中、微妙な顔をしてしまった。


「あ、そうだ!宿の紹介もお願いできませんか?...出来るなら安いところがいいんですけど」


「宿ですか?そうですね。ではこちらなんていかがでしょう?」


 受付嬢がガサゴソと机の下にあるのであろう宿の名簿らしき冊子を出しペラペラとめくっていったあと目当てのページがあったのか、僕達の方へと向けてくる。

 そこには簡単な地図と宿の名前が書いてあった。

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