第78話

「頼む、頼むから」

 さらに訴える声は大きくなる。だが、千代女はなおも考えるそぶりでしばらく沈黙した末、やっと「とりあえず、拷問は止めてあげて」と岩布にゆっくりともったいぶって告げた。

「承知」岩布が軽くいって、身軽に階(きざはし)を無視して近くの柱をのぼって梁へと移動し吊り下げていた麻布を取り除く。

「では、さっそく色々と聞かせてもらうわ。まずは誰に命じられたのかしら?」

 千代女が質問する後ろに、メルショル、岩布、道鬼斎、星熊童子、さらには南蛮浄土の軍監ファヌエルがひかえていた。ファヌエルを招いたのは、あくまで鬼の暗躍は地獄の総意ではないと証明するためだ。また彼もそれを希望した。

 とたん、飛来矢の鬼道を使う鬼、逆(さかう)という名の相手の視線が上方、右のほうへ向けられた。

「いきなり嘘をつこうとしたわ」

 千代女が身振りで星熊童子に身振りで“用意”を求める。彼が逆を抑えるのと、短刀を取り出した道鬼斎が鬼の側にひざをつくのが同時だった。

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