最終話




 ――時の流れを見てみれば、速さも遅さもその時々で、感じるスピードは違うもの。楽しければ短く、辛く苦しい時ほど長いと皆は言うけれど、私はそのどちらも違うと思うのだ。楽しくて嬉しくて長い間の夢もあれば、一瞬で過ぎ去る苦も有るのだと。総ては過ぎてからの思い出の一つで、心の機微で変わると思っているから。故に人はその思い出を輝かしいものに残したくて「忘れる事」を思いついたのかも知れない――。



 まずは表題の通り、このお話で私の「エッセイという名の備忘録」は一旦終わりにしようと思います。続きは現在考えていませんので。


 ……思えば、このお話を書き始めた当初、ここまで自分の過去をあからさまに晒すなどとは毛頭考えていませんでした。ですが、書けば書くほど、自身で読み返せば読み返すほど、それらの思い出は鮮明に蘇り、当時のアレやコレヤをまた別に思い出せるのです。正直に言ってここに書かれたものを見れば、私がどれほど「俗」で「下品」な男かはおわかりでしょう。挙げ句、老いさらばえてから、次々に自業自得で大病を患い、結果何も残せず「独りぼっち」になってしまっているのです。


 そのとおりだと思いますし、弁解の余地も有りません。当然、それを開き直ることもしませんし、後悔は常にしきりです。


 ですが、ただこれだけは言いたいのです。



 ――その選択は最善ですか?



 これは、間違い続け、失敗を重ねた私からの「老婆心」とお聞きください。私達は常に眼の前に有る選択に迫られています。それはどちらかが易く、一方が苦しいという訳でもなく、そのどちらを選ぶのも苦渋に満ちることもしばしばだと。でもそれでも選ばねば、たちまち、立ち行かなくなってしまうのです。それ程に人生は非常であり、時に理不尽で不寛容な世の中だと言えるでしょう。昭和、平成、令和と生きた私から見れば、そう言った意味で最も生き易かったのは「昭和」と言えるでしょうが、それは当時を生きたからこその言葉であり、現代に通用すはずがないというのは勿論承知しています。


 まず一番の違いは何をとってもその『情報量と、その伝達速度の速さ』です。情報の入手先が新聞、テレビが主だった昭和と違い、インターネットが普及拡散を始め、皆がパソコンに齧りついた平成を経て、今や手元にあるその「小さな電子機器」で瞬時に世界の情報が手に入る様になった現代。


 隠し事は誰かに囁かれ、秘め事はいつの間にか覗き見られてしまう。嘘がまことしやかに吹聴され、玉石混交に情報は垂れ流されて、結局、取捨選択は自己責任。


 本当に容赦のない世界になってしまったものだなと思います。……いや、犯罪に寛容になれとは言いませんし、それこそ容赦してはいけないと思いますが。


 ただ、こうして日々を生き、皆のペースから少し離れた私から見ると、全てが目まぐるしく過ぎて行くのも確かで。昨日までの話題が、今日にはもう終わった事になっていたり、今日の常識が次に通じるかと言えば別のバージョンに進んでいたりと……。


 五十という年齢を過ぎたあたりでそれを痛感し始めました。


 ……人生百年時代、と世間が言い始めてどのくらい経ったのでしょう。恐らくですが、私はそこまで生きながらえることは、出来ないと思います。何せ、致命的な持病を幾つか抱えていますので。


 でもまぁ、それはそれで良いと思う自分も居るのです。


 何しろ、「俗で下品」な生き方をしましたから、そう言う『楽しみ』はもう経験済みなのです。真面目一辺倒に生きていれば、到底見られないような景色も見ることが出来ました。……まぁそれが良いか悪いかは別としてですがね。


 でももし、現実化されたら経験したいなぁというのは沢山ありますよ。


 ――SAOみたいなゲームの世界に飛び込んでみたい! とか。いや、実際ゲームで死ぬと現実でも死ぬってのは勘弁ですが……。後はほら「空飛ぶクルマ」に乗ってみたいだったり「どこでもドア」が完成したり? 究極は「どらえ◯ん」ですかね?



 ――だけど、世知辛い今の世の中では、あれこれと制限が掛かって厳しいかも知れないですね。



 でも。


 どうです?


 そんな未来……見たくないですか?


 人に優しく、誰しもが寛容で、悪いことなど考えようもないくらい、生き易い世の中になったら……私は必死に「生きたい」と思います。



 さてさて、長々と浮き沈みのない、ただ平凡な私の「人生エッセイ」の一人語りにお付き合い頂きまして、誠にありがとうございました。今までのお話を読んで、ほんの少しでも、誰かのナニカの切っ掛けにでもなれば、喜んで小躍り致しますよ。


 


 最後に、これを読んでリアルの私に見当がついた方々、バラしちゃってゴメンね♡ 私に連絡したければいつでもどうぞ! 愚痴苦情は受け付けますが、加筆修正は致しませんのであしからず!




 でわでわ、これにて『エッセイという名の備忘録』私らしい締め方にて完結と致します。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エッセイという名の備忘録 トム @tompsun50

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ