第81話

   七


 想像以上に、捕まえた鬼は内情の把握を進行させてしまった。そのことに千代女は焦りをおぼえている。

 そんな彼女は山道から三間ほど森のなかに引っ込んだ場所に伏せていた。側には精悍な風貌した同じく透波の城戸弥左衛門が身を隠している。樹木の枝葉の揺れから風向きや風の強さを読むという、後世では鉄炮で遠くを狙うときの常識ではあるがこの当時では常人離れの術(すべ)を身につけた鉄砲の上手だ。

 ここで千代女にとって都合の悪い知らせを届ける手筈になっている者を待ち伏せているのだ。

 が、唐突に複数の影が跳躍してきたことで千代女は策戦の失敗を思い知らされる。

 寸前で長鳴鳥が発動していたが、相手の迅雷の速さの動きの前では遅きに失していた。

「うぬが、閻魔王を裏切っておること承知しておるぞ」

 四頭の鬼のうちの一匹が嘲笑混じりに告げる。

「なにを仰せか、妾には皆目」「問答無用」

 千代女の返答をさえぎり、鬼の小頭らしき者が小さく怒鳴った。刹那、千代女は煙玉を炸裂させる。同時に、弥左衛門とそれぞれ反対のほうへと逃げた。

 が、目晦ましと遁走の足を強風が吹いて一度に無効化する。

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