22 セックスしないと出られない部屋(伊織&瞬)
目が覚めると、知らないベッドに兄と横たわっていた。僕は驚いて兄を起こした。
「兄さん! 起きてよ兄さん!」
「うーん……」
僕は周りを見渡した。家具はベッドしかない小さな部屋で、天井も壁紙も床までもが白かった。窓も扉もなく、ここに閉じ込められているということがわかった。
「なんだここ?」
「僕にもわかんないよ。ねえ、どうしよう兄さん」
すると、いきなり天井からヒラヒラと一枚の紙が落ちてきた。兄がそれを掴んだ。何か文字が書かれているようだった。
「兄さん、何て書いてあるの?」
「えっと……ここはセックスしないと出られない部屋です、だとよ」
「ええーっ!?」
噂には聞いていた。二次創作でよくあるやつだ。一体誰が始めて、どうやって流行ったんだこんなもの。まさかそれに自分が巻き込まれるとは思わなかった。
「じゃあやるか」
「待って兄さん! 決断が早すぎない!?」
「ん? どっちが下になればいいんだ?」
「悩むとこそこ!?」
僕はベッドから飛び降りて壁を叩いた。
「そんなことしても無駄だと思うぞ瞬」
「わかんないよ! 入れたんだから出られるはず! どこかに出口があるんだよ!」
「やったら開くんじゃね?」
「ってことは、どこかにカメラとかあるんだよ! 誰かが監視してるんだ!」
四方全てを調べてみたが、拳が痛くなっただけだった。途方に暮れて頭を垂れていると、兄が僕の肩に手を乗せた。
「なっ? やろうやろう」
「もう少し足掻かない?」
「ああ、でもゴムが無いんだよな」
「そこは気にしてくれてありがとう兄さん」
僕たちはベッドに戻った。僕は三角座りをして天井を睨んだ。
「一体誰がこんなこと……」
「そりゃ惣山だろ」
「メタ発言しないで兄さん」
どうにかしてセックス以外の方法で出られる方法はないのだろうか。こんなことなら、先人たちのオチをもう少し見ておけばよかった。
「兄さん、もしかして、僕には能力が備わったりしていて……」
「異世界転生の主人公じゃないんだからそれはないと思うぞ」
「わかってるよ。僕は現代ドラマジャンルの主人公だよ」
「瞬こそメタ発言するなよ」
お腹がすいてきた。思惑通りになるのは嫌だったが、このままだと飢え死にしてしまう。僕は諦めた。
「……兄さん、しようか」
「よし! 俺が下な!」
「えっ、僕も下の気分なんだけど」
「いいじゃねぇか。いつもは合わせてくれるだろう?」
「なんか今回は譲りたくない。たまには僕の言うこと聞いてよ」
「えー、じゃあ公平にじゃんけんで決めるか?」
「いいよ。勝った方が下ね?」
僕と兄は見つめ合った。
「じゃーんけーん……」
プライドを懸けた勝負が始まった。
本編「血の鏡」
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