曾我部龍臣はゲームになじむ


 皆殺しの舞台、そうだ、オレはまさにこの世界を待っていた!

 嬉々として、を謳歌する。

 ──それほど時間はかからなかった。としては。

 折り重なって倒れる死体をまえに、龍臣はペッと唾を吐きつけた。


「おまえをぶっ殺しても良心が痛まねえのはよォ、もともとオレにそんなもんがねえからなのか、それとも単におまえがワルいやつだからなのか、ちょっと区別がつけらんねえだろうがよ、ああん?」


 言うべくもない苦言かもしんねえな。

 ゾンビの頭を蹴ってやると、そいつは、すこし離れて転がっていたの頭に寄り添い、にやり、と笑ったように見えた。


 龍臣の人形は、主人を見習うかのように噛み千切られた耳をベッと吐き出して、すたすたともどってくる。

 もちろんあの男に、耳などもういらない。

 彼は、ひん曲がったシャベルをおっさんに返しながら、


「わりーけど、おめーの家族とも、もし出会ったらぶっ殺しちまうからよ、覚悟キメといてくれよな」


「龍臣、人殺し、ぶっ殺す、みんなぶっ殺す」


 肩の上、耳元でかしましい人形。

 龍臣は軽く舌打ちしつつ、


「うっせーよ、ぬい、オレさまを殺人鬼みたく言うんじゃねえ」


「ちがうのか、龍臣、だれより殺人鬼のくせに、ヘドが出るクズ野郎のくせに」


 疑いもなく決めつけられると、むしろ爽快なものさえ感じた。

 まったく、こいつは……。


「オレは英雄だよ。ひとりやふたりを殺せば殺人者だが、百万人殺せば英雄だ、って言葉があるらしいぜ。ふひへへ……いいこと言うじゃねーか。じっさい、ひとりやふたり道連れにしただけじゃ、とても満足いかねーよ。すず曰く、だからなァ、オレは。オレほどの価値に見合った数の死体を積んでもらわねーと、そう簡単にくたばるわけにゃいかねーよ」


 ぴょん、と飛び上がる人形を肩に載せ、歩き出す。

 巨大な敵が、このさきにいる。

 ……感じるぜ。殺せ、ってな!


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