乳も食わねば萎む
「なんでこんな……作り置きしてあったごはんは?」
「そんなもん初日で全部食べた」
「おバカ、あれは次の日の分の御飯ですよ! だとしてもコンビニに行けばよかったじゃないですか」
「えぇ! きみは私に一人で外に出ろと……」
「いやわかばさんいくつだよ。まったく子どもじゃないんだから」
大げさにため息をつくとわかばさんはわかりやすく瞳を揺らす。
「怒らないでおくれよぉ、どこにも行かず健気にきみを待ってたんだ。労いの言葉をかけて頭をなでながら、二日間何も食べていないお腹を刺激しないような柔らかいおかゆを食べさせたのち、暖かいお風呂にいれてくれたまへよぉ」
「注文の多い人だなぁ。じゃあなんか作りますから」
「おかゆがいいなぁ、あ、そうだおかゆといえば鮭フレークだねぇ、あれがないとおかゆのポテンシャルをひきだせないだろう」
「鮭フレークなんて家にはないですけど」
「じゃあ買ってきておくれ」
「えぇ……僕出張から帰ってきたばかり」
「わかってる、元気になったらおっぱいでもなんでも私を好きにしていいから……さすがのきみもほらいろいろたまってるんだろ」
「たまってんのは疲れなんだよなぁ」
「上手いこといってないで、はやくごはんを食べさせておくれ、このままじゃ瘦せすぎておっぱいもしぼむ」
床に突っ伏してつぶれた自らのおっぱいの谷間を見せてくる。あぁもうこんな押し問答に付き合うのもめんどくさい。
「じゃあ鮭フレーク買ってくるので、それまで待てます?」
「うーん、わかんない」
「分かれよ。あと急炊きモードで米炊いといてください」
「あぁそれは大丈夫、米はさっき炊いたからねぇ。あと五分もすればいい感じのお粥になっているよ」
「炊いたんかい、じゃあそれ塩かけて食えよ」
「またきみはそんなわびさびもないことを言うねぇ、ほら米はあるんだから鮭フレーク買ってくれば食べれるよ」
「はぁじゃあ行ってきます」
「ああ、芳くん!」
「なんですか?」
再び靴を皮靴を履いた僕にわかばさんは声をかけ、
「おかえり」
そう言って笑った。
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