第40話 激戦は続く、、、
アテナイの槍先から神の力によるビームが放たれようとしたその時———、
「———
ぱあっと激しいスパークが辺り一帯を包む。
「……しつこいですねぇ」
苛立たし気にアテナイは火球がきた方向へ視線をやるとそこには翼を広げて、全身で息をしながらもなんとか立っているバハムの姿があった。
「イルロンド様は……殺させない!」
背中の翼は煌々と赤く光り、口の端からは炎が吹き上がっている。
「殺させないって、所詮はこのイルロンド君も私たちと同じ神ですよ? 元々あなたたちを苦しめていた存在。そんな人、そこまで必死になって守る価値があるんですか?」
「ある!」
バハムは断言する。
「イルロンド様が例え、貴様らの世界でメデューサと呼ばれる神だったとしても! 昔に貴様らと同じように虐殺を繰り返していたとしても! 彼は、この方は我々を守ると誓ってくださった! 我々のことを理解してくださった! 何も理解しようとせずにただ自分の利益のために人間
「神が全てを支配しなければ、あなたたちはどう生きていいのかわからないでしょう? 神はあなたたちを導いているのですよ? 〝支配〟は〝導き〟なのです」
「その考え方が傲慢だと言っているんだ!」
バハムは翼にやどる光をより一層強くし、口から漏れ出る炎の量を増やした。
そして大きく口を開くと、その中に火球を生まれさせる。
バハムの生み出した魔力の火焔に対抗するようにアテナイは雷を槍先に集め、
「———
「———
雷と火の激突が始まる。
アテナイとバハムは片方は神力、片方は魔力。そしてどちらも超常の力を用いて雷と陽を操り、激しい攻防を繰り返していく。
バハムが火球を口から発したと思えばアテナイが槍先から雷を迸らせ、それを防御しては距離を詰めて槍と爪での格闘戦の攻防。
「はあああああああああああああああああああああああああ!」
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッッッ!」
必死の形相で攻撃を仕掛けるバハムに対して、アテナイは余裕でいなす。
剣戟の音が響く————。
遠くでは聖女・イリアと聖女・フレイの天使による巨人の格闘戦が繰り広げられ、その余波による瓦礫が降り注ぎ、地響きがこの場所すらも揺らす。
ビリビリと、高い金属音のような音が聞こえる。
ガラスだ。
「————ッ!」
俺の顔が映っている。
「……そうか、アレを使えば勝てる。ここが修道院で人が生活しているスペースだって言うのなら、絶対にアレがあるはずだろう⁉」
俺はアテナイとの戦闘をバハムに任せて、あるモノを探しに修道院敷地内を駆けた。
◆
サルガッソの市街地上空———。
光の聖女・イリアが
「うわあああああ! 瓦礫がぁ!」
その足元では戦闘の余波をくらって逃げ惑う人々がいる。
「く……! こんな場所では……!」
その様子に心を痛めているのは火の聖女、フレイの方だった。
だが、光の聖女イリアの方は全くのお構いなしというように光ノ天使の剣を振るう———。
「やめてください! お姉さま! 市民が巻き込まれているんですよ!」
「……構わない」
「は?」
光ノ天使の肩に乗るイリアは悔し気に唇を噛みしめ辛そうな表情は浮かべているものの、
「あなたを犠牲にして明日を生きるのを良しとするこの人たちを———私は助けたいと思わない!」
「あ、あなたはそれでも聖女ですかッッッ⁉」
火ノ天使が拳を握り、光ノ天使の横面を殴る。
「聖女としての使命を忘れて、信徒の命を踏みにじるなど、聖女として言語道断!」
「もう———いいでしょう! 殺してあげなよ!」
「何たる言い草!」
「五百年以上も、みんな生きてるんだよ……疲れてるよ」
ふっとイリアの全身から力が抜ける。
その様はフレイにとって何か切実な感情を向けられているような気がして———更に神経が逆立った。
「あなたは本格的に洗脳されているようですね!」
ガンッと火ノ天使が光ノ天使の頬を穿つ。
そして、二撃目三撃目と追撃を繰り出す。
「生き続けることが人としての幸せでしょう⁉ 永遠すら手に入れるのが人として、生物の欲として正しいものでしょう⁉ なら〝人のため〟というのはその〝願い〟をかなえてあげることなんじゃないですか!」
「……確かに、そう教わってきた。神に、人に仕える者として……孤児でどこにも居場所のなかった私たちに与えられた居場所———〝聖女〟。『世のため人のために在るべし』と修道院で育てられて、他の人よりも優遇された。私たちは子供なのに———このサルガッソで生かしてもらえていた」
「そう‼ 本来はあの人面樹として〝永遠の苦痛〟を与えられるはずだった! それが子供のこの世界での〝役割〟だったのにそれを免除してもらえた! その恩を私たちは神に、人に返さないといけないのにそれなのに———‼」
ズ……ッ! っと光ノ天使の剣が、殴りかかってくる火ノ天使の左わきに突き刺さった。
「本来死ぬはずだった命を恵んでもらったからと言って、恩を返さなければいけないのはおかしいのよ! それじゃあ私たち聖女は生まれたときから神と人の奴隷として、なにも考えずに従わないといけない!」
「それが人として、聖女としての正しい生き方でしょう⁉ 何の疑問も持たずにみんなが言うことに従う事こそが、」
「違う———ちゃんと、おかしいことはおかしいって言わないとダメなのよ!」
ズパンッと光ノ天使は剣を振り上げ、火ノ天使の左肩をそのまま切り抜き、腕と断絶させる。
「ああああああああああああ……!」
火ノ天使のダメージが火の聖女・フレイにフィードバックされているのか、彼女も左肩を押さえて苦悶の叫びをあげる。
そんなフレイに対してイリアは容赦なく追撃をする。
光ノ天使は拳を振り上げ———、
「楽しくないことは楽しくないって言わないと! 誰もわかってなんてくれないんだから‼」
火ノ天使の右頬を天秤を持った左手で殴りぬいた。
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