第15話 


 陵史はいつも通り肉体を鍛えていて、彼女もいつも通りそれを見ていた。何故かそれを見ているのは飽きなかった。それは彼が自分の可能性みたいなものを追求しているみたいに私には思えた。そしてそんなことから、私同様彼も、この現実に対して満足していないという事実がひしひしと伝わってきた。彼はそのことに対して真剣に腹を立てているのだ。彼がトレーニングをしている時、私は出来るだけ本を読むようにしていた。人生における工夫というのは様々だと思う。誰かがまた意味もなく一日が過ぎていくと言う。その声はダリの絵画みたいにどこまでも引き伸ばされていく。それはあるポイントを過ぎるともう自分の声なのか分からなくなる。世の中の不思議なところだ。午後の一時になるとに来客がある。結構珍しいことだ。

「お邪魔しまーす!ミアさーん!」

「わっ小西さん、おはよう。」

私にも友達が出来初めていた。小西凛香、私の隣席でダンス部だ。

「おはよっ。今日も綺麗な髪だね!」

こういうことをサラリと言えちゃうところが彼女の美点だ。私も凄く嬉しい。

「さっすがパリジャンヌ!」

「あはは…パリじゃないけど…。」

まあ何にせよ邪気のない友達が出来てきて良かった。その日、何故か我が家にはクラスメイトが揃っていた。紅晴、秋音、莉乃までいた。

「第一回、アシュフィールドさん来日パーリーを開催します!」

いや、私は後何回来日する予定なんだろう、ハリウッドスターかな。莉乃さんの方を見ると彼女もなんとも言えない顔をしていた。

「イエーイ!!」

周りの声が重なりクラッカーが派手な音を立てる。

「かんぱーい。」


 幼馴染を連れてリビングに戻ると紅晴君が場を盛り上げていた。

「第一回、紅晴はこうせい!のコーナー!」

「ヒューーー!!」

「イエーイ!!」


「莉乃さん?」

静かに彼女が振り向く。その瞳からは相変わらず何も読み取れなかった。もし彼女が自分のことを感情の持てない宇宙人か何かなのだと言ったら、私はそれが例えエイプリルフールだろうと真剣にそのことについて考えちゃっていたかもしれない。つまりエイプリルフールにつけこんで本当のことを嘘だと言う人もいるんじゃないかと。

「トイレに行ってたんだけど、迷っちゃったみたい。」

「こっちですよ。」

彼女をリビングまで案内し戻ってくるとまだこうせいのコーナーをやっていた。・・・とてもウケている。当初はあまりの身内ネタに付いて来られなくて微妙な表情だった私まで数分するとお腹を抱えて笑っていた。

「陵史、映画みよ!」

秋音はぶれなかった。地味に最新作の奴をレンタルしてきている。私は皆が持ってきたポップコーンとかなんとかのお菓子をお茶請けに用意する。ミセスは千果さんと話していた。私も千紘さんも、莉乃さんも話に加わっている。他にも借りてきた映画を観たりした。B級のサメ映画だ。ジャンルはパニックホラーとなっているが皆爆笑してるし完全に方向が逆としか思えない。サメと巨大砂嵐の関係性や、海以外を泳ぐ巨大鮫の姿等、謎をあげるとキリがなかった。時々莉乃さんや千紘さんがツボに入ったらしく無言で俯くのも面白かった。途中で秋音さんが弾き語りや、キーボードを千紘さんがやったり、ギターを千果さんがやったり、ミセスが踊ったりして盛り上がった。私も陵史も当分誰かの前で演奏なんて出来そうではないから大人しく感心していた。最後には千紘さんが部活仕込みのお茶のお手前を皆に披露してくれた。それが私が初めて触れる日本の伝統文化だった。イギリスとは違うティータイムだ。


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