無料小説投稿サイトの底辺作家の作品を好き勝手に扱き下ろしていたらその作品の異世界に飛ばされた件
yatacrow
第1話 終わりの始まり
「ここは……?」
冷たい風が頬をビンタしていった。無精ひげがなびく感覚はなく、頬を触るとつるりとした肌。眼鏡越しの視界に慣れていたせいか、フレームで制限されないクリアな草の海に戸惑う。
「は……?」
俺……さっきまで自宅でパソコンやってたはずだ、よな。
こんな大草原の小さな家がありそうな場所なんて知らない、ただ……空気が無駄にうまい。
『あはは、こういうパターンの始まりもあるよね』
「はい? いや誰だよって周りに誰もいない……」
『そりゃキョロキョロしたって僕は
……うそでしょ?
――無料小説投稿サイトの底辺作家の作品を好き勝手に扱き下ろしていたらその作品の異世界に飛ばされた件。
◆◆◆
投稿者:www [2019年 06月 25日 09時 12分]
感想欄:
良い点がぶっちゃけ無すw 誤字おおすぎw
やせぎすの女って何?w ストーリーはテンプレ盛り込みすぎ、パクってない?w
――作家からの返信。
夢の中の人 [2019年 06月 25日 10時 52分]
感想ありがとうございました!
誤字の報告もありがとうございます。テンプレート作品を参考にしていますが、パクってるつもりはございません!
それと〝やせぎす〟は、体が痩せて骨ばっているという言葉で誤字ではないです。
これからも拙作をお楽しみください!
◆
投稿者:www [2019年 08月 12日 21時 15分]
感想欄:
良い点。めるたん、可愛い!
気になる点。めるたんはいいけどさ、なんなのアイツ?
あんまり序盤でヘイト稼ぎすぎると手の平くるってされても納得いかないかも……。
このままハーレム展開はありきたり、出来れば純愛路線で!
俺はビアンカ派以外認めないw
――作家からの返信。
ドラゴンなクエスト好き [2019年 08月 13日 0時 04分]
めるたん、可愛いいただきましたぁ
でもネタバレになりますが好敵手予定の〝みなもちゃん〟もよろしくですよぉ
ハーレム展開が苦手であれば……ごめんなさいですよぉ!
あ、僕はフローラ派ですが本作品では両方が嫁ですよぉ
◆
投稿者:www [2020年 03月 04日 22時 46分]
感想欄:
気になる点? むしろ全部w
三点リーダとかダッシュの使い方おけ?
まずはそこを直してもろて?www
――作家からの返信。
ルーキーな小説家 [2020年 03月 04日 23時 24分]
ご指摘ありがとうございます……。
なにぶん初めての挑戦でしたし、初めての感想マーク……ショックな感想ではありますが嬉しかったです。
ありがとうございました。
◆
投稿者:www [2023年 07月 02日 09時 15分]
感想欄:
新米プロ先生、新作はいいからさ、エタってんのどうにかしろ? ってこの感想の返事もなさそうだがwww
◆
投稿者:ワラワラ [2023年 08月 17日 04時 03分]
感想欄:
新米プロ先生からブロックされてたw
アカ転生するからずっと追いかけます、ファンでぇすwww あ、コレもまた削除かな?w
◆◆◆
日本最大級の小説投稿サイト〝文筆家になろうぜ〟――
俺がこのサイトのご意見番になって10年以上経過した現在、登録ユーザーは約389万人を超え、小説数は180万作品近く掲載されている。
時代の波にうまく乗ることができれば、出版社から書籍化やコミカライズの打診があり、作品が世間のニーズにウォンテュすれば、印税うはうは生活が待っている。日本なのにアメリカンドリームを掴めるサイトとして有名だ。
投稿者にはプロ志望のガチ勢から、アマチュア作家、エンジョイさん、承認欲求の権化まで有象無象のカオスがひしめいている。そして光と影は表裏一体……つまり、書く人がいれば読む人もいる。
読む人にも属性があり、プロアマ、素人、クズで荒らし……ちょっと言いすぎだが色々といるのだ。そんな読む人のなかでも、属性〝スコッパー〟たちは、数多の作品の中に埋もれた良作を掘り起こし、それを世に紹介することで、作者と読者をつないでいる。
かくいう俺も自称スコッパーとして、プロアマの
……とにかく今日も新しい作品に出会うため、スコップ片手にサイトへゴーだ。
とりあえずブクマの更新分を消化。次に、好物の転生物を日間ハイファンタジーランキングを上からチェックするのが日課である。
ふむ……最近は〝めちゃくちゃ売れた小説の作品名ごっちゃ煮にした作品〟や〝サブタイトルにあらすじから結末までぶちこまれた作品〟がよくランクインしている気がするな。つまらん。
【ハイファンタジー(ファンタジー)】
1位 『転生したら最強のかかしだった件~動けないから人化してハーレム作って魔王も嫁にしといた。スローライフのためにカラスを絶滅危惧種に追いこんでやる~』
うん、作物に群がるカラスたち相手に、かかし拡散ビームで無双するところは面白いけど、このあと人化しないと展開きついわな。ありきたり路線だな。
ざっと読んだ評価としては……、改行一字下げがなくて読みにくい。それだけ。
一応まだ三話までしかないからブクマして様子見だな。
【ハイファンタジー(ファンタジー)】
2位 『転生したらスライムになっていた~ダンジョンで出会いを求めたら、勇者パーティーから追放された超可愛い女の子に、復讐の片棒を担がされました~』
サブタイトルに詰め込みすぎ。
なんでスライムが当たり前に無限収納とか使えるんだよ。
『どうしよ?胸のドキドキが止まらない。あたし、どうしちゃったんだろ――』って秒でフォーリンラブするチョロインとかいらねえ、復讐に集中しろぉ!
あと地の文で感嘆符や疑問符を使ったら一字スペースしとけよ。読みにくい。
ついでに作家のマイページ見ようと思ったけど、作家欄のリンクがない。これじゃ他の作品を読んでもらえんぞ。
……仕方ない、感想欄で教えてやるか――って、さすが上位ランキング。すでに指摘で感想欄が埋まっていらっしゃる。
……残りの作品は、昨日とランクインしているのほとんど変わらないな。ハイファンチェック完了、続いて現代ファンタジーをチェック。さらに現代恋愛、異世界恋愛 、VRMMO、コメディ、歴史のチェック完了。
他のジャンルは上位がほぼ固定化してるから放置だ。
さて――俺の
◆◆◆
この作品、本日の閲覧者数は少ないがブクマ率は高いな。
……へぇ、面白いなこれ。
でもダッシュ記号の代わりにマイナス記号って間違いあるあると、カギカッコまで一字下げとか、残念だけど初心者なのかWeb小説のマナーがなってない! よっしゃ、いっちょプロ読み専の俺がご指摘して差し上げようじゃないか。
――あれ? ブロックされてるわ。
作家ページ……ああっ! こいつ以前に俺が書いたダメ出し感想を削除した奴じゃん! 内容がどんだけ面白くてもこれじゃダメだわ。こんときはカギカッコ内に句点を入れてたんだよな。
『「 。」は間違ってないですよ。それに-- (罫線)の作品も多いし、2個ずつの意味わからないんですけど?』って感想返しをしてたな。ダッシュ記号と罫線のどちらかをちゃんと使っているなら俺も指摘してないっての。
マイナス記号を罫線と思い込んでるからどうしようもないな! ってところからレスバしてたなー、懐かしい。ちなみにカギカッコ内に句点は小学館スタイルらしいけど、このサイトのマジョリティーは句点不使用なんだよ。多数派に受け入れてもらうために、少しでもツッコミどころを減らせってアドバイスだったんだけどね。2個縛りは俺も理由不明、ギャグ系だと10個ぐらい使ってるのもあるし、そこは作風とセンスで頑張れ。
そうだった。こいつ、とにかく姿勢がなってないんだ。作品は面白いんだけど、優しい感想ばっかりじゃ成長できねぇぞ? ってブロックされてるなら仕方ない。
とりあえずブラウザのブクマにマーキングしておいて、次回のアカ転生後に鬼指摘してやろう。
――それにしても、ブロック、か。
最初のころは、こんなふうに敵を増やすような真似、してなかったんだよな。
初めてこのサイトに出会った頃は、作家に遠慮した感想しか書いてなかった。評価もなんとなく5を付けていた。それからいくつもの作品を読んでいくうちに目が肥えていって、小説のお作法がなっていない作品が目に付くようになった。
ストーリーもキャラも最高、だけどお作法が……ってマジョリティが決めたルールで読まれない作品があるのが許せなくて。そこからストーリー上の矛盾や誤字、誤用、重言とかね、気づいたら感想欄とか誤字報告機能つかってツッコんでた。一応、大半の作家は喜んでくれたから、正義は我にありだと思う。
だけど、正義も行き過ぎれば悪になるらしい。俺をブロックする奴らが増えてきた。
さらに豆腐メンタルの作家を擁護する他の読み専どもが、俺のせいでエタる作品が増えた! だの、筆を折った作家に謝れ! と騒ぎ始め、俺のアカウントページと感想がセットになったスクショがネットの海に放流されるようになった。
……エターナル (未完結)なんて作家の都合だろ、俺のせいじゃねえよ。
わざわざ俺のアカウントを探して苦情メッセージを入れる奴らが湧いてウザい。Webで投稿する覚悟があるんなら、叩かれる覚悟も常備しとけって話だよ。
まぁそんな感じで俺の事が色んなコミュニティで問題視されて、晒され、叩かれ、運営から警告が来てbanされたりと酷い目にもあったけど、そんなんことぁ、ぜーんぶ無視してゴーイングマイウェイウェーイ! つまらない作品書いてる底辺作家は消毒だヒャッハー!
さあ、スコップかついで底辺作家叩きを始めようか。
◆◆◆
ユーザID :1AD1T95GOD
ユーザネーム:全能神ゴッド
フリガナ :ゼンノウシンゴッド
自己紹介:やっほ---!僕はこの世界の神様だよ、君たちの作る小説にハマっているんだ。
君たちの発想は面白い、だから僕も書いてみたくなったよ。
『暇をもて余した神様の遊び』リンク先はこちら--
良かったら忌憚のない意見を楽しみにしているよ。
……なにこれっ!? こいつやっべぇーっ!!
全能〝神〟の後に〝ゴッド〟って神が渋滞してるぞ!
作品はこの1本だけ。棒線は徹底的にマイナス記号をご利用中。
で、で出たよー、8万字ちょいでエタってるわ。
ワンアイデアの見切り発車で投稿したけど、設定が浅いせいで物語が薄くて、キャラも勝手に動いてくれない。さらにスタートダッシュで大ゴケしてるせいで、ブクマも評価もつかず心が折れたパティーンだな。
……お作法最悪で修正する気力がなくなった系もワンチャンあるな。
よーし、お前の作品、俺がしっかり読んで、感想欄を介して天に強制送還してやろう。
リンクはこれか、ポチっとな!
タイトル :暇をもて余した神様の遊び
あらすじ :神様の暇潰しによって転移させられた男は勇者として世界を救う
作家名 :全能神ゴッド (黒文字)
キーワード:神 魔王 勇者 ハーレム 冒険
ジャンル :ハイファンタジー
連載中 全22話分 目次 1話目を読む 最新話を読む
……案の定ブクマなし、評価なし、感想はもちろんレビューもなしっ!
くくっ、こりゃ叩きがいがあるな。
目次を開くと――
この連載小説は未完結のまま約6ヶ月以上の間、更新されていません。
はーい、エターナル・ハーフ・アニバーサリーおめでとうス!
いやいや神様なんだからしっかりしろよ、いや、神様だから気が長い?
まあいいや、活動報告には昨日の事が書いてあったし、チェックはしてるんだろう。
ちなみに神様の活動報告には、仲の良かった作家さんの作品がひどく侮辱されたことへの憤りから始まり、上から目線の感想やえげつない誤字報告の量のせいで引退したことが悲しいって書いてる。才能のなさがチラリズム。
活動報告だけでも、本作品を読む気が失せてきた……。
それにしても、その引退作家の作品って最初に扱き下ろしたの俺じゃん!
俺が厳しい感想を書いたら、他の奴らが擁護コメントしてきて、それに俺が応戦して、それを止めようとする奴が感想に突っ込んできて、結局南極郵便局の宛先不明の苦情の末、作家が感想欄を閉じたんだっけ。
――そうか……引退しちゃったか。
ま! そんな豆腐メンタル作家は捨ておいて、神様の作品はエタってるけど、感想書いたら反応ありそうだし、第一話から読んでいこうか。
◆◆◆
………………結論、くっっっそつまんねぇ! しかも小説のお作法ほぼ無視だぞこれ。
男がコンビニからの帰り道、突然光に包まれて、やって来たのは剣と魔法のファンタジー世界。
森の入口辺りに飛ばされた男がまずやることはそう、ステータスオープン! はい、お約束いただきました。
チートは不老不死、異世界言語、鑑定? 鑑定というか頭の中に聞こえる謎の声。
謎の声とだべっていたら、どこからともなく女の子の悲鳴が聞こえてきて、現場に急行すると横に倒れた馬車、血を流して動かない爺とくっころな顔をしている絶世の美少女ちゃんがいる。
……描写には『誰もが美少女と思う絶世の美少女』って書いてる。読者の想像に任せるやつね。
続き! 美少女の周囲には、お下品丸出し、チ◯コ丸出しの盗賊風な盗賊たちがいざパーリーナイトでノクターン待ったナシ! ……か知らんが、そこに――
『おい、お前たちぃ!!何をやっているぅ!?』
颯爽と登場したのはいいけれど、死なないだけで身体能力が高いわけでもなく、その他チートがあるわけでもない主人公ですよ。
がっつり盗賊たちにボコられ、なぶられ、美少女の代わりにアッー! の描写のあと、美少女と一緒に奴隷として捕まってしまう。
美少女が無事で良かったねって……読者はね? 主人公に感情移入するのよ? 序盤のピンチスタートはいいけど、尻アス展開はブラバ案件だぞこれ?
んで盗賊の洞窟風アジトに設置された精巧な鉄格子という何時代の牢屋かわからないところに放り込まれた主人公くん。一緒に捕獲されている美少女から声をかけられても、内心キョドって話せず黙りを決め込んでしまう。
ここまでの描写……おウンコです。
で、二話目『神様視点だよ』って、まえがきのあとに神様が登場。やめろ、それ! 気が散る! いや気なんてもう集められないくらい散ってるけども!!
『あれ?せっかく呼んだ男が弱くてつまらないじゃないか、あ-!大事なチ-ト授けるの忘れてたぁ!』ってなんじゃそりゃ。
『--三人称視点と一人称視点が混ざります』の宣告のあと。
昼間の主人公くんが身代わりになったおかげで無事だった美少女ちゃん。
『おい!商品なんだから傷つけんなよ!』
『でも、でも兄貴ぃ。俺ガマンできんすよ。ちょっとだけでいいんでさ』
『ちっ!………仕方ねえな。だが俺が先だぞ?』
『ひぇっひぇ--っ!兄貴ぃが相手したら、それこそ壊れちまうぜぇ』
おウンコ作品のテンプレがおウンコです。
『ひっ…!ひっ…!もう、やめてください』
三点リーダは二つ使え。つーか美少女の鬱展開するなら助走足りなすぎて、ただただ気分が悪いだけだぞ。
『なんで俺が………アッ-!』
って、また
意外性は……マル。
描写はどっかのノクターンかムーンなライトの作品をコピペしてきたのか、そこだけしっかりしてて吐く。
そのせいで主人公くんの無力さを噛みしめるシーンはしっかり伝わったよ、オーマイゴッドよ
『ごめん、ごめん、今から力を授けよう』
そんな声が、主人公の耳に届く。刹那――って書いてる――まるでホウレン草を食べたポパイのように――って書いてる――ムキムキになった主人公が盗賊たちをちぎっては投げ、ちぎっては投げ――
『きゃああああああっ!』
危うく美少女までちぎって投げそうになるところでストップ。なんでやねん!
おびえる美少女にムキムキ主人公が謝ってる。戦闘中に、時間が停まったのか? ってくらいお互いの生い立ちやら、アジトに連れてこられるまでの背景が〝会話〟で明らかになっていく。でもなぜか主人公の名前が出てこない。
一通りの〝物語の設定描写〟が終わるのを待って、主人公の背中に突き立てられる刃。盗賊頭が卑怯にも背後から刺してきた。ぐうと苦しむ主人公だが、不老不死の効果で死なない。……死ねばいいのに。
痛みはあるらしく、主人公が身を
壁にドカーンって……。
『フロ-ラビアンカ:あ、あの、危ないところを助けていただきありがとうございました!私はこの国の第一王女フロ-ラビアンカです。私、勇者様の事がてゅき!キャ、言っちゃった!! ※この子はかなりお転婆です (神の言葉)』
急な台本形式。くそ寒い作者の蛇足の補足。
初対面のはずなのに〝勇者〟呼び。でもそれよりなにより! フローラビアンカってキャラ名はやめてくれ。どうせ自分の好きなキャラを
『主人公:いま、俺のことがなんとかって。うまく聞き取れなかった』
それはもう鈍感系通り越して難聴系なんだよ。目の前にいるのに好意伝わってないのっ!?
ふうぅー! ……つ、続きだ。お姫様を助け出した主人公くんは、お姫様の説明を聞かずに先行して、町の入口で門番に止められ事情聴取を受けている。そして遅れてやってきたお姫様の助け船で何とか町に入ることが出来た。
――なんで? ツッコミが追いつかないのだが。
んで、お姫様からお城に来てほしいと頼まれたのに、話を聞かずに突撃したのは定番の冒険者ギルドへ。
〝難聴系主人公〟の意味を取り違えてるぞ!
『おいおい、そこのガキ。いい女連れてるじゃねぇ!グワァ-?』
ノータイムで絡んできた先輩冒険者をバキっと一発食らわせるポパイ。……それはコミュ障と呼ばない。その後も受付嬢と吸ったり揉んだりのあと、冒険者登録が完了。
『冒険者の等級について説明しますね!』
受付嬢からお約束の冒険者ギルドシステムの説明を受け、最後に――
『あの、貴方のことがてゅき!』
いや、なんでやねん! とツッコミを入れるしかないチョロイン二号登場だった。
『あのぉ!勇者様。そろそろお城に送ってほしいのです!お、王女命令ですよ!』
主人公くんって恩人なのに、ヒロインが強権発動とかないわー。いくら嫉妬した感じを出したいからって……ないわー。ないわーないわー――
というかずっといたのか第一ヒロイン、放置されすぎだろ。
場面が変わって謁見の間。
第一ヒロインから事情を聞いた王様が、お礼を述べ、金銀財宝と勇者っぽい装備一式を主人公くんの前に置く。
『娘から話は聞いた。お前はまさしく伝説の勇者だ!勇者よ、どうか魔王を倒してこの世界を平和にしてほしあ!!』
ほし〝あ〟って……! 感嘆詞一字空けと併せて誤字報告しとくぞ!
ていうかさ、娘の命の恩人をさ、死地に追いやる王様ってリアルだとヤバいよな。いかん、これは駄作、おウンコ作品だ。我慢して読むぞ、がんばれ俺!
旅のお供! 第一ヒロインことフローラビアンカ。回復魔法が使えるから、それだけの理由で王女なのにお供に。
さらに王国一の剣の達人ゾロミホーク、魔法使いのエロフ……じゃなくてエルフのツルペタン、東の島国からやって来たという侍ロロノアと忍者で『ってばよ!』」が語尾につくけど名前はカカシ、謎のお助けキャラで全能神ゴッドマン……といった面々も仲間になる。
……もう気持ち悪い、ネーミングがパクリというより好きなもの並べました! って感じだけど、そんなに好きならゾロミホークは世界一の大剣豪って設定にしてやれよ。
というか、ロロノアとゾロって二人に分けるほど好きなんだろうけど、元ネタ原理主義の俺からしたらぶちきれポイントだ、誤字報告機能使って違うキャラ名にしておこう。
ちなみに、話し方はゾロミホークとロロノアで使い分けが出来ていないから、二人が会話するとどっちがしゃべってるのかもわからない、マンガ家なら……いやこんな作品マンガでも世に出ちゃだめだ。
あと作家よ、自分の作品に本人登場はダメだろ。全能神ゴッドマンはないわ。覆面してる意味を教えてくれ。
はぁ、疲れてきた。
少し飛ばして読もうかな……。いやでも最後までしっかり読んでから扱き下ろすのが俺の流儀だ、がまんして読む。
さて、勇者パーティ各人が主人公との出会いを振り返る『私の名前はフロ-ラビアンカ。私が盗賊に襲われてしまったとき--』『俺の名前はゾロミホ-クだ。俺は勇者だなんて認めない、つもりだった』などの行ったり来たり閑話が続いたあと、やっとお城を出る勇者パーティ。
お城の外に飛び出てレベル上げが始まるかと思いきや、いきなり料理に目覚めてメシテロ――結論、描写下手すぎて不味いかどうかも伝わらないもの――からの定番のオセロ作りで金策を始めるという。
レベル上げどうしたよ、魔王どうしたよ! って思ってたらのじゃロリ魔王が向こうから攻めてきた。
のじゃロリ魔王。低身長で不自然な巨乳キャラ。ツルペタンと対比したかったのか知らんけど、不自然すぎる巨乳って奇乳なんだなー……あ、遠い空にお星さま――読むぞ。
『勇者よ!お主がなかなか来ないから、こちらから来てやったのじゃ!』
『ええぃ!わらわを子ども扱いするでない!この姿でもレベルは千を超えておるのじゃ!』
『さあ、わらわと戦うのじゃ。思う存分暴れてやるのじゃ!』
キンキンキーン、ぐああああ、どしゃ、バキっ、キンキンドーン、キンキンドーン!
……ちなみにほとんどのバトルはこんな感じの擬音ね。
『み、みごとじゃ勇者……………てゅきなのじゃ!』
――――ちょ! 何があったよ魔王ちゃん!?
あれー? 読み飛ばしたかな? 何回読み直しても魔王と勇者が『キンキンキ-ン、ぐああああ、どしゃ、バキっ、キンキンド-ン、キンキンド-ン!』 なんだけど!?
そこで二十二話が終了。
ふう、ツッコミどころ満載の展開だった。
感想はどうしてやろうか……。
◆◆◆
投稿者:ワラワラ [2032年 08月 19日 05時 36分]
感想欄。
感想? ん、な、も、ん、ね、え、わッッ!!
ストーリー盛りすぎ、めちゃくちゃ、ネーミングセンス最悪ね。
なんで第一王女が爺と馬車で旅してんの? 危ねぇだろ?
チョロインがチョロすぎ、臭いまである。
それから全能神ゴッド? おまえ一番ウザいわ!
なんで閑話で一番力入れてんのがゴッドなんだよ! 覆面してんのなんで? この世界観にある教会に祀ってたりする? 崇められてる感じ? 出会ってすぐの会話で、自分は神様ってばらしてる描写あったけど、もう覆面いらんくね!?
はぁ〜〜〜! いやもう読むの疲れましたわ、漢字もさー、『瞠った』だの『宥める』だのさー。ボク難しい漢字いっぱい知ってるんだ感やめとけよ。大半の読み手はなんとなーくで文字面眺めてツルツルすべらせるだけだぞ? 『みはる』、『なだめる』と、ひらがな使うか、ルビ振っておけ!
ていうか難読漢字使うほどシリアスじゃないよね? 難読漢字使ってるわりに名誉を返上しちゃダメだからw
頭良さげキャラの全能神が『ボクも頭痛が痛くなってきたよ』とか書いちゃダメよwww
あと投稿するときな、ペンネームって特に決めてないなら入力しないほうがいいぞ。
マイページにリンクされないからwww
誤字報告機能で、三点リーダを二個に並べたり、一文ずつ手直しと指摘を送ってるから、拝読しろ? あ、棒線はダッシュ記号か罫線推奨、くれぐれもマイナス記号は……プププwwwww
この時間泥棒が! 最後まで描けないならネットの海から回収しとけwww
んで、仲良しクラブの誰かと読み合いでもしてみりゃ、先の展開……この作品であるとは思えないけど、なんか捻り出るかもな? おウンコ作品だけにwww
はぁ〜〜〜! (二回目www) まだまだ書き足りないけど、文字数制限が近いからここまで。
『感想を書く場合の注意事項にある、「■敬語で書く」などの項目を確認した上で書き込んでいただきますようお願いします。 よろしいですか?』
はいはい、知らねっての。
送信ポチっとな!
◆◆◆
『ピコンッ! 全能神ゴッド様からワラワラ様にメッセージが届いてます』
お! 感想返しじゃなくてメッセージ?
やっぱり初心者なのかね、何を送ってきたんだ?
おおぅ! メッセージ欄に大量の新着メッセージががが。俺って人気者じゃね? そのほとんどが数名に腐れ読み専組合からの苦情と文句だろうけど。あと運営からの警告。
メッセージがたまりすぎて読む気が失せるわ。
ということで、通常は空気スルーなメッセージ機能だけど、ゴッドちゃんからのメッセージぐらいは読んでやるか。
『件名:ありがとう』
うん、まあ、妥当な入り口だな。
肝心の内容は? お礼だけなら感想返しでいいんじゃない?
『やぁ、今回は僕の作品を読んでくれてありがとう。最後まできちんと読んでくれたのは嬉しいよ。誤字報告機能の通知件数には神様の僕でもびっくりだった。悔しいけど参考になったし、そのまま使わせてもらう文章もあった。あと読み合いのことも目からウロコだった。神は孤独だから思いつかなかったようん。……だけどね、僕はこの作品のことは君たちと同じぐらい大切な子どもだと思ってるんだ。だから子どもたちが悪く言われてるのが、少しだけ悲しかった。それに君ってさ、僕が応援してた作家さんを殺したよね? それに感想を書くときは敬語かどうか確認し……それに――』
長文がえぐい! それに! それに! って連続〝それに〟はもう顔真っ赤っかのクレームですわ。
マジで
『めんごめんご反省するなり、改行してないからほぼ読んでないわwww 物書きなら3行でまとめろwww』
ほい、送信っと。
『ピコンッ! 全能神ゴッド様からワラワラ様にメッセージが届いてます』
返事早っ! さすが暇をもて余しているだけあるわ。
あんまりしつこく来るならアカ転生でもしよう。
まあ、一応読んでみよう――
『件名:お願い』
お願い……ねぇ、いきなり神様からお願いされてる俺。
もう俺も小説書いちゃおうかな、んで本文は――
『ごめん。少し熱くなっていたみたいだよ。それでさ、色々と小説に詳しい君にお願いがあるんだ。僕の作品は読むだけじゃ伝えられない魅力があると思うんだよ、なんといっても神の作品だしね。それでさ、君には僕の作品を
んん? 待て待て、神様は一応、曲がりなりにも、腐っても? 作家目指してんだよな? 自分の作品の描写が足りない部分を実際に?
チョットナニイッテルカワカラナーイ。
『ピコンッ! 全能神ゴッド様からワラワラ様にメッセージが届いてます』
また来た……件名は『恐いのかい?』いや、正直に言おう……――恐いだろ!
ホラーだわ、さすが底辺作家だ、色んな奴がいるなぁ。
『さあ、答えてほしい。 はい/いいえ どっちかな?』
あれ? 回答欄がクリック出来るようになってるけどこんな機能あったかな?
アンケート機能とか? アンケートもやりすぎるとどっちが正解かの迷子になる……おっと俺の思考さんお仕事してくれ。
まあ、もちろん、考えるまでもなく『いいえ』の一択だわ。
いつまでもこんな底辺作家に絡んでも仕方ない、さっさとアカ転生しよ。
いいえ――ポチっと!
――んん? はい/いいえの“いいえ”をポチる瞬間、〝いいえ〟が〝イエス〟にッ!?
ちょっ!?
『ははっ、逃がさないよ? さあ僕の創った世界においで――』
パソコン画面から目が溶けたかと錯覚するような光が溢れ――
◆◆◆
「ここは……?」
冷たい風が頬をビンタしていった。やたらリアルな痛みと、目の前に広がる草の海。
「は……?」
俺……さっきまで自宅でパソコンやってたはずだ、よな。
こんな大草原の小さな家がありそうな場所なんて知らない、ただ……空気が無駄にうまい。
『あはは、こういうパターンの始まりもあるよね』
「はい? いや誰だよって周りに誰もいない……」
『そりゃキョロキョロしたって僕は
外? 俺も外だし? ってかこの話し方はあの底辺作家か、自分のキャラ付け成功すんごいね! 他の登場人物たちの設定もちゃんとやれや。
じゃなくて。さっきまでパソコン越しにやり取りしてたはず。まぁ、向こうの一方通行だったが。
『底辺作家! ……あはは、ひっどいなぁ。でもまあ正直……………………底辺作家なのは認めるよ、僕には子どもたちのような素晴らしい発想が湧かないんだなぁ。不思議だよね、僕は神様で何でも出来るはずなのに面白い小説だけは創れないんだよ』
また何を言ってるか理解が追いつかなくなってきた。あとプライド高いな、底辺作家のこと認めてないだろ。
『うぐっ……。ま、まあまあ落ち着きなよ。僕はね、君たちの世界の他にもいっぱい世界を創っているんだ。だけどね、君たちヒトの思考は僕にも読めないというか予想外でね。眺めるのがとっっっても楽しいんだ。それで僕は君たちの世界をずっと眺めてたんだよ』
二回も眺めるって言ったな。どんだけ眺めてんだよ暇人、あ、暇神か。
……んで、こいつの話ぶりだと人間観察から、人間の趣味に興味が移り、そのなかで人間が書いたサブカルチャーにどハマりして、自分も神様だし万人受け出来る小説ぐらい書けると思ったわけだ。虚構の天才乙!
『……そうそう。でもねぇ僕にはわからないんだ。不老不死に憧れたり、神をも殺す力を持とうとしたり、あと……無限収納や瞬間移動だっけ? 君たちが欲しがるチート能力を持ってて何が楽しいんだってね』
ああ、なるほど……。
『お、さすがワラワラだね。もう僕のわからないが
「ワラワラは本名じゃないんだよ。自称神なら本名で呼べばいいだろ。何でも出来る神なら、何でも出来ない俺たちの気持ちは永遠にわからないと思うぞ」
自分が持てないから他人の物を欲しがる、俺には到底出来ない事をやってのける作家達を妬む、印税ウハウハの作家を羨む、神様は全部持ってるから俺の気持ちはわからない。
『ふふっ、本名はもちろん知ってるよ。だけど
ある意味、一番共感が出来ない存在だしな。って――
『何で俺の心の声が!? だって? ははっ小説を読んでるわりに気づくのが遅いな。ワラワラ、君の考えてる事はね、僕の作品の感想欄に全部送信されているんだよ。感想への感想返し、僕の作品はワラワラが読んでくれるまで誰もいなかったからね。こんなに感想で溢れ返っているのは初めてだ』
いや、嬉しそうに言ってるけど……。
――これ、マジ?
『マジ、だよ。君には僕の世界で生活してもらうよ』
は? 僕の世界って……ランキング上位の作品やら人気少年マンガをごった煮にした闇鍋小説か? あのくそつまんねぇ?
『……黙れ、ドン!』
「おお!? ……?」
なんだよ、カタカタって音が聞こえるだけ。びっくりして損し――
【ぶつり、ワラワラの右腕は音もなく地面に落ちた】
「あぐゥウうぅッッぅぅ……!!」
痛いイタイいたいィ!? なんでっ!? 腕、腕が……右腕が……ないッ!?
『ああ、ごめん。つい感情的になったよ、ついうっかり腕をもいでしまった』
痛みで脳が焼けそうなのに、耳に入ってくるカタカタという小さな音。
【ワラワラの右腕が生えて痛みがなくなった、落ちた右腕は地面に溶けて消えた】
打鍵音のあとに宙空に文字が浮かんで……これ、あいつの描写か? じゃあ俺はこいつのグロ描写どおりに…………うそ、だろ。……あはは、あは? アハハハハハハハ――
【一瞬だけワラワラは正気を失ったが、すぐに自分を取り戻したようだ】
……は? 正気さえ文章一つで?
『大丈夫かい? 君の言葉は人を殺すからね。言葉の刃って知ってるかい? 僕はともかくあのサイトにいる子どもたちは君みたいに心が強い人ばかりじゃないんだ。いいかい? 親しき仲にも礼儀あり、親しくない仲なんだし、お互いに節度を守って交流しないとね』
もちろん読んでくれる人がいなければ寂しいし、厳しい意見がなければ上達しないかもしれないと声は続くが、俺の頭も心もぐちゃぐちゃだ。
ぐちゃぐちゃなのに冷静、正気を失わないのがこんなに辛いものだとは思わなかった。
『君はやり過ぎたんだよ。アカウント転生を繰り返すせいで運営も対応できない、だからね、少しだけ僕の世界で反省してもらうよ。ああ、君も不老不死のチートを授けるし、テンプレ展開もいっぱいあるから
テンプレ展開ってアレとかソレ? マ、ジ、か?
――きゃああああぁぁぁぁ!!
いつの間にか大草原から森の通り道に風景が変わり、悲鳴の元には倒れた馬車と荒くれたちがお姫様を取り巻いている。
『ほぉら! 早速始まった、さあフローラビアンカを助けに行こう!』
いや、ポパイパワーくれよ、じゃないとフローラビアンカと一緒に盗賊に拉致られるんだろ!
『嬉しいな、序盤のストーリー覚えててくれたんだ! だったらわかるよね?』
神様がポパイパワーをくれるのは牢屋に入ってから……?
『せいかーい! 序盤のストーリーを変えたら後のストーリーや伏線が台無しだからね!』
いやいやいやいや、お前の作品、ストーリーも伏線もクソも――
『……黙れ、ドンド、ドーン!』
【ぶつり、ワラワラの右腕は音もなく地面に落ちた、ばつん、左足が音もなく弾けた】
「ゔッッ!」
『なるほど人は本当に痛い時は言葉を発することが出来なくなるんだね! ああ「っ!」の表現の意味がやっとわかったよ。いやぁ、生の感想は勉強になるなぁ』
……。
『あ、ごめん痛みで話せないよね。ストーリーも進まないし、元に戻そう』
【ワラワラは五体満足の健康体に戻った。フローラビアンカたちの時は止まっている】
時間まで……。
『どうしたのかな? そろそろ時間を動かすよ、フローラビアンカを――』
その前にっ!
『なんだい?』
〝ばつん〟で音もなく弾けたってなんだよ、そんなんじゃ、いつまでも成長しな――
『……!』
【ワラワラの身体が爆散した】
【ワラワラの身体は再構成された】
……もうやだこの世界。
あと尻アス展開だけは避けてもらえると――
――無料小説投稿サイトの底辺作家の作品を好き勝手に扱き下ろしていたらその作品の異世界に飛ばされた件。
──────────────────────
【Tips】
・改行後は一字下げる
・改行後の「 」は一字下げない
・三点リーダ …… ダッシュ記号 ―― は2個が基本
・地の文、セリフの途中で感嘆符や疑問符を使ったら一字下げる
・「 」の最後で感嘆符や疑問符を使っても一字下げない
・ダッシュ記号と罫線はご自由に。でも統一したほうがいい。
・マイナス記号 ーー 間違って選択しがち
・「 」内は句点 。 でしめない作品のほうが多い ※諸説あり
無料小説投稿サイトの底辺作家の作品を好き勝手に扱き下ろしていたらその作品の異世界に飛ばされた件 yatacrow @chorichoristar
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます