第79話

「な、何をする気だ、畜生め」「おぬしの皮を剥(は)ぐ」

 おびえを瞳に走らせる逆に、勘助は表情を変えることなく淡々と告げる。

 相手がなにか言いかけるのを無視して、星熊童子にうつ伏せにねじ伏せられ縛り上げられた腕の袖をまくるや刃を当てて動かした。

 耳にするだけで寒気の走る悲鳴が土蔵にひびく。それに岩布が正直に呻き声をあげていた。ただ、メルショルはぐっとこらえた。加虐をあくまでおのれのものとして受け止めるためだ。そうでないと、非道に対して心が鈍ってしまう気がした。

 大根を剥(む)く要領で一周皮を剥(は)いだ道鬼斎はひとまずという調子で身をはなす。

 それで、逆の表情がメルショルの位置からでもよく見えるようになった。涙と鼻水で顔を汚し、許しを乞うその表情に人を弱者として見下す鬼の尊厳はみじんもうかがえない。

「あら、優しいのね、道鬼斎殿。どうせなら、腕一本分ぐらいはそいでやればいいのに」

「着物が邪魔だ。鋏を持ってくるのを忘れたからな、つづきをやるなら、それからだ」

 事前に打ち合わせていたのか、その場の思いつきなのか千代女と道鬼斎が背筋が凍るやり取りを交わす。それにますます鬼の表情が蒼白になった。

「すこしは素直になったでしょうから、もう一度たずねるわ。あなたに我らを仕物にかけるよう命じたのは誰?」

 聞いたところによると、鬼道が仕える刺客は忍びでいうなら上忍だという。ならば、黒幕の名も知っている可能性もあるだろうと発したせりふだ。

 逆は今度は視線を上方、左へと向けた。

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